第25筆 新生、ウィズム 後編
引き続きウィズムの要望通りに。
全身の骨は出来たので、次は筋肉・神経部分だ。ゴムやマイクロフィラメント、ナイロンの複合筋肉を召喚する。
ナノカーボン繊維も混ぜ込み、油圧式から転換。魔力、量子エネルギーによる循環保護で破損を防ぐ。
魔導ロボット工学者の知り合いから聞いた技術だけど、まさかここで必要になるとは思いもしなかった。
ルゥの捕食後コアデータ解析・吸収機能からヒト状態になった際のDNA変化を解析した技術を応用して肉付けしていく。
肉体の素材はウィズム、ディルク、シアナ三人で開発した⟬アストラ人工細胞⟭だ。
正式名称は
今は粘土のような触感だが、馴染めば皮膚と完全定着するだろう。
名付けたのはディルクさん。
自分でも何を言っているのかわからなくなってきたが、人間と同じ触感になるらしい。
勿論おっぱいもふわふわだ。
おぉ、柔らかい。
今のウィズムは幼児体型なのでないけど……。
って、思ったそばから脳に電磁波送ってビリビリさせないで! 激痛なんだけどッ!? 頭割れるわっ!
『セクハラ野郎め! こんなお兄ちゃん大嫌い! 頭蓋骨は胎児の時にバラバラで成長につれてくっついたじゃないですか? ボクだってスレンダーボディ目指して頑張るつもりです!』
いや、そうだけど。骨が割れてたけど。また割ろうとするな! イテテテ、わかったよ、わかったからスレンダーボディちょっと期待するから。
……ホログラムの顔を真っ赤にしてデレるな!
はぁ、気を取り直して……
皮膚はシリコンを主とした新開発の人工皮膚。長すぎる名前だったので割愛。
動力源は魔力、量子エネルギー、水、核融合エネルギーと食事。食物分解装置(胃)つきで食べ物全てをエネルギーに変換する。
胸の下部分に開けておいた丸い空洞に胃を、コアを頭の空洞に〘
これで完成──!
はぁ、美しい。最高の妹になっただろう。
しばし観察を……ぐわぁ! 頭に電磁波飛ばすな痛い、痛い! デバッグしてるだけだから!
いやぁ、本当に綺麗だ。
ゴーレム、いやロボットとも言われないだろう。
人間そのものなんだよ。
ホムンクルスとは違う美しさ。
人間だと言わせてやりたい位の自信作。
今日が一番、ヒトのお願いで召喚したと思う。魔力切れが近いのかな。フラフラする。核パスタ召喚時、どっと魔力持っていかれた。
通常造るのに十億年かかるだけある。そりゃ持ってかれるか。
ついに開眼のようだ。ウィズムの眼がゆっくり開く。クリストラ洞窟奥地で採掘された赤い宝石を埋め込んだ最高級義眼。
ハ○ウ○ドにも負けないクオリティだと自負できる。
~世界の声です~
ウィズム様が魔道具から
原子核パスタを骨に用いた影響により、宇宙との繋がりが深くなりました。
新スキル:〘流星群〙、〘超新星爆発砲〙、〘ガンマ線バーストビーム〙、〘接触量子分解〙を入手しました。
以上世界の声でした。
おぉ、とんでもない技を手にいれたようだ。
「最高傑作じゃ! 」
「あなた、最高に楽しい仕事だったわ」
「うむ」
国王夫妻は満足げに頷いた。
「本当にその通りですね」
「雅臣お兄さま、ディルクさま、シアナさまありがとうございます!」
彼女が裸のまま抱き締めてきた。俺たち三人で抱擁を返す。
「お兄さま、ボクはワンピースとメイド服が欲しいです」
「ワンピースは勿論だけど何でメイド服?」
「マネージャーはジャージよりもメイド服の方が可愛いじゃないですか?
ズルいなこの
俺は紳士だ。女の頼みは断らない。指パッチンでカーテン召喚。片指でメイド服を描いておいたさ。
着替え終わってウィズムが出てきた。うん、似合ってる。
「お兄さま、どうでしょうか?」
「おう、可愛い」
「……なんか冷たい。お兄たんのばか」
いきなり俺の胸元をぽかぽかと叩いてきたから、理由を一考する。
良く見たらツインテールにした髪の色が一部俺と同じ赤髪になっていた。エクステを付けたのが可愛いと褒めてもらいたかったらしい。
「そんなことしなくても俺はウィズムを大事な妹として愛してるからな。さぁお二方、帰りましょうか。外は夜のようですし」
「そうね、あなたこんな時間よ」
「もう18時か。給仕が儂らを探し始めてるじゃろう」
勝手に抜け出したのかよこの二人は。夫婦揃って家出癖とは面白──ゲフンゲフン、けしからん。
「お兄たん、もう一回、もう一回言ってよぉ……!」
俺の手を握って涙目だが、その程度では屈さない。
「男に二言なし。だから嫌だね。それではシアナさん、ディルクさんありがとうございました! ほら、ウィズムも頭下げろって」
「むぅ〜〜! シアナさま、ディルクさま、ありがとうございます。この身体ずっと大事にしますね」
「うちらはアドバイスしただけ。本当に良い勉強になったね。ゴーレム開発見直してみるよ」
「もっと人間に近いタイプを開発じゃな。研究し甲斐があるわい。今日はありがとな。明日も城門の前で待っておる。儂があれを使うのは心配されるかもしれん。シアナ、頼む」
「あなたらしくないよ。二人とも大丈夫そうな顔をしているから。まあ、仕方ないね。うちがやるよ。不死鳥の煌めき亭前まで、〘転送〙──!」
眼の前の情景が変わると、不死鳥の煌めき亭前に着いた。ウィズムが言った通り本当に夜だ。亭主の若い青年が出迎えてくれるだろう。
「「ただいま帰りました~」」
「おっ! マサオミ殿、お帰りのようですね。そのお嬢さんは?」
亭主はウィズムのことがわかってないようだ。
「ボクはウィズムですよ」
「なんと! ミューリエさんから聞きましたが、こうなるとは……大変お美しいです」
「へへ、ありがとうございます」
随分ぶんデレデレじゃないか、ウィズム?
(うるしゃい、性悪なお兄さま大きらい!)
一階の部屋に戻ると皆いた。あれ? オロチさんいないじゃないかって?
実は俺らの助力以外に、別件の用があってエリュトリオンには来たらしい。ある有名な冒険者の手がかりを探しているとか。
「わぁ、可愛い! ウィズムちゃん♪ 」
「ウィズムお姉ちゃん別人みたいだね!」
「「はい! 私たちからプレゼント! 」」
髪留めと小さな宝石が埋め込まれた金の指輪だった。
「お二方…ありがとうございます。早速つけますね」
ウィズムが再度ツインテールにする。
一部のヒト大好物のボクッ娘AIツインテール駄妹の完成だ。
勿論俺も好物である。
ミューリエのツインテールも悪くないだろう。
よほど疲れる仕事をしたのか、既に寝ているオロチさんの指を見たらしっかりとつけていた。
皆とお揃いの指輪って良いな。日本にいたときはそんな事あまり経験しなかったから。
お風呂に入ってミューリエと一緒に寝る。今日はウィズムも一緒でなぜかすり寄ってくる。
年頃の女の子の考えていることはおじさんわかりません。
妹なのでパパ活はしないけどね。女の子にサンドイッチされて眠る至福。日本では味わえなかった快感だ。
ルゥはもう寝ていた。オロチさんはさっきまで寝ていたせいか眠れないようで、ルゥが蹴ってはだけた毛布をかけ直していた。やけにお兄さん、いや父の顔だった。
俺も寝よう。明日が楽しみだ。
◆◇◆◇◆◇◆
皆が寝静まった頃、シャルトュワ村にいた黒いローブに身を包む男がひっそりと監視していた。
核撃魔法を仕込んだナイフを数万程投げてきたが、ミューリエが防犯用に仕掛けていた防壁魔法で弾かれた。
舌打ちをして去っていたこの男。一体何者か。
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