第6話 さてドアの件が解決したところで……

「私に相談もなく、勇者になるなんてひどいよ!!」


 部屋に戻るなり、由美子は抗議してきた。


「それはこっちのセリフだ。那狼ケイなんて名前にしやがって!!それの仕返しだ」


「だって、面白いじゃん。異世界でなろうって名前。どんな主人公よりも強そうだじゃん」


 話にならない。強い、強くないじゃなくてかっこいい、かっこ悪いの問題だろ。

 はぁ、これがやばいキラキラネームをつけられた人の気持ちか


「そんなことは置いておいて、今後のこと話し合おう」


「私に相談なく決めたのに?」


「それは名前の件でおあいこ」


「わかった」


 どうやら納得してくれたようだ。


「とりあえず勇者ということで、魔法、剣術を教えてもらおう。とりあえず、俺は魔法を使えるみたいだし」


 ふたりともこげたドアのほうを見る。あれは事故だ。できれば忘れてほしいな。

 意外に簡単に出たな。元の世界では、か〇はめ波ぁぁぁぁぁとか全力でやっても何も出なかったのに。

 

「多分、異世界転移した特典みたいなのがついている。じゃないと、一般人の俺がポンポン魔法なんて出せないはずだ」


「でも、この世界の人間みんな使えるかもしれないよ?」


「多分それは無い。俺たちが毒を盛られた時、わざわざローブを着た人を呼びに行っていたし」


「でも、回復魔法だけが難しいかもしれないよ?」


 う、確かにそうだ。回復だけが特殊って場合もある。。


「じゃあ、俺が今から、回復魔法を唱える」


「え、マジで。自分に?」


「それだと、俺ができたように見せたいから嘘言ってるかもしれないだろ。かっこつけたいから見たいに」


「じゃあ、私がモルモット?」


「人聞きの悪いことを言うな」


 由美子は何とか、逃れようと反論してくる。


「私今なにもケガしてな・・・・・・」


「ヒール」


 最後まで話を聞かずに魔法を打つ。前に打った魔法の感覚からするに想像とほとんど一緒の効果が得られるということが分かった。


「あ、魔術師に賭けられた時と同じ感覚だ」


「よっし、成功だな」


「ちょっと、ちゃんと了承を得てから打ってよね。訴えるよ!!」


「今度からはそうする」


「ムーー」


 どうやら由美子の機嫌を損ねてしまったようだ。

 まあ、そんなことはお構いなしに話を続けるんだけど。


「あと一つ、こうして二人の時も、偽名を使はないか?ごっちゃになって人前で言いそう」


「あ、そうしよ、そういしよ。那狼くん」


 由美子の機嫌は一気に戻ったようだ。

 人の名前を馬鹿にしやがって。


「ケイのほうで呼べ。俺はユイって呼ぶから」


「えー、那狼のほうがいいよ」


「うっせい。ケイって呼べ」


 ユイは肩をすくめる。

 その、えせ外国人みたいなリアクションうざい。


「ユイからはなんかない」


「あ、一つ」


「うん?何?」


 まさか、ユイのほうから意見してくることがあるとは。俺が見落としたところがあるのか?

 それとも、やっぱ那狼で、とかくだらないことだったら、いっぱつしばこうかな。

 まあ、僕はジェントルメンだからそんなことしないけどねっ。


「海外の水道って飲んじゃだめって言うじゃん。この異世界ってかなり文明的に劣ってるから、料理に対しても、不衛生なのかもしれない。だって、現地人ですら水が飲めないんだよ」


 あ、確かにそうだ。衛生管理なんて全く頭になさそうだ。というか、冷蔵庫すらないと思われる。

 海外の水道水でも消毒はしてある。それなのに、日本人は腹を壊す。じゃあ、こんなところの料理なんて食ったら確実に・・・・・・。


「だから体調悪くなったのって、食中毒なんじゃないかなって思うんだけど」


 魔物が毒を仕込まれた可能性と、食中毒の可能性。

 どちらが現実的かと言われると、後者だ。

 考えるまでもない。


「多分、それが正解だ思う」


「だよね。毒って、さすがにないかなって思って」


 じゃあ、勇者だからって狙われてないじゃん。

 焦って返事する必要もなかったじゃん。

 ちょっとカッコよく決意した自分に酔いしれていた、恥ずかしいぃぃぃぃ。

 


 あれ、よく考えてみるとこれって、毒混ざってた方が問題じゃなかったかもしれない。


「「今後の食事どうするの?」」

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