第17話 小さな拳に込められた大きな決意と覚悟 その2

「えっ!?」

『何と言うお姿……。』


 エレメントと白くて大きな首の長い虎、白虎。サファイアの鱗を持ち、不機嫌そうな顔の龍、青龍。とても大きく蛇に絡まれた亀、玄武。フェセナを見て泣いている大きな赤い鳥、朱雀が現れる。


『久々に来てみればこれは如何なる事だ……。』

『お痛わしい……。我等の知らぬ間に何があったのです!?』

『フェセナ様―――!!朱雀は……朱雀は……大変悲しゅうございます……!!』

「わっ。」


 朱雀はフェセナに抱き付き、泣く。

 フェセナは朱雀の首を撫でる。


「皆、久し振り。」

『これは一体何事です。何故そんなお痛わしいお姿なのです。』

「お、怒らないで……。」

『大王よ、次の命は何でしょう。』

「ちょ、ちょっと待って。朱雀、貴女にお願いがあるの。」

『何でも言って下さい!』

「“私の傷を完治させて”。」

『仰せのままに!』


 朱雀はフェセナを翼で包み込む。


「フェセナ!!」

『ご安心を。フェセナ様は少しの間お眠りになるだけです。』

『ちょっと待っててね♪』




「ん……。」

『おはようございます、フェセナ様♪大変麗しゅうございます♪』

「フェセナ、大丈夫?」

「大丈夫だよ。」

『……フェセナ様、朱雀は……フェセナ様の記憶を見ました。』

「!」

『大変……お辛い経験をなされたのですね……。助ける事が出来ず……お傍で支え、守る事が出来ず……朱雀は……とても悲しゅうございます……。申し訳、ございません……。』

『朱雀殿から話は聞いております。』

「なら“話が早い”わ。“私を鍛えなさい”。」

「「「「!!?」」」」」

「ふぇ、フェセナ!?」

「私は“巫女長として彼らに鉄槌を下し、この世界を改革させる”。反論は認めません。手加減も情も認めません。体術、剣術、槍術、魔術、全ての術を私に教えなさい。これは“神の代理人である巫女長からの勅命”です。私はもう“大切な者を失いたくない”。」

『『『『『仰せのままに!』』』』』

「ふぇ、フェセナ……。」

「ごめんね、アオ。これが私の答え。一族の無念を晴らし、一族の夢を叶える。……だからね、アオ。」


 フェセナは驚きで動けないアオにそっと抱き付き、耳元で”最後の声“を聴かせる。


「ありがとう、さようなら、お元気で。」

「嫌だよ、フェ―――」


 光のゲートへ歩いて行くフェセナにアオは手を伸ばしながら追い駆けるが8人の神と共に光のゲートに吸い込まれ、そして、アオにはフェセナが消える直前に呟いた言葉を、唇の動きで読み取った。


 『大好きだったよ。』と。

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