晴ちゃん奪還大作戦!
晴ちゃんが誘拐されたと聞いた次の日、土方くんは学校を欠席していた。
先生に聞いたら風邪だって言われたけど、本当かなあ? 昨日は元気だったのに。
休み時間に四年生の、晴ちゃんの教室にも行ってみたけど、やっぱりこっちも欠席。そしてマフィンも情報を集めたいと言って、今日は休んでいた。きっと今頃、必死になって探してくれているんだろうなあ。私も何かしたいって思うけど、どうすることもできない。
だけど学校が終わった後は、大急ぎで家に帰った。マフィンやパフェから、一刻も早く話を聞きたかったから。
『お帰りアミ。丁度パフェも来てるし、報告会を始めようか』
帰宅した私を待っていたのは、お庭に来ていたパフェとマフィン。マフィンは情報収集をしていたためか、猫の姿をしていたけど、真剣な目をしながら、場を仕切っていく。
『まずはパフェ。あの後、犯人から連絡はあった?』
『うん、電話がかかってきたよ。ハルちゃんを返してほしかったら、三千万円用意しろって言ってた』
三千万円⁉ やっぱり、身代金目的の誘拐だったんだ。しかも私が想像した、三倍の金額。
だけど、土方くんの家なら払えるかも。もしかして家がお金持ちだから、晴ちゃんが狙われたのかもしれない。
『パパもママも大慌てで、スイくんもすっごく心配してた。今日は学校も休んで、家で連絡を待ってたんだよ』
「土方くん、やっぱり本当は風邪じゃなかったんだ。それで、お金は用意できたの? もう晴ちゃんは返してもらえた?」
『ううん。また連絡するから、それまでに用意しておけって言われてた。あと、警察には言っちゃダメって言われたんだけど、実はこっそり連絡して、今は家におまわりさんがいるの』
え、連絡しちゃったの? 大丈夫かなあ? もしも犯人にバレたら、怒られない?
「晴ちゃん、酷いことされなきゃいいけど。もしかして余計なことをせずに、お金を渡した方がいいんじゃないかなあ?」
そりゃあ大金を、みすみすあげちゃうのは勿体ないけどさあ。だけどマフィンが、小さく首を横に振る。
『もし取引が上手くいったとしても、ハルを無事に返してもらえる保証はないからね。誘拐犯の言うことなんて、信用しない方がいいと思う。そう思ったからこそ、スイやその家族だって、警察に連絡したんだろうし』
それもそうか。だけどそんな危ない人達に捕まっちゃったのなら、ますます心配だよ。
『アミ、そんな顔しないで。ボクからも報告がある。実はハルが今どこにいるか、もうかなり絞り込めているんだよ』
「本当⁉」
まだ探し始めて一日しか経っていないのに、ニャットワークって凄い!
『仲間の猫たちから集めた情報では、ハルを連れ去った青い車は、隣町の外れに行ったところまでは目撃されている。犯人とハルは今でも、その辺にいる可能性が高いよ』
「そこまで分かってるんだ。それじゃあ、さっそく土方くんに知らせて……」
『待った! いったい何て説明するつもり? まさか猫から聞いたっては言わないよね?』
うっ。そういえば、全然何も考えてなかった。
『昨日も注意したばかりじゃないか。よく今まで、動物と喋れることを誤魔化せてたね』
み、耳が痛い。どうせ私は、考え無しだよ。
『まあボクもいずれはちゃんと理由を考えて、警察に話そうと思うよ。だけど今つかんでいる情報だけじゃ、まだ不十分なんだ。隣町の外れじゃあ、漠然としすぎてて説得力が無い。せめてもう少し絞りこまないと』
「あ、そうか。それじゃあまだ、情報を集めなきゃいけないんだね」
『うん。それでさ、一つ作戦があるんだ。そのためにはパフェ、君の力を借りたい』
『え、ワタシの?』
キョトンとした声をあげるパフェ。いったい、何をしてもらうつもりなの?
『だいたいの場所は絞り込めているからね。だったらそこまで行って、後は匂いをたどってもらえば良いんだよ。パフェならハルの匂い、嗅ぎ分けられるでしょ』
なるほど。さすがマフィン、頭良い! 警察犬みたいに、匂いをたどるってことだね。パフェなら嗅ぎ慣れたハルちゃんの匂いなら、すぐに分かるもんね。
『でも、ワタシにできるかなあ? 確かにハルちゃんの匂は分かる、離れていたらちゃんと、嗅ぎとれるかどうか』
予想に反して、自信なさそうなパフェ。そっか。いくら鼻がよくても、限界はあるものね。だけどマフィンはそんなパフェの頭を、ポンと撫でた。
『その辺は任せて。ちゃんと手は考えてあるから。問題はどうやって、パフェを隣町に連れていくかだけどね。アミの家に来るだけならともかく、長い時間何も言わずにつれ回したら、スイや家族のみんなが心配するかも』
そっか。ハルちゃんが誘拐されて心配している時にパフェまでいなくなったら、土方くん気が気じゃないかも。けど、それなら私に任せてよ。
「パフェ、今日はもうお散歩に連れて行ってもらったの?」
『ううん。ハルちゃんがいなくなって、みんなそれどころじゃなかったから』
「やっぱりね。それなら私が、パフェをお散歩に連れて行くって言えばいいんだよ。土方くんも晴ちゃんも風邪を引いたことになってるんだから、誘拐のことは知らないフリをして、代わりに散歩に連れていきたいってお願いすれば、きっと任せてもらえるよ」
『あ、それいいね。アミちゃんナイスアイディア』
どうマフィン、私だってこれくらい考え付くんだから。
『なるほど、いい手だ。それじゃあ早くしよう。隣町といっても、距離があるからね。急いだ方がいい』
よーし、善は急げ。待っててね晴ちゃん。もうすぐ、助けに行くからね。
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