ハードモードをやめました -悪役令嬢が現代に生まれ変わったら幼馴染と百合になりました-

玉置こさめ

プロローグ

思い出してみる。公園の砂場の隅にうずくまっていた小さな鳥のことを。

幼かった頃に見つけたスズメのことを。

真っ先に気が付いたのは幼なじみのりえだ。雨上がりの水たまりで遊んでいる私たちに知らせに来た。彼女はお気に入りのハンカチでその子をくるんでいた。

私と、私の妹の梨奈、りえはすぐに大きな滑り台の下の秘密基地に駆け込んだ。それはただの子供がくぐったり隠れたりして遊べるだけの狭い空間だったけれど。

まだうんと小さかった梨奈がはしゃいで触りがった。けれど、りえは触らない方がいいと跳ね除ける。そのせいで喧嘩になってしまった。子供だけではどうにもならない、と私は言った。小鳥への興味で目を爛々とさせている梨奈を連れて、私は大人を呼びに行くことにした。

大丈夫?

待っていられる?

私は何度もりえに聞いた。

大丈夫、守ってるとりえは頷いた。

思い出してみる。小鳥の命はいつ空に舞い上がってもおかしくないくらいに弱っていた。それを、きっとりえもわかっていた。

おとなしい忠犬みたいに頷いたけれど、瞳が微かに潤んでいてたのを覚えている。

私は確かにその時のことを覚えている…

それなのに、あのとき、私が、どう感じていたかを思い出せない。

ただ、思い出から感じ取れるのはただひとつ。

りえ。あなたがとても優しいってこと。

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