第27筆 快楽の魔神
何だあいつは──!?
俺の絵を壊しやがって……基本的女には手加減するのだが、変態は許さん!
衣装も怪しからんし、常に震えている?
困った時の『エリュトリオン全集』を開く。
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謎のカルト宗教、邪神教に崇められる十二魔神の内の一人、【快楽の魔神】ロミュカミュシア。
かつてはどこかの世界の娼婦だったが、枢機卿に邪神の血を飲まされ、快楽の魔神となる。
絶頂する度に強くなり、痛みを快楽と力へと変える能力を持つ為、長期戦は不利。また、女性からの攻撃は無効となる為注意されたし。
身体が震えている際は〘
遭遇時は痛みを与えずに倒すか、短期決戦を推奨する。
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『エリュトリオン全集』を閉じて⟬
「アハァ、怖い怖い♪ あたくちはロミュカミュシアよぉ。まずは忌々しい女どもには黙って貰おうかしらァ──!」
態勢を立て直したロミュカミュシアはミューリエに飛びかかる!
「〘女封快楽〙──!」
だが、ミューリエは真顔のまま右手から積層魔方陣を展開! 反抗の一撃を放つ!
「キャアァァァァ変態っ! 〘
「きゅっへぇぇぇぇぇ!?」
何でか知らないけどミューリエきゅんが魔神のおっぱい潰したぁぁぁ!?
ば爆乳だったのが、嫌だったのかな、嫉妬した……?
「ななななんなのアンタァ!? わたくちの自慢のバスト潰すとは何考えてんのォ!? 許さない、許さないワァ……」
あ、ヤバい! こいつさっきよりも震えているっ!
絶頂に達すると力が増加するんだった!
何か手がないかな……。うむ、これにしよう!
「〘
北欧神話に伝わるフェンリルを捕まえた伝説の縄、スレイプニールを参考にして描く!
いや、柔らかすぎる。もっと硬くて丈夫な質感で描く!
「〘
ロミュカミュシア目掛けて縄で縛ると見事にかかり全身を簀巻きにしていった。
「アハァ♪ こんなことしちゃって……イケないことするつもり? あぁ、ゾクゾクしちゃう! 〘
縄に縛られているのにも関わらず華奢な身体は脈打って歪になっていき、引きちぎろうとしている!
だが、神力を込めた⟬聖縛の神縄⟭は暴れれば暴れる程締め付ける代物。
しかも無痛のままじわりじわりと攻めるそれは悪用するとロープ自殺にも使われかねない!
「な、なにコレ……!? 動けば動くほど痛みを感じないまま縛られていく!? 」
やがて自動進化機能を持った縄は意思を持ちはじめて全身をさらに縛り付けて塊にしていった。
「んむぅー! んむぅー! あたくちを縛り上げるなんてなんて嫌らしい趣味をしているのォ……!」
眼前には銀色の縄を箕にして跳ねる芋虫魔神がいました。しかも所々液体が漏れていて何と穢わらしいこと。
「やっちゃったね……」
ミューリエきゅんがぼそりと呟くとアウロギ様はまだ険しい表情のままだった。
「いや、ミューリエ姫。試練は終わってないよ。コイツの真髄は別にあるんだ。以前あれでしてやられた。マサオミ、気を付けろ」
アウロギ様が異空間を開き、踏切警標の形状に似た純白の杭を取り出した。
──六聖杭だ。
別名六条架と呼ばれ、神力が込められたそれは地球の十字架に相当する。
絶大なエネルギーを込め、業火に包まれた六聖杭を簀巻き芋虫魔神こと、ロミュカミュシアの心臓に穿たれた──!
「フェェェェアアアアアアアァァァァァ!! 」
断末魔の叫びを上げる魔神に容赦なくアウロギ様はその手を止めることなく抉り通した。
段々と断末魔の叫びが弱まっていき……途絶える。
険しい表情は相変わらず、崩さずに煌炎神は刀を構えた。……がはっ!?
「肺から血が出たか」
どす黒い怨念と邪気が身体にまとわりついて肺を潰そうとしている! 中々苦しい!
「来たか。油断するなよ!上位魔神は心臓が9つあるんだ! オロチ殿、これからデカイのがくる!」
「あぁ、わかってる。この気味の悪い力の流れはタチが悪いぜ」
オロチさんが紫色の神気を纏い、構える。
何が来るんだ、一体……?
「ディルク、ルゥちゃん、ウィズム嬢、僕の独断で転移制限解除するから住民を地下洞窟へ避難させろ! 」
「はっ、了解致したっ!」
「これはどかーんが来るね! ダッシュだよ♪」
「わかりましたアウロギさま!」
即座にディルク爺とルゥ、ウィズムっちが転移していった。
避難指示が下る程の規模の事象が起こると……!
「ミューリエ姫、皇神級防壁魔法で塔全体を囲って欲しい!」
「ええっ、そんなに規模大きくなるんですかっ!? わかりましたっ! 361層分かけておきます! オミくんも備えて!」
「了解! 〘大国主命の構え:無敗の居合〙」
皇神級魔法は神々しか使えない最上位魔法。それを使わないと防げない攻撃とは一体??
考える前に構えよう。
如何なる攻撃も衝撃も弾き返す居合の構えを取り、備える。
死んだと思われたロミュカミュシアがむくりと起き上がり、六聖杭を抜き取った!
「キュヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!! あァ邪神様、わたくちの命を一つ捧げます……〘シッカイ〙──!!!」
抜き取った六聖杭を腹に突き立てて、再び断末魔を上げると辺りが急激に黒い力の奔流に呑まれていく!
ロミュカミュシアが壊した所から何かが伸びている。元を辿ると曇った空から漆黒の巨大な手が彼女の心臓を奪い取っただと!?
「邪神さまぁ……わたくちの心臓……いかがデちゅか……あぐっはっ?!? 」
直後、鼓膜が破れる程のけたましい音が耳朶に響き渡り、床が粉々に崩れ始めているではないか!
修行時の経験を生かし、瓦礫を蹴りながら下へと降りてていく。
ガラスが割れる音も聞こえるが周囲にガラスらしきものと言ったら残滓のみで、それが光に当たって炎の七色に輝いていた。この割れる音はミューリエがかけた防壁魔法が割れる音──!
あまりにも熾烈な一撃の為に呆気なく崩れ去っていったが、僅かに残っていた。
その数24層。
邪神の眷属は予想よりも強力だった。
今の魔神は神々と同格らしい。
……そしてこちらにも時が来た。俺の〘無敗の居合〙が発動する瞬間である。
「〘迎え
全ての外部からの衝撃を吸収しきって、指定した対象に当てる必中技は、神速を越える怒涛の連撃で瓦礫も斬りつつ、魔神を確実に追い詰めている……とはいえない。
「……効いてないか。流石は救済難易度特A級だけある」
そう、軽度の切り傷のみに終わったのだ。
ロミュカミュシアの歪んだ笑みと残像が揺らぐ赤黒い瞳は狂気しか残っていない。
「ちぃは苦痛の魔神シュカロア。快楽よりも怖い久痛のはじまりろー。」
第ニラウンドが始まった瞬間だった。
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