第11話 ぼーい・みーつ・がーる?

 少女がなぜ苛立っているのか。ヨゾラには分からない。


「よっと」


 その小柄な体に不釣り合いな荷物を背負う少女が、ヨゾラの前に降り立ってきた。


「まったく、さっきと同じ展開じゃない……」


 狼ゲノヴァの群れを見て、うんざりとしていた少女がヨゾラの持つ謎の剣に気づく。


「貴方、それ……」


 この剣の正体を知っているのだろうか。少女が驚いた目でこちらを見てきた。

 ヨゾラがこの剣について聞こうとした時、狼ゲノヴァが少女の背後から襲い掛かる。


「っ!」


 ヨゾラが少女を守るために焦って駆けようとしたら、少女はため息を一つ吐いて後ろへと向いた。その振り向きざまに、いつの間に手にしていたのだろうか、刀身が桃色と白色で彩られた剣でゲノヴァを斬る。

 呆気にとられたヨゾラの前で、少女は残りのゲノヴァ達に向かって剣を構えた。


「とりあえず、あんた達は邪魔」


 その後、ヨゾラが加勢する間もなく、少女はゲノヴァたちを倒した。まるで鬼神の如く剣を振るう様は思わず見惚れてしまいそうなものだったが、その華奢な体でなぜ剣をそこまで振るうことができるのか。彼女の腕は筋肉がついてあるようには見えない。

 ヨゾラが違和感を抱いている中、敵を片付けた少女が近づいてきた。


「まさかね、ミトロア所有者を助けることになるなんて」

「ミトロア……え、ミトロア!?」


 少女はヨゾラの持つ剣を見て確かにそう言った。

 『ミトロア』。ゲノヴァを倒すことができると言われている幻の武器で、ヨゾラとソルはこれを探すために旅に出るつもりだった。

 少女が言っていることが本当かどうか分からない。でも、自分が倒したゲノヴァ、そして彼女が倒したゲノヴァは再生していない。それは間違いなく、ヨゾラとソルが追い求めていた力で。


「これが、ミトロア……」

「それがミトロアって知らない……? あなたの師匠は誰?」

「師匠? 師匠って?」

「師匠がいない……なら、そのミトロアはどうやって手に入れたの?」

「どうやって手に入れたって聞かれても……気がついたら、いつの間にか持っていたとしか……」

「まさか、ミトロアの自然発生? いや、それはありえないはず……」


 ぶつぶつと言い、何やら考え込む少女。

 自分がなぜミトロアを手に入れることができたのか。少女もなぜミトロアを持っているのか。師匠とは何か。ヨゾラの頭の中で疑問が次々と湧いてくる。


「まぁ、いいわ。そんなことより本題に入りましょう」


 ヨゾラにとっては重要なことだが、少女にとってはさほど気にすることでもなかったのか、話題を変えてきた。ミトロアについて詳しく知りたいヨゾラが疑問をぶつける前に、少女が手を差し出してくる。その手の意味が分からず、ヨゾラが首を傾げていると。


「助けたんだから、金払いなさい」


 少女が真顔で、金銭を要求してきた。

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不死の最強生物が蔓延る絶望的な世界で、落ちこぼれは覚醒する〜何の才能も無いと思っていたら、実は最強生物を倒せる伝説の武器を扱えた〜 齋歳うたかた @Utaka-Saitoshi

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