第16話 続休暇

 適当に町をぶらぶらと歩いていく。現代とは違いすぎて全然わからない。文字が少ない。日本では至る所に文字が描いてある。特に東京。電車の中、バスの中、どこにだって広告が張ってあって文字があった。だが、この世界では文字が少ない。

 

「文字って少ないな。看板があったとしても絵だし。なんで?」


 スレイヤに聞いてみた。


「読める人が少ないからです」


「あ、義務教育とかないもんね」


 俺たちはは納得してしていたが、スレイヤの頭上にはにははてなマークが飛んでいる。


「私たちの世界ではね、義務教育っていうのがあって、六才から九年間、ただで文字とかを教えてくれるの」


 ユイが説明してくれた。


「そんなことが実現可能なんですか!!そんなことをすれば人手不足になるじゃないですか」


 スレイヤは驚きのあまり声を荒立てる。だが我に返って顔を真っ赤にして、誤ってきた。


「そこは機械とかで・・・・・・」


「機械?」


「あ、それもわからないのか」


 ユイはうっかりしていたという顔をする。


「機械っていうのはまあ、一人で動く道具って言ったらいいのかな」


「?」


 スレイヤはピンときていないようだ。


「まあ、とにかく人では減っても補うものはあるんだよ」


 ユイは強引に納得させようとする。


「わかりました」


 スレイヤは無理やりでも納得したようだ。

 俺はこの会話を聞いて、今日するべきことが見えた。


「そうだ、スレイヤにこの街を紹介してもらおう」


 俺は名案を思い付く。名案ってほどでもないけど。


「それいいね。バスガイドさんみたいにね」


 ユイも乗り気だ。


「かしこまりました」


 スレイヤも引き受けてくれるようだ。

 そうと決まれば出発だー




「店って、何があるの?」


「主なものは、宿屋、酒場、鍛冶屋、兜屋、武具屋・・・・・・」


 様々な屋を言いあげていく。いやいや、古今東西をやっているわけじゃないんだから。


「ちょっと待って、小売店のほうをお願い」


「小売店?」


 え?これもわからないの。


「商品をまとめて売っているところ」


「そういうことですか。定期市のことですね」


 定期市?

 




 あー思い出した、なんか社会の授業でやったような気がする。日本史だけど。


「あーうん」


 もういいや。多分、あったとしてもろくなものじゃないと思う。


「それは、明後日行われるので、今日はやってません」


「わかった」


 とりあえず、返事をする。

 なんていうか、わからない。

 今までのシステムとは全く違うゲームをやっているような気分にさせてくれる。たとえるなら、ロ〇サガを初めてやったときの感じだ。

 熟練度?フリーシナリオ?戦闘回数?何それって感じ。

 



 町をぶらぶらしていると、教会らしき立派な建物が見えた。


「あれって何?」


 ユイが尋ねる。


「あれは教会です」


 あってたんだ。そこは一緒なんだ。


「そういえばこの国の宗教って何?」


 俺は尋ねる。

 宗教。

 日本人になじみのないものだ。

 なんせ、結婚式は教会でして、葬式は寺でする。

 海外の人間から見ると頭おかしいんじゃねえのかって話だ。

 それなのに、答える時は無宗教。

 わけがわからない。

 だが、それを疑問に思わない。


「?」




 あれ、この世界に宗教って概念がないのか?


「人というのは全員シーラ教に属しているののではないのですか?」


 そう来たか。これは、スレイヤが超が付くほどの信者なのか。それとも、言葉どうりの意味なのか。


「ほかに宗教ってないの?」


「あとは、魔物や一部の人間があがめているというザイヤ教くらいのものです」


「あるじゃん」


 スレイヤは、苦い顔をする。


「でも、まっとうな人間ならシーラ教を崇めるものです。ザイヤ教は一部の破壊主義者どもです」


「その二つしかないの」


「はい、ほかのものは聞いたこともありません」


 ずいぶん矮小な世界だと思った。いろいろな思想があってもいいと思うのに。


「シーラ教って何を崇めているの?」


「天界の神々です」


「何かしなきゃいけないこととかないの?俺たち無しゅ・・・・・・」


 無宗教とか言って大丈夫なのか。殺されたりしないかな。

 とりあえず、ごまかしておこう。


「違う世界から来たから」


「しないといけないことはありますが、人前ですることはありません。週に一回教会に行くとかですかね。勇者様は気にせず行動しても大丈夫だと思います。ただ、シーラ教ではないと消去法でガイヤ教とみなされることもあるので、宗教の話をしなければ問題ないと思います」


 とにかく問題はなさそうだ。


「ようは、ふれるなってことだね」


 ユイが簡潔にまとめる。

 触れない神に祟りなし。

 まさに、こういうことだ。



 ぶらぶらしていると、日が落ちてきた。

 今日は、それなりに楽しかった。

 それに、ユイは普通だった。

 あの時は、どうなるかと思った。

 変わってしまったのか。

 そうではなかった。 

 何も変わらないユイがそこにいた。

 問題なしだ。


 




 

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