第22話 始まりの旅
早朝、俺とユイとスレイヤは城を出る。
澄んだ朝の空気は気持ちよかった。
途中までは馬車で行く。これが1日。
近場の町から歩いていくという予定だ。これが2日。
今日は馬車でゆっくりとしていればいいなんてスレイヤ入っていたが俺たちは馬車酔いのため精神力がどんどん削られる。
俺たちがヒールを連発しているとスレイヤは不思議そうな顔をしている。
景色なんて見る余裕もなくつらい時間が過ぎていく。
限界に達すると御者に馬を止めてもらう。
俺とユイは休憩する。
スレイヤは怪訝そうな顔をする。
彼女からすると一刻も早く助けに向かいたいのだろう。
だが、俺たちのことも考えてくれ。
3時間こんなのに乗っていたら誰だって一回は止める。
つらそうな顔をしている俺とユイを見ると、何も言えないようだ。
再び馬車に乗り込む。
もう、やっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
日が暮れる前に町に着いた。
真っ青な顔を俺とユイはすぐさま宿屋に入り寝た。
無理やりにでも眠りに入った。
ああああー最悪ぅぅぅぅぅぅ
早朝、俺たちはスレイヤに起こされた。
「大丈夫ですか?」
スレイヤは昨日の馬車酔いのことを気にしているようだった。
「大丈夫。ただの馬車酔いだから」
スレイヤは安堵した。
「勇者様は何か大きな病気でもあるのかと心配しました」
あ、そういう見方もあるのか。
「だいじょうぶだよ」
ユイは安心させる。
「さあ、行こう」
「ああ」
「そうですね」
森の中。俺たちは先を急ぐ。
もっと森の中だと息が上がったりするかと思ったが全然そんなことはなかった。すいすいと足が進む。運がいいのか魔物には出くわさない。
「はぁはぁはぁ」
スレイヤは水をかぶったかのように汗をかき、息が上がっていた。
「だいじょうぶ!?スレイヤ?」
俺とユイはスレイヤに駆け寄る。
「だい、はぁはぁ、じょうぶ、はぁはぁはぁ、です」
いや、大丈夫じゃねえだろ!!
いったん休憩にする。
スレイヤが落ち着いてきたころに話しかける。
「どうしたんだ?体調でも悪いのか?」
俺は尋ねてみた。スレイヤの場合我慢している可能性があると思った。
「いえ、そんなことはありません!」
スレイヤは言い切った
「嘘だよ!!」
ユイは問い詰める。
「じゃあなんであんなに息が上がっていたの?」
「それは・・・・・・」
スレイヤは目をそらす。言いにくいことでもあるのだろう。
やはり病気なのか!?
「勇者様の歩く速度が速すぎるのです」
「「ええっ!!」」
俺とユイは驚いた顔を見せる。
歩く速度ってそんなに気にしたことないぞ。スレイヤのほうが鍛えているから・・・
あっ、異世界転移特典だ。
それしかない。
ガンゼフの時は魔物に警戒しつつ進んでいたからだ。
今回はスレイヤもいるし、佐紀を急がなければならないので歩くことだけに専念していた。
それでか。
「だけど、私が足手まといになってはいけないのです!!なので、私には合わせないでください!!」
スレイヤは自分の無力さに嘆く。
「置いていくなんてできないよ」
ユイはぼそっとつぶやく。
「だけど、私が足手まといになったら!!」
「おいていくことはしない」
スレイヤの言葉を切って、俺が割り込む。
「第一、俺とユイじゃ作戦なんて立てられない。それに経験が全くない。状況判断はスレイヤに一任するのでおいて置いていくのは無理だ」
俺は理屈で返す。
「だけど・・・・・・」
スレイヤはそれでも反対しようとする。
自分と同じ状況の人を一刻も早く助けたくて焦っているのだろう。
「だけどもない。焦るな」
俺はスレイヤの肩を掴みしっかりと目を見る。
「わかりました」
スレイヤは納得してくれたようだ。
俺も偉そうな口を言えるような奴ではないけど。
まあ、おちつかせるためならいいか。
かっくいい、俺。
自己陶酔する。
「さあ、行こうか」
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