妄想飼育日誌
日竜生千
観察・仮説・妄想
「アンタっ! また卵食べたら承知しないんだからね!」
そう言って、メダカのメスがオスのメダカを蹴散らしているように見えた。
オスが来てから彼女はもう5回産卵している。
まだ、かえった卵は一つもない。
これは短い夏の長い戦いになりそうだ、私にとっても。
ひと月が経ち記憶の限界が近かった。これ以上は整頓して覚えていられないから、メモることにした。
生き物の記録など、「お別れ」で終わるから記録より記憶して時間に吹き流すのが常だ。そうしてきた。
その記憶の半分以上は、私が勝手に作り上げた妄想でできている。
観察して仮説を立て妄想する。
なんだか話の作り方に似ているのは、こっちの生き物と遊ぶ方が生まれた時からのライフワークだからだ。(生き物「で」≠生き物「と」)
もちろん、メスのメダカはあんなことを喋ったりしない。
むしろ普段からオスメスは仲が悪くないように見える。
メダカにも相性があるそうだ。気に入らない相手だと卵を生まなくなるらしいが、現に産卵は続いていた。
でも、きっとそういう理由なんだ。
彼女が怒っているように見えたのは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます