第13話 治療院開設
「じゃあ、宿に戻ってみんなに言ってみます」
「待つんじゃ」
値段も決まったし、戻ろうとするとハサンさんに呼び止められた。
「どこで治療をするつもりじゃ?」
「え?宿で・・だめですかね?」
「ダメに決まっとろう!宿の商売に差しさわりが出るじゃろうが」
確かに、宿の部屋や食堂で治療行為とはいえ、商売をしたら駄目だろうし、表の往来でやるわけにもいかないしな。
「そうですね・・すいません」
「それに、おまえさんが説明してみなが納得すると思うかの?」
ごもっとも・・。
「村の集会所を使いなされ」
「いいんですか?」
「あそこを管理しとるのはわしじゃし、ある意味みなのためになることじゃからな」
「ありがとうございます!」
「では、少し待っとれ。支度をするでの」
「はい」
「ねー、ミミも行っていい?」
「え、ミミもか?」
「うん、お手伝いするー」
お手伝い?
いるかなあ・・。
「ねえ、いいでしょ?」
「・・分かった、無理するなよ」
「はーい!」
俺とハサンさん、ミミの3人で集会所に向かう間に、ミーナさんにはベイルの宿へ説明に行ってもらうことになった。
集会所につくと、ハサンさんの指示でそこにあった机と椅子を並べ替えて、受付と待合、診療スペースの様なものを作った。
並べ終えてしばらくすると、ミーナさんの後を村人たちが、ぞろぞろとついてくるのが集会所の窓から見えた。
「え!あれ全部が患者さん?!」
「ありゃ、想像以上じゃな」
「お母さんすごーい」
いや、別にあれはミーナさんがすごいわけじゃないから。
『カヤガヤ、ガヤガヤ』
「すいませんみなさん、その受付においてある紙に、名前と症状を書いてもらえますか?」
全部で20人ほどはいるかな?
「ほら、みんな並んでくださいね。順番に記入してください。文字の書けない人は、私が代筆しますから」
ミーナさんが言うと、みんな素直に並んでいる。
やっぱり、すごいのか?
「さて、みなにあらかじめ言っておくことがあるのじゃ」
受付が済んで、待合にみんなが座った頃合いで、ハサンさんが言った。
「こちらにおるマモルさんは、みなも知っておる通り、回復魔法が使える」
ここで、あらためてどよめきが起きる。
「静かに。じゃが、魔法であるからには魔力にも限度がある。わかるな?」
村人たちがうなずく。
「そこで申し訳ないが、当分の間、回復魔法をかけてもらえるのは、1日3人までとなる」
「なんでぇー、それじゃあここにいる全員は治してもらえないってことかい?!」
「うちの子は、熱でうんうんうなっているんだよ!」
すると、村人たちから不満の声が沸き上がった。
「まてまて、治さないとは言っておらん。症状のひどい者から、順番に3人づつ治すといっておるのじゃ。無理をさせて、マモルさんがぶっ倒れでもしたら、それこそ治してもらえないのじゃぞ?」
「たしかにそうかも知れないけどよー」
「まあ・・・しょうがないのかねえ」
村人たちは、不承不承納得したようだ。
「それと、魔法にも限度というものがある。すっかり治らないからと言って、騒ぐでないぞ」
ハサンさんが、しっかりとくぎを刺してくれた。
たしかに、俺が中レベルや高レベルの魔法が使えるわけないものな。
「それから、治療は一回3000セムじゃ」
「えー金取るのー?!」
「あたりまえじゃ、領都の治療師なら1回30000セムじゃぞ。これでも安い方じゃ」
「そんなにするのか!じゃあしょうがないかあ・・」
ふーー、なんとか治まったか。
これじゃあ確かに、村長のハサンさんがいなかったら、暴動が起きてたかもな。
「それじゃあ、受付に書いてもらった症状で順番を決めますので、ちょっと待っててください!」
俺はそう言って、受付表を確認していった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。