第2話 秋葉原

秋葉原の街に散らばった刑事達。

中には、理解できていない若い刑事もいる。

『新藤先輩・・・

 これって、何をやれば良い

 んですか。

 だいたい、あの人何者なん

 ですか。』

新藤幸太郎に着いている新人刑事。

『首筋には、頸動脈って太い

 血管があることくらいは知

 ってるよな。

 人間、頸動脈を切られると

 、血が吹き上がるほどの大

 量出血することも習ったな。

 あの被害者さんは、まず頸

 動脈を一発で切られてから

 捜査を撹乱するために、他

 の場所をめったやたらに刺

 されてる特徴が見えてた。

 しかも、殺害現場があそこ

 やない特徴も残っていた。

 俺らが、焦って見落として

 たことを指摘してくれはっ

 ただけや。

 あの人は、検挙率日本一

 を3年連続達成した。

 日本一の敏腕刑事やった。

 俺は、あの人に教えてもら

 って、今がある。』

新人刑事君が、どうやら理解したようで、胸を撫で下ろす新藤幸太郎。

その2人に近づく勘太郎。

『このビルに目をつけるとは

 流石、幸太郎や。』

新人刑事君、またまたちんぷんかんぷんになっている。

『家電量販店では、防犯カメ

 ラが多いでしょうし、雑居

 ビルで、人の出入りが多い

 ビルに目をつけたんです。』

新人刑事君、必死にメモを取り始めた。

『もう1つ、玄関に入居企業

 リストとビル内の配置図が

 あったやろう。

 1階は、人が多い。

 2階と3階は、単独企業の

 貸し切りで、来客は目立つ。

 とすれば、4階の多目的ト

 イレから見るのが効果

 的や。』

3人で、4階多目的トイレに向かうと、野次馬でごった返していた。

『しもた。

 遅かったか。

 すみません・・・

 警察です。

 通して下さい。』

勘太郎が、咄嗟に警察手帳を出して、人だかりをかき分けて進んだ。

警備員が、必死の形相で、多目的トイレの入口に仁王立ちしていた。

『警備員さん・・・

 ありがとうございます。

 すぐ巡査呼びますので、も

 う少しだけお力を拝借させ

 て下さい。』

勘太郎に挨拶された警備員達は、嬉しそうに微笑んだ。

そうこうしていると、階段から大人数の足音が聞こえて、森川警部が制服警官隊と鑑識警官隊を引き連れて現れた。

『新藤・小室・・・

 お手柄。

 よう発見したなぁ。』

勘太郎は、新藤が若い刑事と発見したと森川に伝えていた。

『勘太郎先輩・・・

 なんで手柄を俺達に。』

小室という若い刑事も、わけがわからない。

警察官である以上、手柄を立てたいはず。

しかし、勘太郎はいとも簡単に手柄を自分達に譲ってくれた。

話しを聞いた、森川まで不思議に思っている。

制服警官隊と鑑識警官隊の配置と作業の指示を終えた森川が近づいていた。

『真鍋警視殿。

 手柄を譲っていただくのは。』

『今は、あまり手柄を上げた

 くないんですよ。

 実は、先月の階級昇進試験

 に合格してしまいまして。

 今の階級が、こういうことに。』

そう言って、ブレザーの襟を捲って見せた。

そこに燦然と輝く階級章。

『け・け・警視正になられた

 んですか。』

警視総監・警視監・警視長に次ぐ階級である。

『警視正の役職って、事務職

 ばかりでしょう。

 そんな年齢じゃありません

 ので。』

『あはは・・・

 いかにも、真鍋警視正らし

 いお考えですね。

 現場がお好き・・・。

 あはは、なるほど。』

森川も笑うしかなかった。

新藤幸太郎と小室刑事は、固まってしまっていた。

『そうか・・・

 勘太郎先輩は、キャリア組

 ですもんね。

 どんどん雲の上に・・・。』

少し寂しそうな幸太郎。

『アホか・・・

 お前と俺は、勘太郎と幸太郎

 のW太郎の相方って約束し

 たやないか・・・。』

小室にしてみれば、とんでもない話しになってきた。

多目的トイレの中から、声がかかった。

『警部・・・

 中は、血の海になってます。

 血液鑑定始めました。

 遺留品ですが、免許証の写

 真から、被害者の物と思わ

 れます。』

そう言いながら、差し出した。

森川は、受け取らずに、そのまま指紋とか鑑定に入るように指示して。

免許証の情報を訊ねた。

『本村志織・・・

 京都市中京区在住。』

そこまで報告を訊いて、勘太郎が電話をかけた。

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