第1話 幼馴染に告白されました

「私の彼女になって、玲奈姉ちゃん」

茜色の夕日のさす教室。切実な声が響いた。

「もう、ただの幼馴染じゃ嫌。私のこと、特別な相手だと思ってほしい」

桜の丘高校の二年A組。生徒たちはもう残っておらず、私は一人の少女に迫られていた。

私の名は…そう、鏑木玲奈(かぶらぎれな)。年は十七歳。そして、目前の少女は檜りえという。私より一つ年下の十六歳。お互いに幼馴染で姉妹のように共に過ごしてきた仲だ。幼稚園も、小学校、中学校も同じ学校に通ってきた。りえのことはひとつ下の妹のようにかわいがっていた。けれど、まさしくそんな扱いに堪えきれないというように壁際に追い詰められていた。

今は高校生になって二年目の夏。無事に定期考査を終えて、二学期の終業式の日だ。折りしも私の誕生日でもある。少しだけ特別な今日という日、使われていない空き教室に呼び出されて幼馴染から告白を受けた。

そして私の胸は早鐘のように急かされている。けれど、この胸の鼓動は突然恋を打ち明けられたからときめいている、せいじゃない。

確かに真剣な面持ちには見入ってしまう。けれどそれだけじゃない。

「あ、あの…」

どう言葉を返せばいいかわからないまま咄嗟に口を開く。

りえは、確かにいい子だ。お隣の家に住む一人っ子。私の実の妹の梨奈と同級生。私を姉のように慕い、私もまたりえを妹のようにかわいがってきた。

ふと、オレンジの光が窓からさしてきた。窓の向こうに眩しい夕景に目を細める。

これほどに眩しい夕日を見るのは初めてじゃない。けれど、何という違いだろう。

「綺麗…」

思わず呟いてしまった。

その言葉にりえがきょとんとする。

「あ、ご、ごめんなさい。夕焼けが綺麗だったから…」

告白を蔑ろにするような言葉だったと気付く。頬が熱くなる。

怒られる…?

目を固く閉ざす。けれど、りえは肩を震わせ、堪えるように俯いていた。

「…ふふっ」

弾けるようにりえは笑い出した。私は驚きに瞬きしてしまう。りえはこちらに背を向けると思い切り窓を開いた。風が入ってくる。

「確かに綺麗」

けれど、りえの視線は夕日でなく、こちらに向いていた。まるでその視線の先にいる私に向けて放つ言葉に聞こえる。

話を合わせてくれた…

怒ったりせずに。

何故かそれだけのことに陶然となる。

「あの…茶化したつもりはないの。ごめん…」

「大丈夫」

窓際からさしてくるオレンジ色の光線。烈しい瞳がまっすぐに私を見つめている。けれど、どう視線を返していいかわからずに戸惑う。嘘いつわりのない眼差しに見つめられて、気恥ずかしくて見返すことができない。お互いに赤面して俯く。

何か言葉を発さなくては!

けれど焦るほどに沈黙に陥ってしまう。

りえが不意に笑った。

「何だか、今日の玲奈姉ちゃん、いつもと違うね」

「えっ…?」

観察の目で見られ焦りを覚える。

「うまく言えないけど…何ていうか玉砕を覚悟してたのに、思っていた反応と違うから…」

覚悟、という重い言葉に顔を上げる。今度はりえが俯いてしまう。口元は笑っている。泣かれた方がましなような笑い方だ。逆光でちゃんと顔が見えない。

その寂しげな表情に気付いた。

玉砕、の意味。それは失恋を意味していた。失恋を予感していながら、彼女は私に告白をした。

そんなにも不確定な状況でも、告白してくれるなんて何て勇気があるんだろう…

これ以上待たせるのが申し訳なくて、急いで言葉を押し出した。

「あ、あの…そんなこと言ったら、りえこそいつもと違うじゃない? こ、こんなこと…」

「…確かにそうかも」

「えっと…りえの気持ち、わかったと思う」

なるべく動揺させないよう、いつもの呼び方で話す。

縋るようにりえがこちらを見た。そんなにまっすぐ見られると怖くなる。その瞳にかすかに希望が宿ってる。慌ててこう続ける。

「でも、今は…! 私、自分の気持ちがわからない。あ、あの…。時間…。時間がほしいの」

自らの気持ちがわからないのも時間がほしいのも嘘ではなかった。恐る恐る視線を返す。

りえは、私を安心させる、それでいて私といて安堵してる、いつもの笑みを浮かべていた。

「いい意味の可能性があるってこと?」

「それは…まだわからない…けど…」

「…そっか。でも、即ふられると思ってたし、保留のが救われるかも」

快い答えをしたわけではないのに、優しく笑う。

「そうだ。渡したいものがあるんだ」

机の上のリュックから、りえは包みを取り出した。

「夜だと落ち着いて渡せないから…」

今夜、鏑木家と檜家合同でお祝いをする予定だ。賑やかな席につく前に渡しておきたいってことだろうか。綺麗な紙袋を差し出された。

「お誕生日おめでとう。きっと似合うと思う」

「あ、りがとう…」

「夜に一人でこっそり見てくれる?」

 りえは恥ずかしそうに俯いている。目の前で贈り物を開かれるのが照れくさいのだろう。

「うん。わかったわ」

 頷いてみせると、りえの頬が緩む。

「帰ろう。玲奈姉ちゃん。いつもみたいに手をつないで」

自然に差し出されたりえの掌を見て、ほっとした。

大丈夫だ。いつも通りにいればいい…

「う、うん…。帰ろ」

優しく握られた手をそのまま握り返す。

先を歩くりえは少しだけ足早だ。告白したばかりで気恥ずかしいのだろうか。

校門を出て、頼まれていた料理の材料を二人で買出しに行った。いつもの幼馴染同士に戻れて、りえの平静な態度にほっとしていた。

言えるはずがない――


『私の彼女になって』


告白されて動揺した理由は、告白そのものに対してだけではない。

突然、今の人生とは全く別の人生の記憶を取り戻したからだ。

告白の真っ最中に転生前の記憶を取り戻したからだ。

…などと言えるはずがない。

そう。動揺したのは教室の隅で彼女に迫られたせいではない。檜りえが迫る相手、それは鏑木玲奈だった。けれど今の私ははっきりと覚醒してしまっていた。

よりによって、幼馴染の少女から恋情を打ち明けられたその場で!

はっきりと別の生の記憶を取り戻していた。別の人生における私の名はファルーシャ・ラ・レーヌ。貴族のレーヌ家の令嬢だ。

貞淑な令嬢として結婚相手に生涯を捧げ家に尽くすこと。それが生まれついて決められた使命だ。貴族であるレーヌの家の娘として、一族の名に恥じないよう何があっても動揺しないよう教育を受けてきた。

教室いっぱいを照らす夕日に晒された時、りえが告白を紡いだ途端だ。婚約発表の宴に向かう道を、馬車に乗っていた記憶が鮮やかに私の裡に蘇っていた。

あの車輪の音、あの夕日、あの不吉な湿った林道。

規模も性質も異なるけれど、婚約発表とお誕生日会という祝賀の宴を控えているという点で、ファルーシャの最後の記憶と今の状況は似ていたかもしれない。あの馬車の窓から見た夕景も、教室の窓に映える夕日のように烈しかった。

けれど馬車からの夕日は終末の兆しにしか感じられなかった。夕暮れは燃えるようだった。馬車につながれた馬たちの機嫌は芳しくなく、御者はその制御に苦心していた。意に染まない婚約発表。車中の私は平静だった。

精神さえ消してしまえば良かった。

あそこにいた私は人形だ。

一方、りえの背に見た夕日はそれそのものの美しさを感じさせてくれた。

綺麗、などと埒も無い言葉が口をついて出たのはそうした理由だ。だからといって、あなたの目の前にいる私、実は異文化の次元からやってきたまったく別の貴族令嬢ファルーシャ・ラ・レーヌです――などと、切実な告白をしてきた相手に伝えられるはずはない。

問題はそれだけではない。

このままでは告白に対してどう返事したらいいものか…突然の記憶の揺り戻しと引き換えるようにして、私は肝心なものの欠落に気が付いていた。



「賢明な私の娘。あなたには感謝しているわ」

「おまえは本当にできた娘だ」

家族水入らずですごす晩餐のひととき。豪勢な晩餐を前に両親は口々にファルーシャ、つまりその世界の私を誉めそやした。

不信心な親戚のふるまいのおかげで、レーヌ家の財産が差し押さえられようとしていた。本家の抱えた借財が原因だ。地位と名誉を鑑みて親類のうちでも最も立場の弱いレーヌ家が返済と責任を負うことになった。その窮地を救うのがファルーシャの婚約だ。資産があるだけの評判の悪い貴族のもとに私は嫁がなければならない。けれど、その婚姻さえ成立するなら、借財は返済すると相手は約束してくれていた。

労いに続く言葉にならぬ言葉、真実の言葉その時の私には聞こえていた。

だからおまえは出て行ってくれるだろう? と…

はっきりと声にされずとも聞こえた。

どんなにか良かっただろう。

はっきりとそう命じてくれたなら!

声にして泥を被ることすら両親は厭い、ただもう既に半分は世間体に引き渡した娘に対して、警戒の眼差しを送るだけだった。私が抵抗しないか、否と言い出したりしないか…

ファルーシャという少女、その世界の私はもちろんそのような愚かな真似はしなかった。婚約発表の宴の前夜だ。晴れやかな表情の家族にあわせて、終始笑顔を浮かべていた。

そのくせ、深夜になっても私はまんじりともせずにいた。

深夜のドアの向こうから足音が迫ってくる。家令のアンナだ。レーヌ家の者の予定に留まらず、蜀台の数からドレスの値段まで取り仕切る家務の監督者。ファルーシャの就寝を確かめるための見回りだ。

部屋の奥では暖炉がオレンジ色に燃えていた。蝋燭の蜀台もまた同じように。

窓の向こうをぼんやり眺めている場合じゃない。ベッドに潜り込んで眠らなくちゃ。

そう、明日のために…

いいえ…明日なんて来なければいいのに!

そう思っていた。

そう、願っていた。

私は窓辺に寄り添い、屋敷の向こうを眺めていた。暖炉の火をベッドにうつしたら。あの蝋燭を倒せば炎と煙に巻かれて死ぬ思いをするかもしれない。事実、死んでしまうかもしれない。

けれど――逃げられるかもしれない。

行く宛はない。それでもこのまま明日を迎えるよりはましだ。

どれくらいの間、その焔を眺めていたことだろう。

足音が近づいてくる。もし自分に勇気があるなら、彼女がこの寝室のドアを開くよりも早くそうしよう。

呼吸が速くなる。もう時間がない。

私に勇気があるのなら…

勇気があるのなら…

間を置かずにドアが外側から開かれた。アンナが室内を見回した時、私は布団に潜り込んでいた。やがてドアが閉ざされる。遠ざかっていく足音を聞きながら声を殺して泣いた。

愚図。私にはもう自由はない! そう自分を内心で罵った。

私はもうすべて手放した!

もし本当に勇気があるなら、とっくに騒ぎを起こしていたはず。けれど、できない。

家名も名誉もどうでもいい。

幾千の衆生に笑われてもいい。

威厳も両親も裏切ってしまえばいい…!

そう思っているはずなのに!

幼い頃から、私には貴族の使命とその遂行が義務づけられていた。貴族の娘に生まれてしまえば一生に一度の大恋愛も運命的な出会いもおとぎばなしの出来事だ。

恋愛は身分の低い貴族の娘の住む国には生まれない事象だった。どこか遥か時空を超えた場所の物語。娘の属する地平のどこかで恋のメロディが生まれることはあるだろう。けれど私たちがそれを聞くことはない。

恋心がどんなものか知ることができるなら、名も知られぬ野の花にでも生まれた方が良かった。どんなに豪奢な服を用意されても心は浮き立たない。準備された御馳走と楽団、社交辞令に満ちた虚飾まみれのその場所で婚約が公表される。

明日の婚約発表はファルーシャにとって死刑宣告に近い。

そして、夜が明けた。

山奥の城に向かう途中、馬車の外を見ようと隠し布を持ち上げたときまでは覚えている…



自分の呻き声で目を覚ました。大きく息を呑む。

ただの天井があった。何の変哲もない一般家庭の高校生の娘が暮らす部屋だ。跳ね起きる。夢、というよりも禍々しい記憶だ。布団の裾を握り締める。鏑木玲奈としてここにいる自分も、ファルーシャとしての自分もどちらも隔たりがない。

「あ…」

 苦しい。

 もうあんな息苦しいことなど経験したくない。けれど、確かにどちらも現実だ…

「……!」

 何の変哲もない部屋を見渡して、安堵からほうっと息を吐いた。昨日まで、ファルーシャの記憶すらなかったらただ当たり前の光景だったはずのこの部屋が何故か嬉しくて、愛おしく感じられてくる。

深呼吸をしてみる。

昨日のことを思い返してみる。

日が暮れる頃、鏑木家の居間に集い、家族とお隣の檜家の面々と美味しいご飯を食べておしゃべりをした。私はすっかり自分を取り戻した気になっていた。

…けれど、思い出してしまった。

レーヌ家の記憶は恐らく前世か過去世だ。今ここにある生活ではない。

まるで途切れのない記憶のように感じられても、あの憂鬱も忌まわしい生活もはるか昔の出来事だ。そう言い聞かせても不安が消えない。

ふと机の上の贈り物が目に映る。


『夜に一人でこっそり見てね』


眠ってしまって、そのままだった。ベッドを降りて包みを手にする。丁寧に包装を開くと細長いケースが現れた。蓋を開く。

「わっ…かわいい…」

小鳥を模した銀色のネックレスだ。

りえは自分と同じ学生の身だ。尊い身分でもなく莫大な財産も有していない。高校生のお小遣いで手に届きそうにない品だ。アルバイトでもしたんだろうか。お小遣いを貯めたのだろうか?

私、鏑木玲奈のために…?

あの放課後の夕暮れは、ファルーシャとして最後に見ていた馬車の夕景と等しい太陽だっただろうか?

そうは思えない。

それくらい輝いて見える。玲奈のために頭を悩ませて選んだのだろうと、伝わってきた。

令嬢のファルーシャならばもっと高価な贈り物が婚約者から届いたこともある。両親や親戚から仕立のいい服を賜ることもあった。けれど、高価な贈答品や仕立のいい服よりも嬉しい。

ファルーシャには心を許す相手などいなかった。学友からは畏怖と形ばかりの尊敬が寄せられていた。りえがあらわな気持ちを見せてくれたあの夕暮れを思い返すと、それだけで心にほのかな灯が点る。

小鳥を手にとって、鏡の前で胸元に当ててみる。

同時に、不吉な言葉を思い出してしまう。


『何だか、今日の玲奈姉ちゃん、いつもと違うね』


鋭い言葉だ。急速に別の人格を取り戻し態度が変わっていたかもしれない。それに気付くくらい、檜りえは鏑木玲奈を普段から見ている。掌の上の小鳥を見つめるように。

それは、今の私にとってかなり重要な問題だった。

今、私にあるのは、玲奈として生きた記憶と、そこにいた感覚だけなのだ。

つまり、玲奈としての人生も記憶も想起できるけれども肝心な感情を思い出せず、そこだけが欠落されていた。夕暮れの教室で告白された時、返事ができなかった最大の原因はこれだ。

りえといていつも楽しかったか嬉しかったか、苛立っていたか、苦手だったか。何ひとつ思い返せない。

嫌いだったか好きだったかすら思いだせずにいる。

そして、りえはそんな私をさしていつもと違うと言い表した。焦る。焦ってしまう。今の私はりえがそんな風に違和感を口にするほどの違うだろうか。

いつも、彼女といてどんな気持ちでいたっけ…!

記憶をなぞっても映画のフィルムを眺めるように、他人の言動をなぞるように、どこか遠い映像として感じられる。

肝心の喜怒哀楽が何も思い出せない。

どうしよう…!

どうしたらいい?

今悩んでいる自分の立場だけは普通の女の子だ。鏑木玲奈として生活する現在の自覚がある以上、きちんと返事しなければ。

けれど、記憶と感覚だけが頼りでそれまでりえに抱いていた感情を思い出せない。このままじゃ、りえに対して失礼だ。

「どうして肝心なところが抜けてるの…」

小鳥をそっと撫でてみる。

ファルーシャだったらわからないことは家令に聞けば良かった。けれど鏑木玲奈である私に生活のこまごまとしたことまでサポートしてくれる相手はいない。

いや、いたとしても、こんな問いかけには答えてくれる相手は限られたオカルトファンか精神科医くらいかもしれない。

きちんと考えるべきだ。

ファルーシャとしての人生では親類縁者や婚約相手に対して恥ずかしくないよう振舞うことしか頭になかった。とにかく人に嫌われないことや家の名を汚さないことを意識して生きてきた。それに比べて、今生はどうだろう。

りえは確かに私に気持ちを伝えようとしてくれた。告白してくれた夕日に映える、あの真剣な瞳。

あの時、私がりえを綺麗だと感じたことは確かだ。烈しい恋情をその胸のうちに宿せるということ。それだけで、りえがどんなに眩しく感じられたか知れない。

それだけで、私を感動させるに充分だと伝えたら、きっと馬鹿にしていると興られそうだからできないけれど。

りえを尊敬しているのは確かだ。

だからこそ、ちゃんと思い出したい。

ちゃんと知りたい。

好きか嫌いか、それだけじゃない。

私が、りえをどう感じているのか…

それを知りたい。

私はそうっと小鳥を化粧箱に仕舞った。贈り物をどこに隠そうか部屋を見回す。机の、鍵つき引出しに視線を留める。

けれど、どうしてだろう。

鍵の場所が思い出せない。

もしかしたら、感情だけじゃなくて記憶も欠落しているのかもしれない。そう考えるとぞっとする。

「うー…落ち込んでばかりじゃだめだわ」

 今の私は混乱して錯乱している。だからおかしなことが起きていても仕方ない。何よりもりえへの返事が一番だ。それに命までとられそうなあの馬車にいた時よりはずっとましな世界にいる。それは確かだ。

細かなことで落ち込むのはよそう。

部屋を見回して、洋服箪笥の奥に仕舞うことにした。

帽子や靴の箱の隙間にそっと忍ばせると、ようやく落ち着いてくる。再び布団に潜り込んだ。確かに今はこちらが現実だ。

布団のうちで状況を整理してみる。失われているのはいくばくかのこの人生の記憶と感情。そうだ、ファルーシャの記憶を取り戻した瞬間、まるで引換えのように現世での記憶に空白ができた。

あの教室にいる前の過程も思い出せない。教室に辿りつくまでに私はどこにいて、何をしていたっけ?

とても重要なことだと思うのに事前の行動が記憶から失われている。

どうやって、あの教室に至っただろう。

実在している今と、別の生の自覚が混在する理由はわからない。時間と空間、自覚との不一致について謎だらけだ。

けれど、私を好きだと感じてくれる人がいる…それだけは本当だ。

そう思うと、この世界にいることが嬉しくなってくる。ここにいていいと思える。

ハードモードの世界には戻りたくない。

玲奈である自分として、このまま生きていきたい。それだけは私の胸に強く強く胸に光っている。

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