第3話 わくわく

 放課後になり、僕は自分の机で寝たフリをしていた。先生が帰った後も、教室で仲良くお喋りしている女子達が話をまとめずに帰路に着くまでも、ずっと寝たフリを続けている。

 しかし、天使は一向に現れない。最後にクラスの人が帰ってから、もう30分も経った。僕は諦めて帰ろう、とランドセルに教科書を入れ始めた。

「帰んの?」

 後ろからついさっき聞いた声が聞こえる。天使!そう思って振り返ったが、そこには誰もいなかった。

「ここよ。後ろよ、うしろ」

 僕はもう一度振り返り、自分の机の方を見た。天使はランドセルの上をふわふわと浮いている。

「久しぶり」

 僕はぶっきらぼうに言い、視線を逸らした。

「怒ってんの?」

 天使の言葉に思わず「いや…」と声を漏らしてた。実際怒ってはないが、普段人と話さないためよそよそしくなってしまっているのだ。

「まあいいわ。太郎はこれから何すんの?」

「何も予定はないけど…」

 僕は、しどろもどろになりながら必死に答える。天使は教室に中を自由に浮遊してながら「ふーん」と興味なさそうに相槌を打った。

「じゃあ私がこの学校を案内してあげる。こう見えてもこの学校結構長いのよ」

 僕は天使の言葉に驚きを隠せなかった。僕はもう四年生になる。この学校を知り尽くしたと言っても過言ではない。そんな僕に学校を案内するとはよくいえたものだ。

「僕もこの学校結構長いよ」

「そう、この学校のことなら何でも知ってるようね。じゃあこうしましょ、私が太郎の知らないところ教えられたら私の勝ち。逆に私が教える場所全部太郎が知っていたら太郎の勝ち」

「いいね」

 これはなかなか面白い勝負だ。それに僕が負けることなんて絶対にない。

「勝ったら何かあるの?」

 天使は「そうね…」と呟きながら、教室をぐるぐる飛び回る。やがてハッと僕の方に近づき「勝った方が相手の言うことを聞くなんてどう?」などとありきたりなことを提案してきた。

 もちろん僕は「いいよ」と勝負に乗る。勝ったら「何故ここにいるのかを正直に言うという」お願いを聞いてもらおう。

「ふふふ何か思いついたみたいね。まあいいわ、早く行きましょ」

 天使は自信満々に教室を出て行った。僕は天使がどこに連れて行ってくれるのかと勝負に勝てるという興奮でわくわくしながら教室を出た。







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ねぇ、池田くん こしょうず @tunetake

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