第1章 南方大陸 火の試練
シャルトュワ村編
第5筆 美しきパートナーに花冠を
転移門を通ると地上から3m程浮いているところから出現していることに俺は気付き、即座に宙返りを2~3回転した後、優雅に着地。
「邪神の呪いが強いな。せっかく3年も修行したのに、ほとんどの力が制限されたか」
つい、愚痴がこぼれてしまったが何だか楽しい。
時刻は朝8時だな。
銀河団の爆発に巻き込んでも壊れなかった神具⟬
全世界の座標と時刻、音声認識、簡易検索、歩数計、天気予報、コンパス、ストップウォッチ、高度計、温度計、気圧計、カレンダー、通話、ホログラム表示によるテレビ電話、心拍計など頑丈すぎるスマートウォッチの印象だ。
こういう時、座標が少しずれているのはコスモちゃんの天然なところが発動したなぁ、と思いつつ周囲を眺めてみる。
どうやらここは平原のようだ。まばらに敷き詰められた石畳は苔むし、建てられてから長い歴史が経過していることを物語っている。そよ風に揺られる草は青々としており、土の匂いが心地よく嗅覚を刺激した。
俺の背後にはコスモちゃんを模した高さ2m程の石像があり、左右に男女の石像、六方を取り囲むように男女の石像が鎮座している。
配置に意味があるだろうか? とても興味深い。
もしかして事前情報で学んだ六聖神や二皇神と呼ばれる方々に良く似ているな。
こんな天気の良い日は読書をしながらゆっくりパートナーとやらを待とう。
⟬
~1時間後~
「……くん……ま……おみ………雅臣くん! 起きてくださいっ!
「ふ…。ぅん……?」
寝っ転がった状態の俺の視界に、コスモちゃんと良い勝負になるほどのかなりの美貌をもった少女がいる。
前屈みに俺を見つめ、首を傾げる彼女。
──俺は気づいてしまった。この魂が揺さぶられるほどの高揚感と緊張感を知っている。恋というタチの悪い病にかかってしまったことに。
「お目覚めですか、雅臣くん? 」
彼女は垂れ下がった襟足を耳にかけた。
あぁ、何ということか。
俺の好みのタイプの女性像と来た。
声も可愛いし、こんな美しい娘と付き合わないと後悔するぞ、と本能が叫んだ。
そんな彼女の特徴はオッドアイの二重で涙袋あり。
双眸は夕陽を閉じ込めたかのような橙色の右目で、目が合うだけで不思議と元気をもらえる。
左目はさざ波を彷彿とさせる煌めく水色で、見るものの心を揺さぶって離さない。
髪色は薄ピンクをベースとした、虹色の髪が美しい。
アカシックレコードの図書館に『虹色の髪を持つ者は強大な祝福を受けたか、全ての属性魔力が使える者の証左』と書いてあった。
可愛いだけでなく強い女性でもあるということだ。
身長は160㎝程だろうか。締まるところは締まり出てるところは出ている。
──特に着衣の上でも目立つお胸が素晴らしいです。
衣装は動きやすさが意識された格好で、スカートにはスリットが入っており、靴は茶色のヒールブーツを履いていた。
はぁ。ため息が出るほどこの娘美しすぎる。
「おっ、おはようございます……」
久々のウィズム、コスモちゃん以外の女性の為、思わずどもってしまった。
「おはようございます、雅臣くん。肩肘張らないで大丈夫ですよ。私はミューリエ・エーデルヴァイデ。今回の旅の同行者です。」
『ミューリエさま、お久しぶりなのです。』
「久しぶり! ウィズムちゃん!」
もう一つの黒革製のポーチからウィズムの
「コスモちゃんから名前を聞いたかも知れないけど、自己紹介を。」
俺は周りに咲き誇る鮮彩な
「俺は東郷雅臣です。職業は画家と
俺は片膝をついてミューリエきゅんの頭に花冠を載せた。
「花言葉は全般的に『美しい』『平和』『調和』『謙虚』『愛や人生がもたらす喜び』。白は『優美』、赤は『愛情』ですか……! 私なんかに恋をしたんですか!? あゎゎ、じょ冗談は程々にしてくださいよ……」
俺も花が好きだから益々気が合いそうだ。
実は嬉しそうに頬を赤らめて顔を隠したのを俺は見逃さなかったが、ここは鈍感にいこう。
「ダメですか? 」
「い、いやその……こんなロマンチックなの久しぶりで……友達から、よ、宜しくお願いします」
「わかりました。 宜しくお願いします!」
『っん、おほん。お二方、そろそろ本題に入りませんか?』
ウィズムが気まずそうに咳払いをした。
「あ、ごめんねウィズム。嫉妬した?」
『し、嫉妬なんてしてないもん!』
三年間の修行の中で義妹ウィズムが嫉妬すると語尾に「~もん!」とつくと知ったのでわかりやすい。
『と、とにかく、次の目的地を雅臣さまに説明します。次の目的地はシャルトュワ村です。』
「……ということは冒険者登録をするの?」
『はい、ミューリエさまの仰る通りです。ここ、名も無き平原と始まりの平原を通過して、しばらく歩くと、シャルトュワ村が見えて参ります』
うーん、歩きだとどのくらいかかるだろう?
「ウィズムっち、歩きならどれくらいかかるの?」
「歩きなら夕刻を過ぎます」
だったら馬を召喚しよう。
「馬を召喚しようか」
「召喚するんですね。初めて見るのでわくわくします。」
ミューリエきゅんに期待されているのは嬉しいなぁ。俺頑張るぜ。
鞍付きの二匹の馬が竿立ちでいななく様を描いた構図にして5分……。
ようやく完成した絵を呼び出す。
「〘
すると、画面に描いた絵が浮き出してきて破光を放つ──!
光が収まったのを確認してみると二匹の馬が見事に現れた。構図通り、召喚された赤兎馬、白馬はいななき、意を汲んで『乗れ』と首を振った。
そのお言葉に甘えて乗せて貰い、平原を後にしようとしたが、一匹の跳ね歩くスライムに俺が乗っている赤兎馬にぶつかった。
「きゅうぅー?」
これが人生初の魔物、スライムとの出会いであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます