第14筆 ドラゴンレイド前編

「おーい、頑張ってくれーみんな~!」


 報告者の男性が大手を振って村の外まで送り出してくれた。

 あの人は普段は陽気な人らしい。

 緊急事態だからパニックで口調が荒くなったのなら無理はない。

 では行こうか。いざ開幕!!


画竜点睛アーツクリエイト〙──!!


 ダルカスさんとディルク翁の為、早速、召喚用画面に馬2匹を描いた。


召喚サモン〙!!


 二頭が草を食む光景を描き、栗毛馬と黒馬を召喚した。

 なんや二頭ともキラキラしとるで。

 大阪に住む叔父の訛りが何故か飛び出してしまった。

歩いた後に光の粒が飛んでいっているんだが、なんだこれ?

 厩舎から連れてきた二頭も『あぁ、それなら出来る』みたいな顔をして同じく光の粒が飛んでいった。

だからそれ何? 後で調べよう。


「皆さん乗ってください。急ぎましょう」


「それが召喚術ってやつか?絵を媒体とするんだな。煌めいているのが謎だが……。まぁ、良い。私は栗毛の馬に乗ろう」

「これは……霊獣化した馬じゃな! 召喚術とは面白い。儂は黒馬に乗るか」


 へぇー霊獣化っていうのか。調べずに済みました。ディルク翁、教えてくれてありがとうございます。

 俺は厩舎から連れてきた赤兎馬に乗った。赤い馬なんて珍しいもんね。皆気味悪がって近寄らない。


 赤兎馬は皆の目に対して沈んでいた。


「大丈夫、君は珍しいからびっくりしているだけだよ」


すかさずフォローの言葉を入れ、慰めたら表情が明るくなった。

 俺が乗ると※クールベットをし、『行こう、行こう』とせがむので出発した。


 ※後ろ足のみで立つこと。竿立ちとも呼ばれる。


 始まりの草原を颯爽と駆け、馬たちが走った後に光の粒と軌跡が走る。めちゃくちゃ速い。時速80セルダはあるんじゃないのか。


 道中、目が赤く光る筋骨隆々なゴブリンを見かけた。

 馬に追い付けないかと思いきや、どうやら違う。

 全力で追いかけ始め、今にも捕まりそうだ。


「ちっ、小鬼狂戦士ゴブリンバーサーカーか。報告通り何らかの影響で急激に進化したようだ。あいつを放っておけば村にも被害が出る!急いで討伐してくれ!」


 ダルカスさんよ、わかったけど目がやっと追い付いているんだ。

 ウィズムっち助けて。


『お兄さま、身体が訛ってませんか? 身体能力向上剤の投与を開始するのです。これで音速まで見えますよ』

『ありがとう。邪神の呪いが強くてな』


 おぉ……太ももに刺したようだが、蚊に刺されたような感触だ。段々と残像まで見えるようになってきた。

 それと、なんか口調が少し変わった? あの口調も好きだったんだけどな。


『そ、それは……その………甘えたい時に使います。』


 不覚にもドキッとしたわ。いかんいかん。俺にはミューリエという純愛を決め、花嫁予約を入れた女神がいるんだ。

 このボクっ娘AI+妹属性伸びるぞ。男を数々惚れさせるぜ。


 うん、このスキルのお陰でかなり見える。

 早速召喚~。あっ、これくらいの、簡単な、雷を描き描きして~。ゴブリンめがけて召喚だ♪


「喰らえ、〘雷撃の嵐ライトニング〙──!!」

「ウゥギャァァーー!! 」


 ゴブリンバーサーカーが悲鳴をあげ、亡骸なきがらが炭素化して灰に変わっていった。

 うわぁ、怖い怖い。上位互換機能怖いわー。

(真顔)


「若造よ。風属性特級魔法、〘雷撃〙じゃねえか。初手でその威力とはやり過ぎじゃ。ほれ、手本を見よ」


 そう言っておきながらディルク爺、指先から出したろうそくサイズの火でゴブリンを木っ端微塵に爆発させてんじゃねーかよ!?


 ぽん、ぽん、と可愛い音がするけど、ものすごい勢いで発射してる──!


「音が可愛いじゃろ?  火属性魔法:初級特殊技〘火種爆弾ぱーちぃぼむん〙だ。ユーモアを求めた結果よ」


 いやいや! 戦闘にユーモアなんているんですかっ!?  技名もなんか独特の可愛さがあるねぇ!!?


「ほう、ガキは中々だな。まったくクソジジィディルクは変なものしかやらねぇ。お、ゴブリンキング子鬼王か。あいつを狙おう」


ここから数十m離れたところに周囲に兵を囲み、指示をしている王冠を載せたゴブリンがいた。

おそらく王であろう。

ダルカスさんは通常の2倍はある巨大な弓矢を構えた。


「〘超音速巨大弩バレスタラ・ヴェデルオーノ付呪エンチャント鉄の大楔クーネオ・フェッロ〙──!!」


 ダルカスさんは一体のリーダーらしき小鬼王ゴブリンキングに半透明のやたら太い矢を打ち、脳天に直撃させた。


曲射である──!


 勿論、王は血を噴き上げて即死した。だが、それで終わらずまさかの太い矢が開いた。

ここからが悪夢の始まりだった……!


 その矢が展開、よく見ると返しがついた無数の黒い半透明な杭が格納されている。


大丈夫かと心配する王に集まった小鬼狂戦士ゴブリンバーサーカーに刺さっては貫通し、生き物のように楔が動き周り貫通をし、無数の風穴を空け絶命、ほとんどが致命傷により無力化されていった。


「ふっ、こんなもんだろ。〘幻創零救アズレドゥン・ツィオーネ〙を使うまでも無かったか」

『凄いです! あれは……!』


 ウィズムっちが驚きの声をあげて解説する。


「無から有を作り出す創造の権能っ! 死に近い経験をすると得る圧倒的な能力の一つで、如何なる状況0%の状態でも救いの一手が出せる最上位の異能なのです! 人間で創造の権能が使えるのは他の世界を含めてたった4人……!!!」


「その一人がどうして目の前に──!?」

「ガキ……いや、マサオミ。俺は一度死んだ。心を強く持ち、曲がらぬ意志を貫け。おまえさんからも死を越えた強さを感じるな。上手く使えよ」


 指先を動かして優雅に杭と剣を撃つ。

 都市伝説級だが、本当に無から武器が出せる人がいると思うと純粋に格好良いと思った。


 一方ミューリエとルゥはというと。


「ルゥちゃん頼むね! 」

「きゅうううー!! 」


 俺はルゥが信じられないことをしているのを見た。残ったゴブリンたちがいる場所の空気が蜃気楼のように

 

 大気がキイィィィンと音を立て、振動し、ゴブリンがぐわんぐわんと歪み、


 パァァァーーーン!!


 と耳を塞ぐほどの爆音が鳴り響いた。

 空気を圧縮した手のカタチをしたものがゴブリンを潰していた。

 超視力で状態を見るとぺったんこになった残りの小鬼狂戦士ゴブリンバーサーカー等だった。

 ルゥを敵に回してはならん。潰される。

 こっちが本当の悪夢だった──!


 数秒遅れて生まれる感情。それは畏怖と驚嘆だ。

 あのルゥが、重力を操作しやがった!


『土属性神級・重力魔法ですね。ルゥちゃん凄いね! 』

「おいおい、土属性魔法の極致、重力操作か!?」

「あのルゥというスライム、重力を操るか」


ミューリエきゅんが褒め、ダルカスさんは驚き、ディルク翁は特異点星神について詳しいようで特に驚かなかった。

だが、俺は溢れる感情を抑えずにはいられなかった。


「ルゥ、どうして重力操作ができるんだッ!?? 」

「ルゥちゃんがね、出来るかも、って言ってたから試してもらったの!」

「きゅうう、きゅうぅ!!」

「初めての討伐楽しいね!って言ってるよ!」


急にミューリエきゅんが翻訳してくれた!?


「どうして言葉がわかるんだい?」

「オミくん忘れてない? 私はこの世界の女神だよ?」

「はっ! すみませんっ、女神様ぁ~! この世界に住む者たちの言葉がわかってもおかしくないですよねっ!」


 そうでした。ミューリエ様は、エリュトリオン出身の女神様でした。 お茶を濁してスルーされたけどそりゃ、わからないわけがないよね~!!


 デモンストレーションにはもってこいの客、ゴブリンたちだったな。

 そろそろ着くはずなんだが………。


「ありゃあなんだ?」

「なんじゃありゃあ?」

「えっ? オミくんあにあれ?」

「でかすぎない?」


 それは山のようにデカい50セルクmをゆうに越える黒いドラゴンだった。

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