ラダクティス大陸同盟締結

第37筆 友好条約

「ふぅ、こんなものかな」

「お疲れ~オミくーん!最後に依頼された村長さんの邸宅も出来たし、 煉瓦作りのおしゃれな村になったね♪」

「ギュウゥゥゥ!! ガグォ~!」


 ミューリエから特製大輪識慈淑ネスルトレフィの恵みミックスジュースを貰い、少し大きくなった炎子竜は祝い火を吹き上げて、俺は焦げた。


 シャルトュワ村襲撃事件から10日。

 沙壌築厦土竜アルヒテクト・モール、村の大工陣、マンパワーとして石龍子族ドラゴニュートらと共に村の再建を完了した。

 彼らと炎子竜は贖罪兼用心棒として暫く滞在するとのこと。


 気付かなかったが、土竜さんと一緒に砂漠磐翼竜ミドゥバルワイバーンを連れてきたらしく、空の監視を執り行ってくれる。


 俺の〘画竜点睛アーツクリエイト〙は専ら建築用の絵画召喚術になってしまった。

 種族の中では比較的友好な土竜たちとも打ち解け、今完成したばかりの村長の家はどの建物よりも威厳を感じさせる佇まいだ。


 設計に感して俺は製図をかじった位で専門外である。元に戻す事しか出来ないので、大工陣に教えを請い、指定の材料を召喚しつつ、自分なりに出来ることをした。


 その工夫とは、召喚物全てに原子核パスタを少々練り込んでおり、耐久性の高さは要塞並みとなるだろう。


 え、何でも入れすぎだって?


 とりあえず硬いもの入れてくれと頼まれたので、やりました。これから使いどころを考えて自重します。


 それと、土竜さんたちが地盤へ杭打ちをする為に地面を掘った所、偶然温泉の水脈に当たったんだ。場所は村の南側でウィズムがレーダー調査の結果、ナゴルア山脈の岩漿の通り道になっていた。


 硫黄泉で効能は裂傷、冷え症、皮膚炎に皮膚病、慢性婦人病、高血圧症に期待出来る。


 フレシュとトレントを説得して、幻惑の森ことヤルロの森の地下水を引き、銅管で上下水道を整え、トイレも水洗、随所に蛇口を設置したため、宿場町としても話題になりそうだ。


 正直フレシュ、トレントたちの説得には苦労したなぁ。


 地下水源調査をした後に、環境を崩さないか安全性を十二分に確認した上、膨大な水源の一割を頂けないかと下手にお願いしたつもりだが、族長のダイロン氏、フレシュくんの返答は、


ニンゲンダカラシンヨウナラン人間だから信用ならん

『キミたちジャシンみたいにカンキョウをコワスのかっ!』


 ことごとく一蹴された。手厳しい限りです。

 諸葛孔明の三顧の礼を思い出し、丁寧に三日通い詰め、弾き飛ばされ、なおも真摯に励む俺に共感してくれた若いトレントとその女性型、トレフィらと一週間交渉して条件つきでやっと折れてくれたよ。



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 ヤルロ森林とシャルトュワ村における友好条約


 ・ヤルロ森林に住まう全ての樹人族トレントは東郷雅臣の召喚術、〘画竜点睛アーツクリエイト〙によって村の中心に世界樹の召喚、四人の森羅蔦樹妖精エニリ・ドライアドの召喚、再召喚による進化を確約される。

族長は尊老珀樹再統者ペイトリアーク・エレント、男型は太智樹護者エルダートレント、女型は大輪識慈淑ネスルトレフィへと進化される。

 霧の妖精フレシュも再召喚する。


・互いの居住地は不可侵とする。森の中で一夜を過ごす場合、指定した建物に宿泊すること。


・森を通過する際は通行料を引き換えに太智樹護者エルダートレントが案内する。


・冒険者ギルドは密猟及び乱獲者の侵入を防ぐ監視及び保全活動を行い、太智樹護者エルダートレントから報酬として樹木の提供を受ける。

 大輪識慈淑ネスルトレフィから果実や花々の取引、農業指導を行うこと。


・ヤルロ森林の地下水源一割を頂き村の上下水道に活用するが、それ以上は慎重に交渉すること。


・上記の条件が破られた場合、ディルク・ミゼフ・ドワルディアが間に立ち、三者で相談して再編すること。



 本項を理解し、遵守することを誓います。


・シャルトュワ村村長 カリオ・バンニヴァノ=ぺレス

・ヤルロ森林代表 ダイロン

・南方大陸代表 ディルク・ミゼフ・ドワルディア


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 約束通り森羅蔦樹妖精エニリ・ドライアドを召喚、樹人族トレントを再召喚進化させた。

 端的に説明すると、木目はそのままに人型へと進化と遂げた。


 太智樹護者エルダートレントは若者はイケメンに、おじさん達はダンディズム溢れる姿へ。

 大輪識慈淑ネスルトレフィは美人で可愛い娘ばかりになった。勿論、美魔女タイプも取り揃えております。


 気になるフレシュくんは小さな角、腕と尻尾が生えた。

 全体的にもこもこしているのは変わらず、竜型の妖精だろうか。森に来る前の記憶がないようで、⟬エリュトリオン全集⟭にもフレシュの情報が意図的に欠損されている。

 ルゥに続き、謎深い存在である。当のフレシュは気にしてないようだ。


 しみじみ思い出していると、魔晶魂コアが複数個はめ込まれた木杖を持つ痩身中背の年配の男性が歩み寄った。

 シャルトュワ村の村長カリオさんである。


「こんなに立派な我が家、並びに村を再建して頂けるとはなんと礼を言って良いのか……」


 村長は申し訳なさそうに頭を下げた。


「いえいえ、皆で復興するのは楽しかったですよ。困ったときはお互い様です」

「……ありがとう。いやぁ、素晴らしいな。私の家とは思えん。……はっ! 忘れるところだった。ここに来たのは他でもない。雅臣くん、ディルク陛下がお呼びでな」


 村長はポーチ型の無限庫コフルカッサから地図を取り出して説明を続ける。


「ここから南東へ無為の森を抜けると、リーザック村がある。ここで、ラダクティス大陸の首脳陣をお呼びして話すことになった。私もダイロン氏も参加するので、イカイビト代表として、是非とも出席願いたい」


「行きましょう。南方ラダクティス大陸に生きるもの達のために──!」

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