03
翌日、魔法の授業。
受けているのは孤児院の中でも10歳以上の子たちだけだ。
ルナたちはちょうど10歳なので出ているのだが……
「――ですから自然界のマナを体内に取り込み、体内の器官を通して発現させる現象を『魔法』と呼ぶのです――」
「――ですが人間はこの器官の発達が乏しく、魔法があまり得意ではありません――」
「――そのため、先の戦争の際に生み出されたのが、魔法をより小規模・短時間にしたものが――」
「……ふわぁ」
どこからともなく欠伸する声が聞こえる。
それも無理はない。
魔法の授業と言うから、てっきり使わせてくれるものだとばかり期待していたのに、実際は魔法とは云々の座学ばかり、眠くもなってくる。
うんちくを聞くより実際に試してみた方が理解も早いのに。
「――では外に出て実践してもらいましょうか」
いいかげん飽きてき――いま実践って言った?
――
場所は移り、中庭。
私たちが移動すると、すでに1人の男が立っていた。
「こちら、講師としてお呼びしたBランク冒険者のライネルさんです」
「よろしく諸君!」
茶髪にターバンを巻いた元気なおっさんだった。
「今日は諸君らの魔法適性をしかと見極めさせてもらうぞ」
魔法適正と聞いて男子たちが盛り上がりを見せた。
私も内心わくわくしているので人の事は言えないが。
「いいか諸君。授業で聞いたかもしれないが、魔法は出すだけならば簡単だ。もしかするとこっそり使ってみた者もいるかもしれない。だがこれだけは覚えておくように、取り扱いにはくれぐれも注意が必要だ」
そう言うとBランク冒険者のライネルさんは空に手を掲げ、気合のひと声を上げた。
何をするのか察しのついたみんなは押し黙って様子を見守っている。
すると掌の上にマッチ程度の火が湧いたかと思うと。
次の瞬間、小さな種火はイノシシほどの巨大な火球に膨れ上がり天空に打ち出された。
火球は孤児院の屋根より、飛んでいる鳥より高く上り、綺麗な火の粉を散らせて大空に大花を咲かせる。
それは私たちに、夢と感動と同時に、魔法に対する畏怖も刻み込んだ。
Bランク冒険者のライネルは子供たちの表情を見回し、今年も順調に依頼をこなせたことを確認した。
現役冒険者の彼からすると、この魔法は魔物を相手にする実戦では全く役に立たないネタ魔法だ。
発動まで時間は掛かるし、見た目ほど威力もない。そして疲れる。
効果は野生動物を驚かすのが精々だろう。
それでも子供たちに魔法を適切に畏れてもらうには、これが最も効果的だとギルドのマニュアルにも書いてあった。
結果は大成功である。
満足げに頷き、若干マナ疲れを起こしている頭で続くマニュアルの台詞を思い出す。
「ご覧の通り、魔法とは強力で、使い方を間違えれば大変な事になる。だが諸君らは賢く、そして強い。魔法の怖さを理解した今こそ、正しく扱えるというもの。さあ、まずはロウソクに火をつけるところから、やってみよう!」
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