第23話 正式騎士団訓練
次の日から俺は正式騎士団と練習をする事になった。
「ラーデル君、今日も薬を飲んでいるか?」
「はい、凄い薬ですね、活力が漲って来ると言うか」
「そうだろう」
真っ先に昨日と同じように俺は騎士達に紹介をされた。
正式騎士達は、よりハードな訓練をするようで皆鎧を装着している。
俺にはまだ
「こちらはより実戦的に、動物や魔物を倒して訓練をしているのだ」
「今から腕が鳴りますよ」
ポキポキと関節も鳴らす。
「うむ、メンタルの弱さが払拭された様だな」
「はい、お陰様で」
「そうか、先ずは走り込みをして体を温めておけ」
走りこみは無理が露呈した。
俺には持久力が無いから、延々と続く走り込みや筋力トレーニングは無理だった。
「ラーデル君はそんなで良く戦場を生き抜いてきたものだな」
騎士団長のルベルタスに呆れられてしまった。
元々の筋肉の質が違うから、仕方ないと言えば仕方ないのだ。
白色筋は瞬発力に優れていても、持久力の筋肉じゃないのだから。
正式騎士団が見守る中、ラーデルの腕前を検分する事になった。
こちらの指導教官は騎士団長では無いようで、騎士団長ルベルタスは横にいる。
「まず野獣を倒して其の方の実力を見せてもらおうと思う。如何であろう実力無き者は怪我では済まぬ試験だが、受けられるか?」
どんな野獣かと見てみれば、熊を用意されている。
ハンターや騎士でも数人掛かりで倒さなければならない獲物だ。
大分ハードルを上げられたようだ。
「大丈夫です。 検分お願いします」
「おい、本当に良いのか?」
「一人で相手をするには荷が重過ぎるだろ」
「あの者、出来るのか?」
騎士団からざわめきが起こる。
「ラーデル君は冒険者時代、倒していたと聞いておるぞ」
「それは本当でありますか?」
指導教官は心配そうに騎士団長ルベルタスに話している。
「だからこそ、儂は彼を従者に引き立てたのだ」
そして熊の檻は開け放たれた。
まあ、俺には熊一頭なんざ敵じゃない。
檻から出て来た熊は様子見を始める。
向う俺は熊の挙動を凝視していた。
「熊、カモーン!」
次の瞬間、熊は全速力で向って来る。
俺は熊の鼻面に渾身のパンチを一閃する。
「せいっ!」
ギャン!
流石に大型獣だけにパンチ一発で倒れる事は無い。
熊が怯んだ隙に、頭を腕で抱えて締め上げる。
「逃がさねーぜ、覚悟しろ! ヒッヒッヒッ」
必死に振り解こうと暴れる熊の前足を蹴って骨を砕く。
「止めだ! ひゃっはははぁーー」
怖気て引き下がろうとする熊の横腹に一撃を加え、肋骨を砕いた。
折れた骨に内臓をやられた熊は悶絶する。
おおーーーーーーーー
驚愕の声が騎士団から揚る、
「剣を使わぬとは」
「我等でも四人掛りで倒さねばならぬ標的だぞ」
「素手で熊を倒せるなんて、どれほどの力があるのだ」
「凄いな、彼は」
「そうであろう、故に戦働きの場でも目覚しかったぞ」
「それほどの逸材でありましたか」
「次は複数の魔獣で対集団戦を試してみたらどうであろうな」
「複数の魔獣での対集団戦でありますか」
背筋が寒くなる指導教官。
上位冒険者というのは、皆これほどの実力者ばかりだと言うのだろうか。
腹を決め、次の課題を宣言する。
「次の課題は複数の魔獣での対集団戦である。其の方、受けてみるか?」
「任せろやーーー!」
「お、おい、本当かよ」
「信じられぬ」
「俺も認め難いぞ」
騎士達は戦闘の余波を食らわないように防壁の向こうに退避する。
やがて大小様々な魔獣の檻を持ち出してきた。
飛行するタイプはいないようだ。
「では、始めい!」
魔獣の檻が開け放たれ、練習場に多数の魔獣が溢れ出す。
俺は炎魔法を魔獣たちの上空で爆発させ、閃光と爆音で目と耳、気勢を削ぐ。
すかさず剣で切れそうな魔獣を始末していく。
横から飛び掛って来る魔獣には、土系魔法
周りの生き残っている魔獣を次々と剣で止めを刺しながら、次の魔獣に炎魔法火炎弾を放った。
目標に当った火炎弾は飛び散り、周りの魔獣に被害を及ぼした。
そして弱り始めた魔獣を剣で止めを刺して回った。
そんなコンビネーションを繰り返す内に多数の魔獣は全滅した。
……薬の飲んでいるから、随分動けるな。
「ラーデル、お主、魔法まで使えるのか……」
魔法が使える剣士など殆どいない。
恐らく騎士団の中にもいないだろうし、初めて見た者も居ただろう。
「とんでもない逸材だな」
「あれだけの戦闘を繰り広げて無傷だぞ」
「末恐ろしい奴」
「しかも無詠唱だったぞ」
「うむ、儂の目に狂いは無かったようだ、いや期待以上だ」
「ヒャッハーはははは、まだまだぁ、もっと魔獣を持ってこーーーーーい」
「いかん、薬でおかしくなり始めているぞ」
「ああ、あの薬は一時的に恐怖心を無くし無敵感を感じるが、体と精神がやられるからな」
「あいつ、我等では相手が出来ないぞ」
「もはや訓練は不要なのか、ラーデル君には武勲を積ませてやらねばな」
「実力は既に騎士を上回っている様でありますな」
あれほどの実力の持ち主であっても、平民というのが惜しくてしょうがない。
実力は十分なのだから、彼に足りないのは身分だけだ。
何とか騎士団の一員に組み込めないものだろうか。
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