Those important even wihtout risible(見えずとも大切な物)

夜櫻 雅織

第1話 希望を忘れた龍神様

 『助、けて……。苦、しいよ……。』


 彼女の声は闇に散り、誰1人声を返さない。


 『母上……。父上……。』


 彼女は闇を纏った黒くて大きな化け物に喰われた。



「!!」

「目は覚めたかい?」


 少女が目を覚ましたのは何処かの極々普通の部屋のベッドの上で。開けっ放しの扉からは校長室らしき物が見え、そこから40代の校長や大賢者のようなローブ姿の男が歩み寄り、女の額のタオルを濡らして額に戻す。

 少女はカチコチに固まっていた。


「そんなに緊張する必要も、恐れる必要もない。ここは今日から君の家で私が君の父親となる者だ。ゆっくり休みなさい。」

「あな、たは……?」

「私は学園の校長、土御門つちみかど。君、自分の名前が分かるかな?」

「フェセナ……。フェセナ=ケイリア。」

「そうか、フェセナ。私が今からこの状態、現状に至る経緯を全て話す。覚悟は良いかい……?」


 フェセナはコクリと頷く。

 土御門はベッド近くの椅子に座り、一族の話。フェセナが唯一の生き残りである事。これからはこの学園で暮らし、生徒として生活する事、など沢山の事を話し始めた。




「―――と言う事だ、良いな。」

「転入生かぁ~!」

「楽しみだな!」

「ドゴンみたいな出来損ないかもな。」

「あ”あ”?」

「何だ、ドゴン。何か用か?」

「ああ、勿論。潰してやるから表で―――」


 ―――ドンッ!!


 朝から機嫌の悪いグレンがテーブルの裏を足で蹴って威嚇し、2人を睨む。


「静かにしろ。」

「「はい……。」」

「ドグラード、どうかしたのか。」

「その転入生、どんな奴なんだ?祇園ぎおん先生。」

「もう来てもらっている、入りなさい。」


 フードを深く被り、春なのに黒いコートを着た誰かが入ってくる。

 クラスは言葉を失い、静まり返る。


「彼女はフェセナ=ケイリア。色々問題はあるが今日からこのクラスの一員だ。仲良くやれよ、じゃあな。」


 祇園は直ぐに出ていき、扉を閉める。

 えっ……?どうすれば良い……?てか、教室にソファまで……。テーブルも大理石……。椅子も机も黒板もないし床は絨毯だし何か大きなモニターが壁に埋め込まれてるしエアコンと暖炉まで……。暖炉はガラスで蓋されてるけど、ここは何処かの談話室……?本当に教室……?

 気付くとシェンがフードの中のフェセナの顔を覗き込んでいて、後退りする。


「逃げるの~?」

「仲良くしましょ♪」

『ほっといて……。』

「そのコート、脱げ。暑苦しい。」


 首を横に振る。


「コート着てるから声、籠ってるわね。でも、あなたがその状態で良いならそれで結構よ。私の隣にいらっしゃいな。」


 フェセナはアオの隣に座るもグレンはずっとフェセナを見ていてまだ少し機嫌が悪そうだった。

 あの人、何処かで……。


「まずは自己紹介でもしよう。僕はリュウ=アイジス。蒼竜族次期頭首……いや、族長になる者さ。理数系が得意で氷血ひょうけつの科学者なんて言う二つ名を持っているよ。」

「ここは次期頭首や族長になる者が通う魔法学校でここ、α組は最上位の成績と実績を持っているわ。」


 土御門から聞いた……。魔力は100万以上の者しか無理って……。


「そこのイライラしてるのがヒョウ=エイルーズ。二つ名は氷獄ひょうごくの魔獣。君の隣がアオ=ホウガーデン。二つ名は森林の妖精女王でこのクラスの代表。」

「俺も同じく代表のジュン=ジュラン。壁樹へきじゅ森主しんしゅって二つ名だ。宜しくな。」

「で、さっきから喧嘩してるのがドゴン=ライボルジントとカイン=メイスン。ドゴンは迅雷じんらいの暴君。カインは大蛇の呪術者。」

「私はフウ=ヒュエイン!風雅ふうが猫姫びょうひ!」

『猫……?』

「すっごく気まぐれで自由人なの。」

「俺はドラン、鉄壁の文豪。」

「普段は殆ど無口なの。」

「プローズン=エレワードだ。幻惑の夢喰いって言われてる!悪夢とか見たら俺を頼ってくれ。」


 悪、夢……。


「私はシェン=ミューリンで聖火の守護者!さっきはごめんね……。」

「私はコク=ルージョン。漆黒の翼よ。仲良くやりましょ。」

「ちょっと謎に機嫌悪いのがグレン=ドグラード。冷炎れいえんの帝王さ。彼は緋竜族さ。あ、ヒョウは狼。アオは鹿。ジュンは狐。ドゴンは黄竜。フウは翠鳥。ドランは虎。カインは蛇。プローズンは赤紫竜。シェンは白鳥。コクは黒鳥族さ。君は?」

『私は「危ない!!」


 ドゴンの雷球とカインの毒球が暴走しフェセナに迫りくる。誰もが動く前にフェセナは2つの球に手を向ける。


『アンエクスプロディド。』


 2つの球はポンッと言う音を立てて消滅し、皆の顔は驚き一色になる。


「か、解除魔法!?」

「あ、あのスピードで!?普通、もっと時間掛かるぞ!?」

「フェセナ、貴女は一体……。」


 ズシッ。フェセナの体に何か重い物が圧し掛かる。

 フェセナは隣に座っているアオの膝元に倒れ、動かなくなった。


「フェセナ、しっかりしてよ、フェセナ!!」


 呑ま、れる……。また……。


「フェセナ!!」

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