第20話 理性と感情を殺した巫女長と巫女長(光)を呑み込む邪王
……ユポチース・ロウロウディア……
『巫女長様。本当に、記憶を封印されて良かったのですか……?』
「……。」
『巫女長様……。』
『辞めましょう、今の巫女長様は“人ではありません”。記憶も、言葉も、意識も、何もかも捨ててしまわれ、今や世界を守ると言うプログラムだけを残した“世界の防衛プログラム”でしかありません。私達の言葉など、届くはずがない。』
『……。』
『私達は巫女長様の一部となって邪王を討つのです。黙って従いなさい。これは“神の御心”です。』
『来たよ、朱雀達も身を委ねましょう。』
「……。」
巫女長となったフェセナは目を開ける。意識の持たない人形となった巫女長は1人、花畑の中に座っていた。槍を持ち、1人。
風が巫女長と花を優しく撫でる。
巫女長の目は陰り、もう人の目ではない死人の目。巫女長はただただ丑三つ時が始まり、邪王の声を待つ。
しばらくすると花畑の向こうからフェセナがよく知っている人物が現れる。
「よお、“フェセナ”。少しの間、“私の娘となった気分はどうだった”?」
「……。」
「……フン、そうか。俺とは話したくないか。そんな俺とお前の最後に客を連れて来やった。安心しろ、流れ弾が当たる事はあっても俺がわざと攻撃する事はない。」
邪王こと、土御門は大きな黒い袋を花畑の端に降ろす。袋の中では何かが暴れていて、邪王が定位置に就くと鍵が外れて袋が消える。中に居たのは擦り傷だらけのグレン達だった。
「ガハッ、カハッ!!」
「な、何しやが……け、ケイリア!?しかも花畑!?」
「ここに来たかったのだろう?俺も用があったからついでに連れてきてやった(ククッ)ま、ここに“フェセナ”は居ないみたいだがな。なぁ、“巫女長”?」
「フェセナが、居ない……?」
巫女長はゆっくりと立ち上がれば腰から9つの尾が現れ、狐の耳が生える。とても寂しそうな藍色の。
「サラマンダーにノーム。ウンディーネ。シルフ。白虎。玄武。青龍。朱雀。……後1つは一体何だ……?」
巫女長の槍はとても大きく虹色の光を纏った大鎌へと変化し、構える。
邪王は禍々しい気を放つ黒龍となる。手が異形で指と爪が同化し、とても硬く細長い。
『今まで何百と言う巫女長が俺に逆らい、その全てが俺の一部となった。後1人……。後1人巫女長を喰えば千人。千人喰った暁にはこの世界を無に還し、俺が新しい世界を創る!!さぁ、我が身の一部となれ……!!』
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