第18話 終焉への一歩

「なっ……。何、だよ……それ……。」

「フェセナが……出ていった……?」

「ごめん……。私、言えなかった……。“一緒に頑張ろう”って、“一緒に背負う”って……。」

「……俺、皆に謝らないと……いけない。」

「「「「「えっ……?」」」」」

「まさか“こうなる事を知っていた”なんて言うんじゃねぇだろうな?」

「……(コクッ)」

「どういうこった!!」


 大人しくソファに座っていたドゴンはドランの胸倉を掴んで立ち上がる。


「お、おい。」

「何でもっと早くに言わなかった!!言ってたらあいつはここに居れたかもしれないんだぞ!!?何で「フェセナに頼まれたんだ!!フェセナは……包み隠さずに俺に過去を打ち明けてくれたんだ!!“私が皆の前から消えるまで何も言わないで”って!!“もし言ったら皆が殺されるから”って!!」

「……は……?」

「どういう意味だ。何で言ったら俺達が殺される。」

「……フェセナの敵に顔を覚えられてしまったからだと……。“私に関わった者は1人残らず消されるから事が片付くまで一緒に居られない”って……。」

「……“俺達を守る為に……消えた”……?」


 ドゴンは力と怒りが消え失せ、手を離す。


「私達は“フェセナの足枷になっていた”……?」

「まだ、俺は憶えてる。フェセナが……泣いて頼んだんだ。“元々巫女長は長生き出来ない。皆、“16で死ぬ”。それが巫女長の宿命。“変わる事のない真理”。だから私の事は忘れて。もう会う事はない。私は皆が好き。だから皆に頼みたい。次期部族長として……“私の友達”として……私が死んだ後の世界を見守って”と。俺は……言い返せなかった。フェセナが……笑顔で涙を流しながら頼むんだ、断れないよ……!」


 ドランは悔しそうな顔で涙を流す。


「もう、会えない……。」

「そんな……。早過ぎるよ……。」

「……だが、俺達はフェセナのシナリオに従う事しか出来ない。……クソ、最初からこうするつもりだったんだな……。卑怯者め……俺達を置いていく気か……。」

「……僕、達は……勝手に思い込んでたんだな……。フェセナが幸せ、だと……。……最悪だ。」

「……ドラン、他には何て言われた。」


 グレンは怒りの籠った目でドランに真っ直ぐで、でも静かに炎の宿った目で聞く。

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