京都魔界伝説殺人事件・平将門

近衛源二郎

第1話 神田明神

東京千代田区、住所的には、外神田2丁目。

最寄りの駅はお茶の水又は秋葉原という若者の街。

静けさとは、ほど遠いこの街に、神田明神は鎮座している。

そんな外界隈の喧騒とは、一線を画した境内の一角。

全身に刺し傷をおった若い女性の遺体が転がった。

けたたましいサイレンの音がして、何台もの警察車両が集まってきた。

同時に、近くの万世橋警察署から数十人の警察官が走ってきた。

警視庁から捜査1課の森川警部はじめ、何人もの刑事が臨場して、境内は、ごった返してしまった。

警察官達が、あわてて規制線をはろうとしたが、時すでに遅く、野次馬も大量に集まってしまった。

その中の最前列にいた若い男の前で、捜査1課課長の森川警部が立っている。

鑑識の報告が来て。

『警部・・・

 殺しですね。

 致命傷の特定に入ります。

 被害者の身元を特定できる物

 は、ありません。』

その報告を、森川の後ろで聞いていた若い男が、ため息をついて。

『まったく・・・

 森川さん・・・

 致命傷は、首筋右側の大き

 な傷でしょう。

 プロか、プロに近い奴の犯

 行ですね。

 あんなに正確に頸動脈を切

 れるなんて。

 凄い腕ですよ。

 殺害現場は、近所のビルの

 トイレでも漁った方が良い

 と思いますよ。』

鑑識の男は、嫌そうな顔。

振り返った森川は、驚いた顔で。

『真鍋監理官・・・

 なせこちらに・・・。』

『自宅の洗濯機が壊れまして

 ねぇ。

 買い物に。』

森川が、捜査1課の刑事に集合をかけた。

警部補の鶴薗と新藤幸太郎刑事が、直立不動の姿勢で最敬礼をしたので、鑑識の男もようやく、ただ者ではないことに気がついて、鶴薗の後ろで最敬礼をした。

『勘太郎先輩・・・

 お久し振りです。』

新藤幸太郎が、嬉しそうに挨拶したので、数人が、姿勢を正した。

『中には、こちらの方を知ら

 ない者もいるだろう。

 警察庁刑事企画室広域捜査

 監理官の真鍋警視だ。』

いかに、警視庁捜査1課の精鋭達といえども、そう簡単には会うことすら出来ない階級である。

『真鍋警視のご助言をお願い

 しようと思います。』

刑事達の様子を見て、鑑識と制服警察官も集まってきた。

勘太郎は、焦った。

『おいおい・・・

 現場の保持が・・・

 じゃ、手短に・・・。

 被害者の首筋右側に大きな

 傷が見えますね。

 鶴薗警部補・・・

 あそこに何があるのか、ご

 存知ですよね。』

『ハイ・・・

 あそこは・・・

 あッ・・・』

『お気づきですね。

 皆さんも・・・

 後は、私が言うまでもない

 でしょう。』

捜査員達は、辺りに駆け出した。

『警視殿、貴重なご指導あり

 がとうございました。』

森川警部の挨拶に。

『いやいや・・・

 皆さん、焦り過ぎだっただ

 けですよ。

『私は、冷静に戻ってもら

 うきっかけを話しただけ

 です。』

森川は、見事な誘導だと舌を巻いた。

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