第2話 ボロボロな体

 また、ここに来た……。

 フェセナは遺跡のような所に居て、とても大きく細い蜘蛛の巣に縛られていて指1つ動かせない。

 早く、早く逃げないとあれが……。


『逃がさないよ?』



「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!」

「フェセナ!!?」


 また知らない部屋に居て、恐怖で息が辛くて苦しく、壁にもたれて両腕を抱え、呼吸が荒過ぎる為、酸素を上手く体内に取り込めず、血の気が引き、冷汗が流れる。


「フェセナ、しっかりして!気を確かに!」


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い……!!あ、あいつがき、来たあ、あいつ等……!!こ、殺され


「しっかりしろ、ケイリア。」


 グレンがフェセナの肩に自身の上着を掛け、頭を撫で始める。


「グ、レン……?」

「やっぱりあの人だ……。あの人、なんだ……。」

「あの、人……!!」


 フェセナはあそこで初めて自分がコートを脱いでいる事に気付く。体中包帯だらけで傷だらけの姿を晒してしまっていた。

 しまった……!!


「フェセナ、金銀天龍きんぎんてんりゅう族の生き残りだったのね。その宇宙のような藍色の髪に黄金の右眼と白銀の左眼。とっても“綺麗で神秘的”。」


 アオは愛しそうな目で、顔でフェセナを見ていた。しばらくするとアオがフェセナに抱き付き小さく泣き始める。


「アオ……?何で、泣くの……?何で、アオが……?」

「ごめんね……!何も知らずに色々聞いて、怖かったよね……!私がもっと早く気付いていれば……!」

「アオ……。」

「俺もすまなかった。もっと早くに気付いていれば、フェセナは悪夢を見る必要はなかった。申し訳ない。」

「ジュンまで……。私は怒ってないよ……?私は「泣きたい時は泣け。俺達はもう友達で仲間。遠慮なんて要らない。もう“寂しいなんて思わせない”。」


 フェセナは嬉しくて嬉しくて喜びが涙となり、小さく声を挙げて泣いた。




「フェセナ?」

「寝ちゃったみたい。」


 フェセナは泣き疲れてベッドの上で眠ってしまっていた。形見である自身のコートを抱き寄せ、グレンの上着を肩に掛けたまま。

 グレンは上着を少しずらして方から腰までを覆う布団とし、ジュンが腰から足までに毛布を掛ける。

 アオはフェセナの左手を握り、額を撫でていた。良い夢を見ているのか、幸せそうで気持ち良さそうに眠っていた。


「寂しかったんだね、でももう大丈夫。私達が居るよ。」

「そういや、グレン。」

「何だ。」

「惚れた?」

「きゅ、急になんて事言いやがる!」

「やっぱり好きなのか。」

「ほ、ほっとけ!!」


 グレンはムキになり、ジュンはそれを面白がって遊ぶ。

 アオはフェセナの寝顔を見てホッとする。


「ゆっくり休んでね、フェセナ。」

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