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地方から東京へやってきて、東京から離れることとなった。どこへ向かうか迷っていた私は行く宛をなくしてしまった。地元に帰ると言っても両親とはしばらく連絡を取っていないため、何から話せば納得してもらえるか分からなくなった。すると、自然に大学時代を過ごした場所の物件を見ていた。自分が持っている貯金額と物件の値段を照らし合わせながら住む場所を決めた。本当はもっと広い部屋にしたかったが、春の時期に物件が確保できただけでも良いことだと思った。引越し会社へ連絡し気付けば当日を迎えていた。部屋からどんどん物がなくなっていき、残るは自分と財布などが入ったカバンだけとなった。場所は違えどこの光景は前にどこかで見た記憶があった。すると、携帯の音が鳴り響いた。これもどこかで聴いたことがある。私は携帯を見た。電話を掛けて来その名前を見て自然と笑みが零れた。ただ、悟られたくなかった私は表情を硬くし、画面を見てから七秒くらいで下半分にある電話の受話器が描かれた丸の部分をタッチした。

「もしもし」

「もしもし、急に何?」

「いや、何してるのかな~って思って」

相手はここに来る前、最後に会った今田 一(いまだ はじめ)である。その一言に安心したのか、つい本当のことを話してしまった。

「私仕事辞めたから、そっちに帰るね」

「…そうか…いつもの場所に来い」

今田はそう言って電話を切ると、腹に抱えたギターのヘッドとボディを調整し、何かの曲を弾き始めた。私は前のように思い入れがない部屋を出て、思い出の場所に戻るのであった。

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