第4話
「でも俺、彼女居るけど」
ですよねー。
「有紗曰く、別に付き合いたいとかそういうのじゃないらしいよ。ただ医学部の子の知り合いを、私以外にも増やしたいだけなんじゃないかな? ほら、紗友希さんの妹さんだし」
「そっか、それならいいけど。……なんか、逆に俺が自意識過剰だったみたい、なんか恥ずかしいな。失礼しました」
謝罪する田口くんに向かって、私はぶんぶんと頭を横に振った。
「じゃあ、あとで日程調整のLIN○送るから」
「分かった、お疲れ様」
これで私、義務を果たしたよね? ほっと一安心だ。
その日の夜、日程調整をしようとしてスマホのカレンダーを開く。この日はダメ。この日はバイトがあるから、昼から15時までなら大丈夫……
そして結局、3人の予定が合ったのは来週水曜か木曜の午後。木曜の場合、私はバイトの時間に気を付けないといけないけれど、水曜日なら。
『水曜なら私も夜まで居られるし、その日12時集合にしようか』
そのように私が提案すると、2人は快くOKしてくれた、ハズだった。
「亜彩希ちゃん。明日、どうしてもいけないから、明後日にするように田口くんに提案しておいてくれる?」
「なんかあるの?」
「他の友だちとの予定をダブルブッキングしちゃって」
「……あのさ、私だけとの用事なら全然調整きくけど、田口くんにも迷惑かけるでしょ。有紗の方が呼び出しておいて、それはないよ」
「まあまあ、いいじゃない。なんだっけ、明後日だと亜彩希ちゃんが都合が悪いんだっけ」
しかも、約束の前日って何? 私自身、基本的にかなり大雑把なタイプだから、細かいことで他人を責めることはあまりない。しかし今回は別。他人を2人も巻き込んでおいて、しかも謝罪もなく、リスケまで他人任せとは、これいかに。
「明後日、私は15時までなら大丈夫」
「私は14時20分まで講義がある。だから、それ以降でお願い!」
「……それで移動時間も含めたら、20分くらいしか話せなくない?」
おかしなことになっている。
「まあ……仕方ないよね」
仕方ないって台詞、やらかした張本人が吐いちゃいけない台詞だよ……
「じゃあ、田口くんにもそのように送っておくけど、ちゃんと謝っておくのよ」
わかってるって、と有紗はへらへらと笑って見せた。
当日。
スカイブルーのストライプの入ったシャツワンピースを着て、姿見の前を一回転。胸元には、高校時代の彼氏がくれた、フラワーモチーフのシンプルなネックレス。物に罪はないし、扱いやすいデザインなので、彼と別れた後も愛用している。――正確にいうと、元彼にも罪はない。ただ、自分が上京するまでの期間限定だと分かっている恋に、私が耐えられなかったというだけの話だ。
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