第3話 一泊移住 ~1日目~

「フェセナ、フェセナ。」

「ア、オ……?」

「起きて。早くしないと置いていかれるよ。」

「何処に……?」

「“一泊移住”よ。」




 バスって言うか中、寮と……いや、教室と全く一緒……。


「おはよう……ってフェセナ、またコート着てるの?君の美貌なら外しても大丈夫さ。」

『土御門が……髪と顔、隠せって……。』

「唯一の生き残りだからな。命を狙われるかもしれない。」

「こいつが!?」

「これなら良いだろう。」


 ヒョウはバスのカーテンを全て閉めて窓を隠す。

 フェセナはフードだけを外し、目をそっと開ける。


「本物……。」

「可愛い~♪」

「成程、そういう事。それじゃあ私とコクの出番ね♪」

「……えっ?」


 シェンとコクはカラーコンタクト。ハサミ。クシなど化粧道具を取り出す。


「そんな可愛い顔、隠したら罰が当たるわ。」

「私達がメイクしてあげる♪」

「け、結構です……。」

「大丈夫、2人は美容師の資格持ってるからね♪」

「アオが言うなら……。」

「じゃあ“美容室”へ直行♪」

「び、美容室!?」


 フェセナは2人に連れられて美容室に入られ、専用の椅子に座らされ、長い髪を背もたれに掛ける。


「エプロン掛けるね~♪」

「髪は何処まで切って良い?」

「2cm……。」

「じゃあまずは毛先2㎝まで揃えるわね。」


 フェセナの髪に3年振りのハサミが入る。



「肩の力抜いて。長さバラバラになるわよ。」

「フェセナ~♪手、出して~♪」


 フェセナが手を出すとシェンが爪にマニュキアを塗り始める。


「フェセナ、爪の色が薄いからね~♪こっちの方が可愛いよ~♪」

「次、頭洗うわね。」


 早っ!?


「寝てても良いよ。」

「な、何するの……?」

「髪の毛の調節とストレートパーマ当てて、“髪染める”わね~♪」

「えっ!!?」

「ほら目、閉じて。痛い目に遭うわよ。」


 フェセナは目を閉じる。少し疲れていたのか、直ぐに眠ってしまった。




「フェセナ、よく寝るわね……。」

「傷がまだ癒えてないから疲れ易いんじゃない?精神的疲労も多いのかも。」

「後コンタクトだけなんだけど……ちょっと休ませてあげよっか。」



『何処だ……。何処へ行ったああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!』



 フェセナは目を覚ます。少し傾けてある椅子に座ったままで周りには誰も居ない、少し薄暗い部屋。椅子から降り、鏡を見ると別人が居た。黒髪の少し髪を縛り、少し降ろした自分が居た。

 爪は透明のマニュキアで艶があった。


「ほ、本当に……す、凄い……。」

「ケイリア。」


 グレンが電気を点けて現れる。


「グレ、ン……。」

「また怖い夢でも……お前、その姿……。」


 フェセナは愛想笑いをするが少しずつ倒れていく。


「ケイリア!!」

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