第19話 覚悟
俺は、何もできなかった。
当たり前だろう。
一般人には無理なのだ。
でも、ユイはやった。
俺がおかしいのか?
まあ、どっちにしろ手を汚すことになる。
誰かの味方をすることは誰かの味方をしないこと。
アニメの中で黒いロングコートを着たオッサンが言っていた。
俺も覚悟を決めるべきだろう。
翌日も俺とユイとスレイヤで森に入る。
「ケイどうしたの?」
ユイが声をかけてきた。
「え、何が?」
「いや、すごい顔してたから」
俺はそんな顔をしていたのか。
「いや、俺も覚悟を決めなきゃなって思っただけ」
「そう。まあ、やってみればどおってことないよ。みんな生き物を食べて生きているんだ。今まで自分の手を使わなかったのがおかしいんだよ」
「確かにな」
これは自然の摂理なのだ。
俺たちが今まで優遇されて生きてきたのかを実感する。
やるしかない。
スレイヤは立ち止まった。
来るのか。
三匹のゴブリンが飛び出してきた。
昨日と同じ状況。
だが、ユイの行動は早かった。
スレイヤとともに切りかかる。
俺は覚悟を決め、剣を引き抜く。
重い。
異世界転移特典の影響で筋力が異常に上がっているので重くなんてないはずだ。
だが、剣先は下を向く。
スレイヤが二匹、ユイが一匹を相手している。
目を閉じて深呼吸する。
よし!
俺は走りだす。
スレイヤが注意を引いているゴブリンの背後をとる。
剣を振りかぶってたたき切る。
生暖かいちが顔にかかる。
ゴブリンは肩から斜めにバッサリと切れている。
生臭さとピンク色の内臓に吐き気がする
だが、俺はぐっとこらえる。
慣れなければならない。
勇者として生きるとしても、それをやめて逃げるにしても。
スレイヤとユイが俺のそばに来る。
俺が切った後、早々に倒したらしい。
俺が覚悟するのを待っていたのだろう。
「俺、魔物大丈夫になった」
俺は強がりを言う。
本当は全然慣れていない。
次やれと言われてもできるかどうかわからない。
「よかったね」
ユイは微笑んでいた。
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