第4筆 突入準備は着々と
コスモちゃんとの約束通り三年間の修行期間をもらった。
肉体・精神改造の一年目。
基礎体力の上昇及び、身体能力の向上。そしてエリュトリオンの世界観について学んだ。
「えーっと……二億年前に神々の世界、神悠淵界より火・水・土・風・光・闇を司る六聖神及び、生と死を司る二皇神が来訪し、エリュトリオンが誕生する。このとき、創造の十日間にて万物が構築され、天使と悪魔も誕生する。しかし、六聖神は不信感を露にして悪魔と天使の排除宣言をした。これを神天魔戦争という。一億年前まで続いたこの戦いは星の意識の涙によって終結する」
と、ここから長いので〘
トレーニングに関して簡潔に言おう。
最初の半年間は地獄であった。
重力加算の訓練をしたり、時間加速に対する訓練や、メンタル面の強化が中心となる。
「さて、今日も開始するわよ。準備は良いかしら?」
「はいっ!」
俺はマウスピースを付けて、どっしりと構えた。
──あれが来る。
「行くわよ〘アトラスの天空維持:100万倍〙──!」
本物の地球とリンクした模型が超高速で投下されて耐え抜く!
「うぐぐぐぐ…………!! 」
噛み締める歯が持たずに砕け、全身の骨、筋肉、血管等々が重圧に耐えきれず、徐々に崩壊する音が体内から
「ウガァァァァァァァ!?!」
絶叫する俺に気にすることなく、両膝に土星と水星の模型(同じく本物とリンク済み)を乗せて確実に落としにかかってきた!
「自分で決めたんだから、貫き通しなさい。初志貫徹よ」
「限界を越えろォォォ!! 今日…こそ、ノルマを…達成……する……うぅぅ………!!」
そのノルマとは、10日間飲まず食わずで抱え続け、最終試験にブラックホールから呑まれても生還すること。
だけど、今日はもたなかった。
「……もう、無理いィぃ」
開始数分にして地球の模型を落としてしまい、本来の100万倍の重さに圧死した。
「本当に雑魚ね。もう良いわ。どっか行ってちょうだい」
イラッと来るかもしれない。
だが、この
しかし、俺とてまだ素人。
|文句の一つや二つは
「なぁ、コスモちゃん。君の基準はおかしいんだよ! 俺に人間辞めろって言いたいわけっ……」
俺の唇に指を当てて制止された。
精神体のみになった俺を見て、虹彩の輝きのみで返事をする。
「ごめん」
言いたいことはこうだろう。
……
返す言葉もない俺を尻目に、
最後に指パッチンを一つ。
一瞬にして新たな肉体を与えられ、転生完了した。宇宙の創始主には、造作もない行為らしい。
そんな女王コスモちゃんが統べる
雄大な土地に様々な施設が存在しており、コスモちゃんと出会った大広場を始め、トレーニング施設に食堂、大浴場や神殿、宿等々……。
それをフル活用して己の肉体と精神を鍛えていった。
最終試験のブラックホールから生還も、ホワイトホールに変えて生還。
あと3秒で自身が消滅寸前。ギリギリクリアだっだぜ。
先程以上に厳しかったコスモちゃんの鬼教官っぷりは忘れることはないだろう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
召喚術研究の二年目。
〘
喉が乾いたので、水入りの湯呑みを〘
「〘
赤色が大好きなので、エンジ色の湯呑みを描いて出てきたのは……木の枝だった。
「は!? ナメてんのか、この機能? 〘
木の枝。
「さては俺を
また、木の枝。
「バグじゃあるまいし……」
何もしてないのに木の枝が勝手に出てきた。
「オオィ!! ふざっけんな、この
《…………》
思わず下町言葉が漏れてしまう。
「
砂をかけやがったぞ、こいつ。
喋らなくても意思はあるのか?
となると、よくあるスキル熟練度のようなものが足りないだけだと痛感したので、ひたすらに描くことにした。
あ、一週間後に湯呑みは召喚できたよ。
次に
何で隣にあるのかを聞いたら、俺の為にわざわざコスモちゃんが
もう
ここには入場制限があり、神々が住まう世界、
ただし、例外があって、コスモちゃんの許可が下りた者は入れるとか。
やっぱり、宇宙の創始主ってすげぇ。
転移門と呼ばれる観音開きの扉を開くと、中心に絶えぬプリズムを放つ
キューブって人類に
叡智の象徴としては申し分無いほどの美しさだ。
ウィズムっちから解説を受け、アカシックレコードに調べたいものを話しかける。
「アカシックレコードさん、召喚術について知りたいです!」
その直後、プリズム光線が放たれ、一つの本が提示された。木製の
題名には⟬第一宇宙から第五十一宇宙に至るまでの召喚術の歴史⟭と書かれており、
50㎝を越える巨大な本を本棚から下ろし、ぱらぱらとページを
「ほうほう、ふむふむ。……読めない☆」
「こてっ。もう、マサオミさまったら。これは特殊な神代文字……代読しますね」
描いたものが召喚される能力〘
アカシックレコードに記載されているが、閲覧制限があることが発覚し、ルーツはわからなかった。
しかし、収穫は“確かに”あった。
=======================
◎この召喚術はどの召喚術よりも上位の存在で、失われた原始の召喚術に近い構造術式である。
◎画家や絵師など、絵が上手く、精密に描ける者はその真価を発揮し、いかなるものであれど、普段以上の性能を約束する。
描かないと召喚されたものの性能は落ちるか、召喚されない。
絵が下手な人間が使用すると、起動時間一秒につき、一年寿命が減る。
◎最初のうちは認めてもらえず、木の枝しか召喚してくれない。もっと酷い場合は砂をかけられ、
◎召喚したものは自動成長機能が備わり、所有者の希望に応じて独自進化する。
◎この能力を有する者は、魔法を行使することができない代わりに、現象を描いて召喚することが可能。
◎召喚物の声を聞くことができる。
=======================
「……なんか分不相応な力だなぁ」
かなり常識はずれの性能揃いと来た。
使い方によってはいくらでも化ける。こんな能力を生まれつき持っていたなんて、なぜ気付かなかったんだろう?
最初は木の枝一つ召喚することすら
結局、二年目が終わっても使える理由がわからなかったが、使い方は纏めておこう。
=======================
1.〘
2.半透明の画面に召喚したいものを描く。このと き、指先でも、ペンタブでも目線でも描くことが可能。戦闘中に同時で描くことが出来る。
3.「
4.画面から召喚物が浮き出て
5.もし召喚物が破損、または改修したい場合は名前とこの言葉を唱える。〘
6.もう一度召喚したい場合は〘
=======================
戦闘特化の三年目。
全能のコスモちゃんから武術全般と白兵戦、中距離戦闘に遠距離戦闘を教わることになった。
剣術は
何回も死んだ。ほんと俺の命の扱われ方が雑ッ!軽すぎるわッ!
コスモちゃんがオファーをかけた神々はべらぼうに強いので、三次試験で倒すのも一苦労。
最終試験では、コスモちゃんを剣神たち5人がかりで何とか倒しました。全能の〔
一年目から続けているトレーニングのおかげで物覚えが良くなり、三年目が終わる頃には全てマスターした。
コスモちゃんが教えてくれた技術は全宇宙の流派の源流になったものらしいので、応用を利かせれば如何なる状況でも対応出来るようになるそうだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
時は経ち一年後……。
約束の三年間に
星々によって再構築され、|コスモちゃんによる超新星爆撃を受け続けて鍛え上げられた肉体は、
しかも死ぬ度に若返り、16歳の肉体に若返った。
今日まで数えただけでも7540303回死んでいる。
メンタルトレーニングのおかげで余裕をもって思考するようになり、並列思考が可能となった。
これで戦闘時にパニックになることはないだろう。
召喚した黒みがかった鋼色の簡素な鎧に、赤い
「ふふっ。似合ってるよ、オミくん」
三年間にいつの間にかオミくんと呼ばれるようになったが悪くない。友人にも同じ呼び方をされていたしね。
「あっ、そうだ……忘れてた。三つ連絡ね」
コスモは銀河の渦を指先でくいっと引き寄せて手を突っ込み、ごそごそと探し始めて数秒……。
お目当ての物が見つかったようで三つのアイテムを取り出した。
1つ目は手紙のようだ。
「一つ目、邪神は封印済みだけど、10~12月に封印が解ける可能性が高いという手紙が届いたわ」
……ん? 封印済み? 封印済みなのっ!?
「封印済みなんですかっ!?」
「あっ、ごっめーん。あたしのうっかりさん。
オミくんが訓練後、疲労のあまり突っ伏している時に言ったからちゃんと伝わってなかった~。てへ♡」
いやいや、姉さん。それはないですわ。
「でも要注意。予想が外れる時もあるから」
確かに。いつだって理想どおりになるとは限らないから警戒しておこう。
忠告の後、次に渡されたのはポーチだった。
隻眼の猫みたいなデザインで、口を模したファスナーを開いてみた。すると、どんなサイズのものでも容易に吸い込まれて入っていった。
「神具⟬
悪戯がどの程度がわからないが、お菓子をあげておけば良いのか?
“
「宜しくな、カキア」
「シャウゥゥゥーーー!」
〘
「これは『秩序の星』の
「これって一体……?」
「ふふっ。私が創設した秘密結社よ。地球でいう
秘密結社って……。
「そんなことないよ。最後に一つ。降り立った先で
「おぉ、太っ腹ですね! 三年間ありがとうございましたっ! 行ってきます!」
「うん、行ってらっしゃい! 出でよ、〘
コスモちゃんが喚び出した、宇宙で最初に造られたという転移門を
こうして俺は画家として、召喚師としての舞台を異世界へと移すことにした。
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