第14話 そういうことだったのか!

「よしっと。この順番にしましょう」


受付表を確認し終えた俺は、そこに治療順を書き加えてミーナさんに渡した。


「では、これから名前を順番にお呼びしますので、最初の3方以外は自分の番号を覚えてお帰りください」


ミーナさんが番号と名前を読み上げると、ゾロゾロと村人たちが帰っていく。



「では、最初にミザリさん」


俺は、1番目の患者さんを呼んだ。



最初の患者さんは、ここ数日間、高熱を出している女の子だ。


「ヒール」


俺が回復魔法をかけると、嘘のように熱が引き顔色が良くなった。


「ありがとうございます。ありがとうございます」


お母さんのサラサさんが、何度も頭を下げて帰って行った。


そして次の患者さんが、屋根の雨漏りを直しているときに、すべり落ちて脚を骨折したジムさん。


最後の患者さんが、かまどの火が服に燃え移ってしまい、腕に火傷を負ってしまったネネさんだった。


どの人もそれなりに酷い状態ではあったが、さいわい致命傷になるようなものではなかった。



「ふー、これで終わりか。なんとか治せる程度の患者さんでよかったな」


「そらそうじゃ、あれより酷くなれば、こんな田舎の村では死ぬしかないのじゃからな」


俺が一息ついて呟くと、ハサンさんが悲しそうな顔で言った。


俺はその言葉にハッとして、その顔を凝視した。


「じゃが、マモル殿が来てくれて、これからはそのような者も減るじゃろう」


ハサンさんは、俺の顔を見返してそう言うと、柔和な表情に戻った。




治療を始めて3日目、9人目の患者さんに回復魔法をかけた時だった。


『ピコン』


その音が鳴った。


あれ?


この音はいつものあの音ではないけど、一回聞いたことがあるような気がするぞ。


患者さんが帰り、あと片付けをしたあと、俺は久しぶりに例のものを確認することにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇

名前 マモル

種族 人族

年齢 25

レベル 3

体力 98/103

魔力 270/300

スキル 【温泉】

〈水魔法〉

水を生成し消滅することができる。

レベル3で最大30L

消費MP1(生成・消滅セットでも片方でも消費MP1)


〈火魔法〉

熱を操ることができる。

レベル3で30kgの水を最大36度に熱せられる熱を操れる。

消費MP1


〈土魔法〉

任意の鉱物を生成することができる。

レベル3で3種類最大30kg

消費MP10


〈回復魔法〉

あらゆる症状を癒すことができる。

レベル3で軽度~軽中度の傷病の治癒

消費MP10


〈収納魔法〉

時間停止で物を収納できる。

生物不可。

レベル3で脱衣所程度の容量

消費MP1


◇◇◇◇◇◇◇◇


「なんか、凄いことになっている・・・タブン」


・・・ん~、とりあえず回復魔法は1日10回くらいは大丈夫な気がする。


「ちょっと、村長に聞いてみよう」




「なんじゃとー!」


レベルが上がって、最大で30回まで可能になったと報告すると、ハサンさんが普段は半眼の目を大きく見開いて叫んだ。



「普通はそんなにすぐに、しかもそんな急激にはレベルも魔力も上がらないのじゃぞ」


興奮するハサンさんをハンナさんがなだめて、ようやく落ち着きを取り戻した。


「あ、でも体力は3しか上がってません」


「当たり前じゃ、普通体力はいくらレベルが上がろうが、体を鍛えねばそんなに上がらないものじゃ」


冒険者とか騎士とか普段から体を鍛えて鍛錬している人たちを除けば、大抵の人は、年相応の体力しかないそうだ。


体力チート無いのね。


残念。


「まあかと言って、一日中治療をしているわけにもいかんだろうし、10人までじゃな」


別に他に仕事があるわけでもないし、俺としては構わないのだが、それくらいが妥当なところなのだろう。


「分かりました。では明日は、残りの11人の内とりあえず6人を治療したいと思います。明後日は残りの5人と言うことで」


「じゃあ、わたしが伝えておきますね」


俺の言葉に、ミーナさんが言ってくれた。


「ありがとうございます。みなさんの家を知っているわけでは無いので、助かります」


「村のためですもの、このくらい」


ミーナさんはそう言って、微笑んだ。


横では、なぜかミミも嬉しそうに笑っている。


「じゃあ、俺は宿へ帰ります」


俺は、なんだかくすぐったくなって、村長の家をあとにした。


「バイバ~い」


ミミが手を振って見送ってくれた。



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