第2話 ちぃ≠フィオラ
深夜、皆が寝静まった頃にパチリと目を開ける。
「ふぁぁぁ〜」
先日、異世界に飛ばされた私を神薙玄冶が拾ってくれた。
「にしても、いい人間もいるものなんだねぇ」
正直、私がいた世界の人間は殆どが腐ってる様な人間ばかりだった。
そりゃ、外の世界に興味あるよ? だって若いんだもん。だから、村のみんなには内緒でよく街まで走って行った。
初めて見た人間は冒険者だった。私を見ると胸ばっかり見て下種な笑い方をしていたけど、『小さい子がこんな所じゃ危ないよ』と、心配してくれて街まで案内してくれた。
くれた⋯⋯思ったのだけど、その夜によって集って私を捕まえようとしたので、軽く手を振ったら風圧でどこかに飛んで行った。
翌日街まで行くと、突如現れた台風(ハリケーン)が発生して、防護壁がかなり崩れて街に入るのが制限されてはいれなかったのである。残念⋯⋯。
次に行った時は、カッコいいお兄さんのパーティーだった。やっぱり胸をジッと見ては喉は鳴らしていたけど、紳士的な対応をしてくれて街まで連れて行ってくれた。
そして美味しいご飯を食べさしてくれるという事で、なんか高そうなお店に入り、『これ飲んでごらん?』と、お酒を出された。
私の村ではお酒(90度以上)は、魔力を循環させる訓練として物心ついた時から飲むので、人間達が飲むお酒はどうもお水にしか感じなかった。
かなりの本数を開けた後、気づけばイケメンさんは泥酔し完全に寝ていた。
店主が『こいつにはいい薬だったな』などと言って、私には『もう行きなさい』とだけ言ってくれた。どうやらこのイケメンさんは、女の子を酔わして持ち帰る癖があるらしいが、今回のお酒の代金は冒険者程度が払えるものではないらしい。
最後は偉そうな貴族である。街に行くことにも慣れたので、屋台というもので【串焼き】を頬張っていると、豪華な馬車がとまり、降りてきた数人の人間に声をかけられた。
「喜べ! 貴殿はこの街の大貴族であられる。エグニート様の愛人として見初められた。よって、今から貴殿はエグニート様に全てを委ね愛せよ」
もきゅもきゅと牛串を頬張りながら、後ろを見るが誰もいないので、とりあえず自分に指を指してみる。
「そうだ! 他に誰もおらぬだろうが!」
残っている牛串を相変わらず口に入れながら、周りの通行人を見ると、可愛そうな目で見ている。
「キョロキョロするな! このエルフが!」
「待て!! お前はバカか。そんな脅しみたいな誘い方で女性が来るわけがないだろう!」
「す、すみません。しかし、エグニート様の寵愛を受けれるというのに⋯⋯このエルフの対応が⋯⋯」
「よいよい。田舎からきたので、街に慣れていないのだろう」
などと、やりとりを勝手にしている。
(⋯⋯⋯⋯オーク?)
残り少ない牛串を全部口の中に入れながら、目の前にいる丸っこい着飾った物体をみて咄嗟に思った。
「では、お嬢さん宜しければお手を。そのまま屋敷までいき今後のお話でもしましょう」
「えっと、ごめんなさい。お父さんやお母さんに言わないと無理だと思います」
「ふむ⋯⋯」
断られた原因が、この人が嫌とかではなく、親の許可が必要と言われて少し困惑している。
「えぇっと⋯⋯それだったらお父さんやお母さんと話して許可をもらえるのであれば⋯⋯」
「家は近いのかい?」
「はい。森を少し進んだ所です」
「よし! なら、今から話をしにいきましょう」
(交渉なら、金さえ積めばいくらでも了承出るだろう。それでこんな⋯⋯ぐひひ)
イケメンさんの時とは違い、この貴族様も胸と顔ばかりみて歪な笑みをしています⋯⋯。人間の男って、みんなこんなのなんでしょうか⋯⋯。
そのまま森に入り、少し走っては馬を待つ羽目になっていました。
「ま⋯⋯まだつかないのかい?」
「えぇっと、まだです。そのもう少し早く着くようにするならお馬さんに元気になる魔法をかけてもいいですか?」
「そんな事もできるのかい?! ならお願いしようかな」
「分かりました。では、【騎神馬(スレイプニル)】」
貴族達の馬が全員、8足の鎧を纏った馬になる。
「おおおおお!!」
貴族側が全員驚く。
(なにを驚いているんだろう? 魔法が珍しいのかな?)
「じゃあ、私もちゃんと走るようにします」
「走る⋯⋯⋯⋯? え? ⋯⋯⋯⋯」
フォンと風が巻き起こり、少女は視界から消え、それを追うように馬達も瞬足で駆ける。
その数分後、村に到着。
「ただいまー。なんか私が欲しいっていう貴族様を連れてきたよ」
「おかえりなさい。貴族様? どこにいるの? 馬しかいないけど?」
スレイプニルが解けた馬の背には誰も跨ってはいなかった。
「あれぇ、おかしいな⋯⋯。帰っちゃったのかな? まぁいっか」
結局、なんとかニートさんの行方は分からなかったですが、愛人とはどうやらいいように遊ばれるだけの関係らしく。もし連れてきていたら八つ裂きにしていたそうなので、帰って正解だったのだと思う。
なのに対して、こっちの世界では顔を赤く染め恥ずかしがって背けていたのが、なんだか少し可愛い気がしてしまった。
「さてと、今日も元気にお掃除から始めますか!」
ちぃは起きて静かに寺の掃除を始める。
ただし、時計が指しているのは1時半。そろそろ皆が寝静まった頃に、彼女は起きて行動を開始していたのである。
その数日後、玄冶にバレて説教を食らったのはいうまでもない。
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