おわりに
名鳥 佑飛
1
「えっ、辞める?」
あまりに突然の通達だったか、人事担当の近藤は目を真ん丸に開いて身を乗り出していた。それはこの株式会社コンティニューを三年間勤め、退職の意向を人事担当に言っていたことに他ならない。
「はい、突然すみません」
「何かあった?」
会社の人は救いの手を伸ばしている。そんな会社に三年間いたのになぜ辞めるのか、それは入社前から自分に問題があること、何をしても気力のない自分がここにいてはいけない。そんな思いが日に日に増すばかりであった。
「ちょっと悩んでしまいまして」
このように曖昧に説明した後も止められることは何度かあった。ただ、辞めると決めて意思が固まっていると判断されたのか、それからは特に大きく取り上げられることもなく終わった。入社以来話していなかった同期の人とも久々に話したりもした。辞めるのは私が一番先のようだ。それまでいるかいないか分からないような扱いを受けてきたのに、辞めるまでの日々は変に優しかっただけに、一日がとても長く感じた。理不尽に叱っていた上司もこの時ばかりは何も言わなくなっていた。そして気付いた時、次の転職先が決まることなく私の社畜生活は終わりを告げていた。
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