第11話 洞窟の 中を進むと おっぱいだ

「少しあってな……だが貴様がここにいる理由……我らと同じか」

「あぁ、バーストも魔石……という事は気は変わってないって事?」

 眉間にシワを寄せるエンヴィール。すでに手に炎を出しており、攻撃する気満々だ。


 エンヴィールも高純度の魔石を求めてここに来ているらしい。同じ魔王になりたい同士、ここに集まってしまったという事か。


「変わらないな。このキョーブを魔王にする。ここに魔力を感じたから奥まで来たがまさか同業者がいるとはな……」

「残念ね。ここには魔石はなかったわ。それとそこの男。まだ生きていたのね」

 エンヴィールは睨むように俺を見た。俺は迷わずおっぱいを見る。


 なかなかたわわだ……水着みたいな恰好だから余計主張している。それになかなかいい形……あの大きさは――


「Iカップ……なるほど……」

 大きい……敵ながらあっぱれだ。


「何がなるほどなのよ?」

 胸を見てもあまり気にしない人らしい。


「流石は魔王になりたいだけの事はある。大きさが物語っているな」

「……あなた変な人ね」

 エンヴィールの正直な感想に、ユリィが苦笑いしている。


「でも私の攻撃で死ななかった事は褒めてあげる」

「いえいえ。褒められるような攻撃じゃなかったので」

 皮肉で先制攻撃だ!


「はぁっ?」

 明らかに腹立った様子のエンヴィール。さっきは冷静な顔しているが、意外と直情的なのかも知れない。


「我らは戦う意志はない。ここは休戦が賢い選択だと思うが?」

 バーストの提案に、エンヴィールはつまらなそうな顔している。


「ふ~ん。今の状況では倒せませんから逃がしてくださいエンヴィール様って言いなさいよ」

 どうやら俺達に余裕で勝てると思っているらしい。そりゃ相手から見れば弱体化されたバーストとただの少女と魔力なし人間の3人だ。まぁ、普通にそんなに強くないパーティだろう。


「エンヴィールよ。今は我々で戦っている余裕はないはずだ。競争相手とは言え、お互い魔族のために動いているはずだ」

 バーストは魔族同士で戦うのは避けたいらしい。魔族とはいえ、内部で争うほど余裕はないのか。


「でも魔王になるのはただ一人。それはわかっているはずよね? 綺麗事言っている場合じゃないわよ」

「だが魔族同士は戦わないという暗黙の了解が……」

「そんなの知らないわよ。私は私のルールで動く。誰の邪魔は受けないわ。そこの男!」

 俺が指差される。おっぱいを見ながら話し始める


「何か?」

「あなたは生かして帰さないわ。哀れにも魔王になりたいなんて夢を持ってしまったからね」

「くっくっくっ……俺の夢は爆乳楽園だぞっ!」

 黒いマントをばさっと広げてかっこよく宣言した。魔王になりたい訳ではないんだ。爆乳楽園創立なんだ。


「……あなたの言っている事。さっぱり意味がわからないわ」

「理解は求めてない! エンヴィール! 魔王になりたい魔族らしいが、俺に勝てると思ってないか?」

「はぁっ? もちろんでしょ? あなた自分の能力わかっているの? 魔力なし、装備なし、魅力なし」

「魅力なしは関係ないっ! 確かに装備も魔力もない。だが、俺には強大な力があるっ!」

 おっぱいを揉むような手つきを見せ付ける。


 俺の意志表示だ。これから俺はおっぱいを揉みます。これから俺はおっぱいを揉みます!


「そんなハッタリ信じる訳ないでしょ。あなた……私を見くびってない? 私、魔王に相応しい才能と美貌を持った天才よ?」

 才能は知らんが、美貌はあるとは思う。おっぱい大きいし。


「俺の力はその天才を超えるぞ!」

 俺にはおっぱいパワーがある。そして都合良く大きなおっぱいも目の前にある! 勝てる要素しかない!


「おいっ。キョーブよ。無駄な争いはやめないか」

「俺は争うつもりはない……乳を揉むだけだ」

 勝利などいらない。しかしおっぱいがそこにある。揉まずして何をする?


「……ならやってみるがいい」

 バーストがゴーサインを出した事にユリィが驚いている。


「ちょっと、バーストさん。止めなくていいんですか?」

「よい。勝てる見込みはある。近くで観察したい事もある。ユリィは離れて見ているがいい」

「はい……」

 ユリィは俺を見つめながら不安そうに下がった。


「大見得切った事。あの世で後悔するがいいわ」

 エンヴィールは真剣な表情で、ここまで熱気を感じる炎を手から天井に向けて噴き出している。


「残念だが、俺はあの世から出てきた男だっ! あの世行っても帰ってくるかも知れないぞ」

 実際俺は一度死んでここに来ている。また戻れる可能性はわからないけれども。


「減らず口を……その喉元も綺麗さっぱり消し炭にしてあげるっ! 食らえ!」

 太陽をコンパクトにしたような見た目の火の球を俺に向けて発射して来た!

 だが俺は恐れず一歩を踏み出す!


「っ!? そんなっ馬鹿なっ!?」

 予想通り魔法は俺には当たらず横を通り抜けて行った。近場の壁にぶつかり壁が抉れる。


「俺には通用しない才能らしいなっ! はっはっはっ!」

 俺の才能に思わず笑ってしまう。女神様から与えられたこの力強すぎ!

 一歩ずつ近付く。ゆっくりだが、逃げ場はないので焦る必要もない。


「くっ……一体なんなのあの男!?」

 今度は俺に向かって両手を使い、炎を恒常的に噴出して来た。

 熱は若干伝わるが、その炎も俺には届かない。まるで俺を避けるように炎は右に左に離れていく。


「おぉアツアツ……えっ? 俺がどんな男だって? 俺はおっぱい好きのただの男だ!」

 困惑するエンヴィールに接敵する。Iカップの胸を目の前にして少し興奮する。


「えっと、それじゃおっぱい揉まして頂きます」

 早まる心を押さえ、俺は手を合わせて一礼をする。礼儀は忘れない。


「えっ、ちょっと!?」

 顔には一瞥もせず、最速で手で胸を揉む。


 もみもみもみもみ――おおぉ! このおっぱいもいいな! 

 大剣少女の胸もなかなかだったが、この胸もいい感じだ! 

 触るたびかなり強く押し返す弾力。水着みたいなツルツルした材質の服を着ているが、ほぼおっぱいは出ているので肉質を堪能できる。やや硬いが、柔らかさも兼ね備えている。

 そしてIカップの重量感。こっちが押しているのに逆に迫り来るような重量感。良い。


 だがこのおっぱいには問題がある……それは熱い事だ!

 普通の体温じゃねぇ! まるで熱にうなされている時……いやそれよりも熱い。ずっと触っていたら火傷しそうだ。


「ナイスおっぱい……だが体熱すぎて触っていられない! マイナス! よって10点満点中6点おっぱい!」

「い……いいかげん離れろ!」

 普通に嫌な顔されて、どすっ、と蹴とばされ数歩下がった。大剣少女の蹴りよりは普通な蹴りだ。


「ふっ……だがこれで俺のおっぱいパワーは充填した! 俺の勝ちだ!」

 手を上げて高らかに勝利宣言をした。もう勝ちは同然だろう。


 俺の身体からおっぱいパワーがみなぎっている。この力があればどんな事でも出来そうだ。


「何を乳触っただけで勝ち誇ってんのよ……ってあれ?」

 エンヴィールは意外そうに自分の手を見ている。手で炎を出しているがその炎が小さく、それも多くは出せない様子だ。


「そうか……なるほど……」

 後ろで見ていたバーストが何かを理解したようだ。


「どうした? もうガス欠か? お前の才能はそこまでか?」

 今の俺は煽れるほど余裕たっぷりだ! それほどまでに俺の中に力を感じる……


「そんな事っ……くそっ! どんな魔法使ったのよ!?」

「魔法? そんなの使ってないぞ。というか俺に魔力なんてないだろう?」

 本当に使ってない。それにエンヴィールは俺が魔力ない事を知っているはずだ。


「今はあるじゃない……どこに隠してたのよ」

「ふっ……魔力じゃない。おっぱいパワーだ。間違えるな」

 どうやらおっぱいパワーを魔力と間違えているらしい。そこは間違えないで欲しい。


「意味不明よ……」

 どうやらエンヴィールの攻撃手段はもうなくなったらしい。ただ俺を怖い顔で睨みつけてくるだけだ。


 さてどうしたものか……おっぱいもよく揉んだし、用はもうないんだよなぁ。魔石もないようだし、普通に放っておいて出ていくか?

 迷っていると、後ろの通路から大声が聞こえて来た。

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