第21話 初代巫女長と金銀天竜との約束の地

「……古の盟約により、そなたの命……狩る。」

『やっと口を開いたなぁ!!』


 2人の闘いが始まる。

 邪王は体を蛇のように動かして攻めるがそれを巫女長が舞うように邪王が発生させる風に乗ってヒラヒラと避け、少しずつ慎重に邪王の体に鎌を入れ、また避ける。


『巫女長貴様、何がやりたい!!』


 巫女長は一度邪王の頭に乗り、勢い良く蹴って空へ駆ける。

 邪王はそれを追い駆ける。


「フェセナ!!」

「止せ、神同士の闘いに俺達は敵わな「リュウ、ドラン、結界だ!!」


 巫女長は邪王に右足を捕らえられ、花畑へ叩き付けられるがそのまま花畑の底へ……山の中へ落ちる。当然、グレン達も。


「「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!」」」




「ぃ……。」

『ほぉ~……。ノーマルの癖に生きていたか、お前は運が良い。』

「ケイリア!!」


 グレン達が落ちたそこは少し浅い地底湖で壁には沢山の血文字の呪文が刻まれていた。

 一方、巫女長は落ちた衝撃で気を失い、目を閉じてしまっていた。それを邪王が左手で握って捕まえ、右手の爪で巫女長の体に少しずつ小さな傷を付けて遊んでいた。


『さぁ起きろ、フェセナ。意識を捨てて勝とうなんて百年早い。お前はここで俺を殺すつもりだったんだろうが……どうやら死ぬのはお前だけだ。せめて、最後の別れの挨拶でもしろ。もう1度お前の苦痛と恐怖に歪む顔と悲鳴を聴かせろ……!!』

「「「辞めろおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!」」」

「「「嫌あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」」」


 フェセナは全てを取り戻して悲鳴を上げる。


『おお、起きた、起きたぞ!』

「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!」

『さぁ、苦しめ……!!』


 邪王は両手でフェセナを握り締め始める。

 フェセナは叫び、声が小さくなっていき、口から血が出始める。


「“フェセナ”を放せ!!」

『邪魔をするか、貴様から片付けてやる。』


 邪王はフェセナを放してグレンを捕まえて湖の深い所へ連れていき、水の中に入れる。

 グレンは藻搔き苦しむ。


『火属性は水に触れると力を失い、衰弱する。さぁ、死に絶えろ。』

「「放せ、“その者”を放せ。」」

『(ゾクッ)』


 邪王はグレンを湖から引き抜き、壁へ投げ捨てる。


「ガ……ハ……。」

「グレン!!」

「大、丈……夫……。肩、外れ……ただけ……」

「しっかりしろ、おい!!」

「気、失っちまうぞ!!」

「そんな『何故、お前が死んでいない!?』


 アオは邪王を見てからフェセナを見る。怒りと驚きの混ざった目で何かを見ていた。その視線の先には藍色の鱗に黄金の右目と白銀の左目を持つ巨大な金銀天竜、シルゴードが居た。


「シル、ゴード……。」

『……そうか、君が私の唯一愛した初代巫女長の写し身か。私が封印されている間、君の代まで彼を止めてくれてありがとう。沢山辛い思いをさせてすまなかった。私の所為で君と君の愛する者達との仲を切ってしまってね。でも、もう大丈夫。巫女長はきっと君で最後さ。さぁ、ゆっくり休んでくれ。君が目覚める頃にはこの悪い夢は覚めているだろう。』


 シルゴードは愛しそうにフェセナに優しく頬を擦り付ける。

 フェセナは静かに涙を流し、シルゴードに負の感情である怒り、憎しみ、恐怖など沢山の物を吸い取られ、少しずつ力が抜けていく。


『さぁゆっくりお休み、これは私なりの君への感謝であり謝罪さ。君は宿命から解放され、これからも君を愛してくれる人達と共に普通の生活を送れるように一度君の体を分解して創り出す。巫女長としての力も感情も全部私が吸い取って君を本当に自由にする。私と同じ目を持つ君を“一族の父親”として。』

「お父、さん……」


 フェセナはとうとう眠っているかのような顔で気を失い、シルゴードがそっと地面に寝かす。


『君は物好きな子だね、髪と目はそのままにしたいだなんて彼女にソックリだ。凄く優しい……。さて、邪王。消えてくれ。』

『うわあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!!』

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