第51話 ラーデル敗北

 金色ドラゴンラーデル vs 親ドラゴンゲマリード & 鉄ゴーレムの戦闘が始まった。

 2対1、金色ドラゴンラーデルが不利な体制だ。

 巨大なドラゴン同士+鉄ゴーレムの戦いの場に、一個大隊の騎士団はまるで戦力になれない。


 ……拙いな、執り合えず上空からの雷ブレスを浴びせて多少でもダメージを与えなくちゃ。


 キロロロロ ピロロロロ


 大きな羽を羽ばたかせ金色ドラゴンラーデルは上昇し始めた。



「させるか、金色ドラゴンラーデル


 ギャオオーーーーンン

     ギャオオーーーーンン


 親ドラゴンゲマリードは炎のブレスで対空砲火を乱打する。


 ゴーーーーーー

   ボッボッボッボッボッボッ


「ちっ、上空から攻撃する気か、ゴーレム、何か兵器はあるか?」


 ベラルダは兵装展開の指示を出す。

 鉄ゴーレムの体の蓋が開き、ミサイルが迫出して来た。


「あれは焙烙火矢ほうろくひやなのか? 構わぬ、全弾発射!」


 ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ ドシュ


 ……うそ! この世界にミサイルだと? 急いで撃墜しなくちゃ。


 キロロロロ ピロロロロ


   バリバリバリバリ

        バリバリバリバリ


 金色ドラゴンラーデルは雷ブレスの乱射を始めた。

 上空から何条もの雷が地上に向けて走る様子に、騎士団を始め、城から様子を見守っている国王達にもこの世の終わりを予感させられた。

 赤い光の炎のブレスが天を焦がし、雷ブレスの炸裂が強烈な光をあちこちで撒き散らす。

 人族と魔族の戦争でも、これ程の大規模破壊を見る事が無い。


 バシシシシ バリバリバリバリ

  チュドーン チュドーン チュドーン

チュドーン チュドーン チュドーン チュドーン チュドーン


 八割方ミサイルの迎撃に成功するが、いくつかは被弾した。


 ……イテ!イテ! ちっくしょう、あのゴーレムを先に潰さなきゃ面倒かイテ!。


 キロロロロ ピロロロロ


   バリバリバリバリ

    ウギャーーーーーー!!!


 雷ブレスは金属である鉄ゴーレムに被弾するが、雷はボディー表面を走り地面に抜ける。

 足元にいる何人かの兵士達も感電し、消し飛び倒れ臥す。

 避雷針のようになってしまった様子。


 ……雷ブレスじゃ駄目か、よし、次はドリル弾の乱射だ。


 ドドドドドドドドドドドドドド


   ガガガガガガ

      ガガガガガガ

         ガガガガガガ

            バリバリバリバキバキバキ


 上空から降り注ぐドリル弾で親ドラゴンゲマリードも鉄ゴーレムも酷い裂傷や刺し傷、薄い所は削られ大きな穴が開き、何枚も竜鱗を剥がされ、削り飛ばされ、ボロボロにされた。

 本来ならどんな魔法も跳ね返す竜鱗に覆われている筈なのに、ドリル弾は体内に捻じ込んで激痛と共に入り込んでくる。


「おのれ、金色ドラゴンラーデルめが何と言う攻撃をするか」


 親ドラゴンゲマリードは上空に飛翔し、降り注ぐドリル弾を避すしかない。

 上空から旋回しながら、炎のブレスで地上掃射に掛かる。

 地上では悲鳴を上げながら、逃げ惑う騎士団雑魚達の姿がある。


 鉄ゴーレムにも無数のドリル弾が命中し、穴を空け、体内に潜り込み、暴れ周り、内部機構を破壊、次第に動きを失っていく。

 本来なら巨大投石器カタパルトでの岩攻撃を受けても、耐えうる外装甲なのに。

 幾つものドリル弾は厚い鉄装甲であっても、防御力は意味を成さなかった。


「鉄ゴーレムに穴を開けるあの攻撃は何だ! くそっ、ゴーレムがもうボロボロで戦闘が出来ないじゃないか」


 バキバキバキバキバキ ゴゴゴーーーーンンンン


「うわあぁぁ」


 地上で指示を飛ばしていたベラルダの近くに、千切れたゴーレムの腕が落下してくる。

 脚も何箇所も抉られ、もはや歩行は困難だ、そればかりか、いつ体が崩れ落ちるか予断が付かない。


 上空では親ドラゴンゲマリード金色ドラゴンラーデルの空中戦の応酬が激しさを増す。

 互いにブレスを吐き合い、炎のブレスをローリングして避す金色ドラゴンラーデル

 対して避しても避しようの無い雷ブレスが何度も被弾し、感電して焼け焦げる親ドラゴンゲマリード

 

「くそったれ、何なんだ、あのブレスは」


 旗色の悪い親ドラゴンゲマリードは毒ずく。


 世界の魔法は地・水・火・風の四大元素が元として考えられている。

 その元素の中に電気は無い、誰もが雷攻撃なんて知らないのだから。

 ゼウスの雷とかインドラの矢など、神々の武器くらいにしか思われていなかったようだ。


 キロロロロ ピロロロロ


   バリバリバリバリ

      バリバリバリバリ

         バリバリバリバリ


 ギャオオオオオオーーーーーーーーンンン


 雷の集中攻撃で悶え苦しむ親ドラゴンゲマリード

 どれほど避しても、何条もの雷は親ドラゴンゲマリードを追ってきて被弾し、焼き焦がす。

 避す事が出来ないのだ。


「おのれ、おのれ、おのれーーー、金色ドラゴンラーデル


「拙い、このままでは再び我等が不利になる、魔王様、お助け下さいーーー」


 生きた心地のしないベラルダは、手を組み魔王に祈るしか無くなった。




 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 ベラルダの必死の祈りが届いたかのように、南の丘が移動を始めた。

 実際には丘ではなく、魔王の秘密浮遊要塞ジェネシスである。


 ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ

    ガシーーン ガシーーン ガシーーン ガシーーン


 移動する丘から四つの飛翔物が発射された。

 金色に輝く四つの飛翔体は合体しながら、巨大な一つの金色のゴーレム汎用人型決戦兵器になる。


「あれは、ゴーレム1号機!」


 外部で合体しなければならなかったのは、その巨体故だったのかもしれない。

 30mほどあろうオリハルコン製の巨大ゴーレム。

 大きさも重量も親ドラゴンゲマリードを凌ぐ質量がある。

 大きさゆえ、持ち合わせるパワーも想像を絶するだろう。


「な、何だありゃ、キングジョーかいな?」


 人型兵器の戦闘力を封じるには、先ず地面に倒すのは有効だ。


 渾身のハイジャンプキックで蹴り付けるが、金色の巨大ゴーレム1号機は一瞬よろけただけだった。

 姿勢制御装置attitude control deviceが凄いのか、質量が凄いのか、倒すに至らない。


「なんて奴だ、ビクともしない、まるで満杯のドラム缶に飛び蹴り喰らわしてる様だ」


 金色ドラゴンラーデルが体当たりをしようが、キックをしようがさっぱり効果が無い。

 そもそもパンチやキックをいくら繰り出そうが、痛がったり怯んだりするゴーレムはいない。

 巨大なオリハルコンゴーレムはよろけるどころか、金色ドラゴンラーデルは大質量に押し負ける。

 持ち上げる事すら出来ない金色ドラゴンラーデル


 グワジ グワジ グワジ


 異様な音を立てながら金色の巨大ゴーレム1号機は迫って来る。


 焦る金色ドラゴンラーデルは必死な思いで攻撃を繰り出す。

 しかし金色の巨大ゴーレム1号機には、雷ブレスもドリル弾も効かない。

 雷は金色の巨大ゴーレム1号機の体表を流れ、避雷針のように大地に吸収されてしまう。

 これは鉄ゴーレムと同じだ。

 オリハルコン製の金色の巨大ゴーレム1号機の厚い装甲は、ドリル弾より硬く、穴を空ける事すら許さなかった。まるで岩に木ネジを捻じ込もうとしている様に。


「へっ、さすがゴーレム1号機だ、金色ドラゴンラーデルの攻撃なんか何とも無いぜ」


 金色の巨大ゴーレム1号機の勇姿に目を輝かせるベラルダ。


「ヤバイ奴が来た、ヤバイ奴が来た、ヤバイ奴が来た、逃げなきゃ」


「逃がすものか」


 ドシュドシュドシュ

    ガガガガガガガガッ


 浮遊要塞から打ち出される鎖アンカーに巻き付かれる金色ドラゴンラーデル

 ドドーーーンと地に落とされ、金色の巨大ゴーレム1号機は大きな重量に任せ押さえ込み、腕が胴体に掛かる。

 金色ドラゴンラーデルは必死の思いで逃れようと暴れるが、とうとう金色巨大ゴーレム1号機の巨大な質量に完全に押さえ込まれてしまった。

 それでも逃げ出そうと懸命にもがくが、金色の巨大ゴーレム1号機の力は金色ドラゴンラーデルの比ではない。

 超巨大な万力に挟まれたように、完全に身動きが取れなくなってしまった。

 首だけ動かせても、最早どうにも出来ない状態だ。


 キロロロロ ピロロロロ


「「「「ああーーー! ラーデルが、ラーデルが敗けた」」」」


 手に汗を握り王城から観戦をしていたマクシミリアン国王達が悲痛な声で叫ぶ。


「フハハハハ、やっとこの馬鹿ラーデルを捕らえたぞ」


 金色巨大ゴーレムから魔王バルツィラの勝ち誇った声が響く。


「この馬鹿ラーデルの裁定は余、バルツィラに任せてもらう」


 ジャラララ

  ドスン ドスン ドスン

    ガキン! ジャラララ


 金色ドラゴンラーデルを鎖で縛り上げ、脇に抱え込む金色巨大ゴーレム1号機は、ドズンドズンと重い足音を立て秘密浮遊要塞ジェネシスに揚々と引揚げて行った。

 ゲマリードとベラルダは、金色巨大ゴーレム1号機の後を追って行く。


「ラーデル…………」


 マクシミリアン国王達は、人類の切り札を失った気分で絶望した。

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