第5話 キラキラネーム反対派

 昼食?俺らの中では夕食から二時間後、急に気分が悪くなってきた。

 どうやら、由美子も同じようだ。

 急いで、トイレに向かう。

 トイレの場所は昼食が終わった後にメイドに聞いておいた。

 まさかこんな形で役に立つとは思はなかったけど。

 個室トイレに入ると、半円の箱型をした便器?が出てきた。

 そんなことに目もくれず、リバースする。


 げぇぇぇぇぇぇぇ

 

 ううう、マジで気持ち悪い。

 吐くものはなくなって余計に気持ち悪くなる。

 胃液でのどが渇く。

 ちょうど通りがかったメイドが様子を見に来る。

 

「二人同時に。まさか、毒を盛られていた!?」


 メイドはすぐさま走り去っていった。

 王様とローブを着た人が今度来る。

 ローブを着た人は俺の背中に手を当てて、呪文を唱えた。


「ヒール」


 体の内側から暖かい何かを感じる。

 それが全身を覆う。

 さっきまでの気持ち悪さがすっと取れていく。

 ただ、吐いたことによる体力消耗は回復しなかった。

 由美子も魔法をかけてもらったようだ。


「すまない、まさか、毒を盛られていたとは!」


「毒!!まさか魔の手がもう迫ってきてるの!?」


 由美子は驚いて、声を出す。相当、動揺しているのだろう。王様にタメ口で言ってんだから。

 しかし、実に合理的だ。召喚されたすぐだと、この世界のことを理解していない。

 かと言って、すぐさま勇者を厳重に保護したとしても嫌がられる可能性は高いだろう。

 勇者も敵に回してしまうという最悪の事態は避けなければならない。

 俺たちの敵と呼ばれる存在は相当頭が切れるようだ。


「しかし、なぜ直接殺しに来なかったのだ?この程度の毒では、魔法で治せるというのに。これも勇者の体質ということなのだろうか」


「魔物ならきました。火の魔法で追い返そうとして、逃げられました」


「えっ!!」


 由美子は驚きで、開いた口が塞がってなかった。

 この機に、あのドアの件は魔物を追っ払うためということにしておこう。

 そうすれば怒られなくて済む。


 それに、毒を仕込んだ魔物はもういない。

 相手にとって、毒がしこまれたとバレるのは一番まずい事態だ。

 何も知らない勇者にも警戒されるし、場内の警備だって厳重になる。

 かと言って、毒で動きを鈍らしとどめをさすつもりなら、遅すぎる。

 つまり、もう魔物はいないだろう。


「ちっ、どうやら。もう戦いは初めっているようだな。勇者……。すまない名前を聞いていなかったな。いろいろあったので名前を聞きそびれていた」


 名前か…… 

 本名を言ったほうがいいのか?

 それとも適当にかっこいい名前を言ったほうがいいのか!

 本名を使う、呪いの魔術とかあったら嫌だしな。

 デス○ート的な。

 

 俺は少し考え込む。

 由美子が先に口に開いた。

 あ、このこと由美子に言わなきゃならないのに!

 


「私は小鳥遊ユイ」


 あいつも同じこと考えていたんだ。

 偽名を言ったようだ。

 さて、俺はどうしようかな。


 俺は考え始めようとしたとき、さっきほど名前を答えたはずの由美子はもう一度口を開く。


「彼の名前は那狼ケイ」


 え、





 おいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!



 人の名前勝手に決めんなよ。馬鹿じゃねえの!!

 今から新しい人生を歩き出そうとしている人間に対してこれはないだろう。

 RPGで勝手に名前を決められる十倍くらいひどい。

 これなら、ああああの方がマシなレベルだ。

 那狼ケイって、完全になろう系じゃねえか。

 なんだ、あのイキり倒す主人公になれっていうのか。

 w○kiで調べたような戦法を使ってイキり倒せってことか!!

 スマホで世界最強にでもなればいいのか!!

 残念、さっきスマホ使ったけど、圏外で何もできない!!

 w○kiも開きません!

 ただの箱だよ。

 はっはっは……。はぁ……

 リンゴマークが泣いてるぜ。 

 由美子は、僕またやっちゃいましたかみたいな顔している。

 てめぇシ○・ウォルフォードか!!


 王様は、真剣な眼差しでを向けてくる。

 それは多くの人々の命を背負ったものの意思が混ざっている。

 確固たるものがそこにある。

 俺たちは王の目から目線をそらすことができなかった。

 

 


「そうか、勇者小鳥遊ユイ、那狼ケイよ。どうか魔物を倒してはくれないだろうか」


 あーあ。もうなんか、偽名ですっていえない。

 ドア焦がしたことを魔物のせいとかしたバチなのか。

 まあ、もう那狼でいっか。

 字面的にはかっこいいし。


 由美子は迷った顔をこちらに向けてくる。

 

 どうやら、何もしなくても。勇者は狙われるみたいだし。どっちにしろ。この世界で生きていけるだけの力をつけないといけない。

 勇者になると言って、いろいろな力をつけよう。

 それに勇者なんて憧れる。

 最悪、全部ほっぽり出して逃げたっていいじゃない。

 それに、交通事故でなくなっていたかもしれない命だ。

 独断で決めるのは、さっき勝手に名前つけられた仕返し。


「わかりました。魔を打ち滅ぼし、この世界に平和おもたらしましょう」


 前日までただの高校生だったやつが、物凄い大口を叩いた。

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