第3筆 宇宙の創造主は美しかった
「のっわぁ!? ちょ、ちょっと! いきなり現れたかと思いきや、誰なんだよっ!?」
ふふっと
宇宙と共鳴しているということだろうか?
俺の名前を知っているし、キスしてくるとはこの娘は一体何者?
「そうね、どこから話そうかしら?」
「なっ!? もしかして、俺の心を読んだのかっ!?」
それは異質。だが、いかなる女性とも違う安心感を与えてくれる。
まるで大いなる母の愛のように。
「あら、驚かせちゃってごめんね、
ひえぇーー。なんて長生きな神なんだよ、コスモちゃん。まさか都市伝説にまで上げれていた全宇宙の創造主に会えるなんて……。
しかも超ひも理論で宇宙は50度目を迎えて……51度目?
「滅んだのよ」
あっさりと。
どの出汁よりもあっさりとした答えだった。俺はため息しか出ない。
「そうかしら? 長生きしてみるものよ。 次の解説をして良いかな?」
「はっ、はい」
次は、この宇宙みたいなところのことについてだろうか。
「ご名答。ここはね、
コスモちゃんが解説をしていくにつれて、虚空から惑星や星雲などが現れて俺の周囲を巡る。
全ての話が終わると、惑星たちはカラフルな絵の具となってぶちまけられた。
何ともセンセーショナルな光景である。
「あぁ、この絵の具で出来た惑星たち? これは
人のものを勝手に使うのはいかがなものかと思うけど、なんて鮮やかなものだろうか──!
しかもこれが生まれつきの能力?
なぜ、今まで使えなかったんだろう?
「それに関してはわからないわ。あたし、
そう言ってコスモちゃんは子どもから大人の姿へと変化し、たわわに実った胸の谷間からおもむろにキューブ状の何かを取り出した。
ぐふっ! な、何てところから取り出しているんだっ!? 大変
(だけど、セクシーで悪くないっ! 美しい!)
「体内に入れていたら安全だからさ、ここに入れてたんだよ〜」
「そっ、そうなんですかっ?」
動揺のあまり、どもってしまった。
「やっだぁ、もう可愛い!」
コスモちゃんは突然俺の顔に胸を
しかも、この香水、[
宇宙の香りを再現した幻の香水……。
焦げた匂いや燻された匂い、ラズベリーの香りなど、様々な香りが内包された逸品である。
くっ、紳士たるもの、ラッキースケベ以外には屈さぬ。
それより、そのキューブについて説明してほしい。
「あら、残念。このキューブはあたしの
俺が生まれた時から、ここに来るのが決まっていたわけだろうか?
「遅かれ早かれ、ね。遅くても少しずつ説明していって来てもらうつもりだったの」
そうなると凜花ちゃんを
「えぇ、それに関してはダーリンに頼んで調査してもらっているわ。心配しなくても大丈夫よ」
だ、ダーリン? それはさておき、あいつは教え子を
「さぁて、出番よウィズムちゃん」
コスモちゃんから受け取った瞬間、ホログラムが展開され、起動した。
『ボクはウィズム・リアヌ・アカシックレコード。マスターである雅臣さまの為、頑張るので宜しくなのです』
その姿はコスモちゃんの幼い姿に似ていて、風で揺らぐエフェクトから、黒髪が腰まであるのをうかがえる。
服装はなぜかメイド服で、声は頭の中に直接響く
「宜しく、ウィズム。頭の中よりスピーカーでお願いして良いかな? そして、何でメイド服なの?」
『すみません、修正致しましゅ』
「あ、噛んだ」
小さな発砲の音。微かに漂う焦げた匂い。
一瞬額が熱くなり超光学熱レーザーで撃たれた気がして、額をさするがなんともない。
小指を回したコスモちゃんがなかったことにしたようだ。
「今、何かした?」
『いえ、気のせいなのでちゅ』
なんだこのヤンデレは。
噛んだことを指摘するだけで発砲とはどんな
「こほん。とにかく、地球では童顔の女の子がメイド服の格好やコスプレをするのが流行っていると聞いたのです。雅臣さまはこういうのが好きなんですよね? ちらっとね』
もしかして、メイド喫茶のことだろうか?
幼女がか細い太ももを晒しているが、俺はロリコンじゃない。ホログラムの頭をなでて諭すことにする。
「子どもがおませなことをやるんじゃない。頭は良さそうだけど、悪い大人に捕まったら駄目だぞ」
「や、やめてよぉ……子どもじゃないのですぅ! お兄さまのバカァ!!」
色々とズレているポンコツ感が可愛らしいので、
「ところでコスモちゃん。こういう時って、転生とかあったりする?」
余興が長い。
ここまで長居しているのだから、そういうことがあってもおかしくない気がする。
コスモちゃんの顔色を
「……うん。ここからは本題ね。天命ではない予想外の事故で亡くなってしまったから。こうしてわざわざ呼んだのも
彼女は段々とニコニコしていた表情とうって変わり、真面目な
「地球とは異なる世界、エリュトリオンで復活が近付く邪神を倒して貰いたいの」
……マジですか? 本当に?
「本当よ」
うぉぉおぉぉおぉ、キタコレッ!
待ってました! こういう展開!
憧れの異世界、剣と魔法、異世界人による産業革命とかやっちゃったりして……?
本当はずっと夢だった。昨年の異世界転移の世界抽選すら外れたから、この上なく嬉しい。
ついに叶うのか!
さっき『転生準備完了』って言っていたし、あぁ、楽しみだ!
「うんうん、楽しみにしてくれているのは有り難いわ。だけど、異世界人は邪神を倒すために100年に一度送っているの。キミが108人目よ」
ん? 100年に一度だって? 現在の地球でも異世界転移とか探索やってるからこんなものか。
対して珍しくないくらいが偏見も少なく、住みやすいだろう。
「
10800年かかっても倒せなかった邪神ね……。
それほど強力な敵となれば、戦闘力はジムで鍛えた程度の俺に倒せるだろうか?
「このままでは駄目じゃね? 俺、絵以外は素人だよ?」
「そうね」
「
可能であれば、時間が欲しい。
長ければ長いほど良いな。
俺は先程の事故みたいに滅多なことがない限り、突っ込まない。
準備できるものは万全な状態で攻略するぞ。
「あの、時間を頂けませんか?」
「良いわよ。そう言うかなと思って三年の修行期間を設けるわ。(邪神が友人だったなんて言えるわけないし、あの大きな過ちを繰り返すわけにはいかない。彼の慎重さを活かさないと)」
ん? 何か小声で言ったような?
それより、安心要素が増えた。ド素人が行って即死より、強くなるために三年くらい欲しいと思っていた所よ。
比較的平和な地球と違って、何が起こるかわからないしね。安全と慎重第一、これ鉄則。
「しかし、現実味を感じないや。確認だけど、これって夢じゃないよね? 頬をつねってくれない?」
いたぁあぁぁ!? うん、そうだよね。
平穏を取り戻し始めた精神に言い聞かせるとしよう。これは夢やゲームではなく、
『これにて解説を終了とさせて頂きます。では、雅臣さま。明日より修行を開始します』
慎重にこの修行が着実に実を結ぶことを信じて、俺はコスモちゃんとウィズムに礼をした。
頼まれたことはやって見せよう。
好きなこと、興味のあることをもっと楽しみたい。
新たな人生では出来なかった事をやろう。
これが俺の決意だ。
「宜しくお願いしますっ!」
直後、俺の頭上に彗星が落ちてすぐに
え、もう修行始まって人生も終わり? って、終わってたまるかぁー!!!
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