第8話 写真
妖精世界の子供達は週に2回青空教室に通っています。それ以外の日は何をしているのかというと家事の手伝いや日向ぼっこをしているのです。
なぜ日向ぼっこかというと妖精の子供達は大人達に比べてマナの生成が遅く、かつ備蓄量が少ないのですが消費量が多いのです。
だから日向ぼっこをするのが子供達の日課でもあります。日向ぼっこ以外にも十分な睡眠なども効率の良いマナ生成であります。
これらと反対に非効率ですがハイキングもマナ生成として活用されています。
そして、今日は朝から私はテラスで日向ぼっこをしています。
ロッキングチェアに体を横たわらせ寛いでいます。ぽかぽか陽気が気持ちいいです。
そこへ母がテラスにやってきました。
「ミウ、起きてる?」
「うん。起きてるよ。何?」
「庭の雑草とりを手伝って」
「分かった」
私はロッキングチェアからおります。
「日向ぼっこはもういいの? 別にすぐじゃなくてもいいのよ」
「? 昼食から十分休んだけど?」
「……そう」
と言って母は私の頭を撫でます。
カエデの件が影響したのでしょうか。ここ最近、マナ生成をしっかり済ませるようにと口うるさく言われます。
私はコートを着て庭に出ます。
「それじゃあ、お母さんは周囲の枯れ木集めをするから、ミウは庭の雑草を抜いて」
「分かった」
私は母から軍手と麻袋を受け取ります。
庭はそう広くはないとはいえ、一人で雑草を抜くのは骨が折れそうです。
◇ ◇ ◇
「ミーウー」
庭の雑草を取りをしていると、セイラとネネカが訪れてきました。
「どうしたの二人とも?」
「この前の写真持ってきたの。今、お手伝い中なの?」
「うん。でも、もう終わりだから」
私は立ち上がり、草むしりを終了しようとしました。
本当はまだちらほらと残っているけど、これくらいやっておけば大丈夫でしょう。母もセイラ達が来たから止めたと言えば怒りもしないでしょう。
「結構残ってる」
ネネカが庭を見てぽつりと言います。
「そ、そうかな?」
「うん。残ってる、残ってる」
セイラも駄目だしをします。
「手伝うよ」
「軍手ある?」
セイラとネネカが手伝うと申し入れます。
「いいの?」
「人が仕事をしているなかで、ただ待ってるのも、ね」
「ありがとう。ちょっと待ってて軍手持ってくるから」
私はお言葉に甘えて一度家に戻ります。そして二人分の軍手を持って戻り、二人に軍手を渡します。
◇ ◇ ◇
母が枯れ木集めから戻ってきました。手にはパンパンに膨れた麻袋が。
「あら! セイラちゃんにネネカちゃんじゃない。あなた達も手伝ってくれてるの?」
『こんにちは、おばさん』
「はい。こんにちは。二人ともありがとうね」
◇ ◇ ◇
草むしりが終わり、今は私の部屋でこの前撮った写真を見ています。
「これが写真。意外に小さいんだね」
セイラが持ってきた写真は手の平より少し大きいくらいです。私が前に見たのは絵画と同じくらいのサイズでした。
「これが普通サイズ。ミウが見たのは大きく現像したもの」
とネネカが教えてくれます。
「へえ」
私は自分が写っている写真を手にする。大木をバックにネネカと一緒に写っている写真。
「入るわよ」
と母が返事も聞かずに私の部屋に入ってきた。
その母はお盆を持っています。お盆にはジュースとアップルパイが。
母はテーブルにジュースとアップルパイを置き、
「手伝ってくれたお礼よ。たくさん食べてね……って、あら、それ写真じゃないの」
母がテーブルの写真を1枚取って聞きます。
「お母さん、写真のこと知ってるの?」
「当たり前でしょ。昔、町であんたと写真展に行ったの覚えてないの?」
そうでした。私が以前、大きな写真を見に行ったとき母と父も一緒でした。あれは写真展だったのか。
「ここに写っているのはあなた達ね。カメラ持ってるの?」
母が二人に聞きました。
「父が持ってて」
とセイラが言いました。
「そっか。セイラちゃんのお父さんなら持ってるわね」
「カメラも知ってるの?」
「使ったことはないけど、何回か実物を見たことはあるわ」
きっと大人になるとそういう機会があるのでしょう。
母はテーブルの写真を摘まんではあれこれと質問をします。
「これはどこの?」
「トーリの丘近くに沢があるでしょ。その沢の奥にある滝だよ」
「ああ! あれね! ……この写真は3人ってことは誰かにシャッターを押してもらったの?」
「うん。カエデに」
「ああ! もしかしてあの日の?」
「そうだよ」
その日はカエデと初めて会った日です。
「……あら?」
ふと母の手が止まります。そして握りこぶしを口に当て、フフッと笑いました。
何かなと思い、母が見ている写真を横から覗き見しました。
! そ、それは!
「あんたすごい挙動不審ね。写真怖かったの?」
母が見ているのは最初の1枚でした。
最初はカメラを知らなかったので警戒していました。そのせいか、右足は後ろへ下がりぎみで肩は上り、顔は強ばっています。
私は母の手から写真をひったくり、
「もう! 違うの! いきなりだったから!」
私は顔を赤らめて弁明します。
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