第8話 勝利を掴むッッ!

 それに何故か力がみなぎっている。体の奥底から力が湧いて出ているような感覚だ。


 今の俺なら何でも出来る気がする! そんなやる気さえ出てくる。


 ……なんで? 今さっきの凄い攻撃で体がおかしくなったのか? それとも実はそんな強い攻撃じゃなかったのか? 


 いや違う。きっとあれだ……おっぱいのおかげだ! 

 おっぱいを触ったから元気になったんだ! 超速理解。


 おっぱい! おっぱいパワーだ!


「くっくっくっ……痛みもないし、力がみなぎってくるぞ! これが……これがおっぱいパワーか! はっはっはっ!」


「頭強く打ったのかしら……」

 大剣少女が可哀そうな人を見る目で俺を見る。


「さぁっ! 来るがいい! もう一度だ! もう一度勝負だ!」

 おっぱいを触ったし、ダメージないし、調子に乗って来た。


 実質ノーダメージ。あんな感じでおっぱい揉めるなら実質無敵だ。いくら殴ってもおっぱい揉めば回復するし!


「いいわよ……そんな戦いたいならそうしてあげる!」

 大剣少女は右手横に広げる。するとその手が輝き出した。


「まさかっ! 魔法! これ魔法ってやつじゃない!? ひ、卑怯だぞ! 遠距離攻撃なんて! 正々堂々はどうなったんだ!?」

 魔法は駄目だ! それじゃ近寄れないじゃないか! おっぱいが遠のく!!


「そんなの知らない! 食らえ……ホーリーフォトンッ!」

 その魔法はボールのような形状になり、手のひらをこっちに向けた瞬間、まっすぐ俺に向かってきた。

 弾丸のように速い。俺は逃げる事も出来ず、腕で顔を隠して防御した。


「だから魔法は駄目だって! うわっ! 」

 魔法が俺に直撃し――


「いた……くない!? 当たってない!?」

 魔法がまるで俺を避けるように軌道を変え、後方の地面に激突した。その衝撃で地面が少し抉られている。


「えっ? な、なんで? ちゃんと当たるはずだったのに……」

 大剣少女は魔法が当たらなかった事に目を見開いて驚いている。


「す、すごい……キョーブさんすごいです!」

 感動している様子のユリィは俺を褒めてくれる。


「くっくっくっ……俺に魔法が当たらないらしいな! なんか知らんけど!」

 特に何もせずに魔法が避けて行った。つまり俺に魔法が効かないって事だ!


「まぐれで当たらなかっただけよ! ホーリーフォトン! ホーリーフォトン!」

 大剣少女は連続で光の球体を放つ!


 俺は手をまっすぐ伸ばすだけで他に何もしない。特にこのポーズに意味はなく、かっこつけだ。

 魔法は予想通り俺に当たらず、近場の地面に着弾した。


「う、嘘でしょ……なんなのあれ……」

 大剣少女は疲れた様子で肩を落とした。


「くっくっくっ……これが俺の能力! そうか! 能力とはこれだったのかっ! はっはっはっ!」

 これが女神様から与えられた力か! 魔法が当たらない力! 強そう! ありがとう女神様!


 魔法がある世界で魔法を無効化出来る能力って普通に強い気がする。

 強い剣も、魔法も、地位もないから心配だったが、俺にはこれがあるのか!


「くそう……だったらさっきみたいに殴ってやるわよっ! はぁぁぁぁ!」

 大剣少女はすごい剣幕で俺に向かって詰め寄って来た!


 もう怖くない。なんせ俺はおっぱいパワーに満ちているからな!

 俺の内側からおっぱい力を感じる……今ならあの技を使える気がする! 試してみるか!


「来るか……今なら出来そうだ! あの技を!」

 手に力が入る。やってやろう。俺の夢の世界のために!

 それに無罪のバーストを斬る奴だしな! 技の相手にピッタリだ!


「くらえええぇっ!」

 大剣少女は力が入っている大振りのパンチを繰り出す!


 今までに感じた事ない力が俺の神経を研ぎ澄ます! 今だっ!

 身体を逸らし音速で放たれたパンチを避けた!


「なにっ!?」

 大剣少女もまさか避けられるとは思ってはいなかっただろう。これがおっぱいパワーだ!


 バーストッ! 見ててくれ! 死ぬ前に俺に教えてくれた魔法。今ここで使わせてもらう! 

 さぁ食らうがいい……俺の必殺技をっ!


「カップ……アッパァァァァ!」

 俺の声に呼応するように手が輝く! 

 輝く右手がまっすぐ大剣少女の胸に向かう! 逃げられる術は存在しない!

 もにゅ――Dカップの厚みが俺の手を襲う。


「柔らかいっ!」

 期待値よりは小さいが、やはりいいおっぱいだ!


「この男! またっ!? って、何!?」

 光が大剣少女の胸に集まっていく! まるでおっぱいが光を吸収しているように!


「これが俺の必殺技! カップアッパー!」

 魔力がないと言われたが、おっぱいパワーで魔法が放てるらしい。


「えっ、えええっ!? 何よこれ!? 胸がっ! 勝手に!」

 大剣少女は自分の身に起きている事に驚愕している。


 むくむく、と徐々に二つの胸が大きくなっている。俺の手が胸に押し返されていく。

 おっぱいが溢れてくる!! すげぇ!


 Dカップだった胸も、E,F、G、H――と、まるでアルファベットの覚え歌のようにカップ数が大きくなる。

 すごい……なんて魔法だ! さっきまでに見た、どの魔法よりも感動している。こんな夢みたいな魔法が存在しているなんて……最高だ! この異世界最高だ!


 俺が感動している間にも胸は大きくなっていき、最終的にはなんとMカップまで一気に成長した。


 ボンッ! とおっぱいの弾力で手が跳ね返された。なんておっぱいだ……


 ブラジャーはとっくに壊れ、ずり落ちている。さらに大剣少女のシャツがおっぱいの大きさに耐え切れなくなり、中央のボタンがどこかに吹き飛んだ。胸の谷間がちょうど見える良い感じになった。


「くっくっくっ……はっはっはっ! 俺の魔法でDからMカップになったぞ! これだ! これが俺の求めてた力だっ! あぁはっはっはっ!」

 最強魔法。最強魔法が放てるようになってしまった。


「ちょっ! なんで胸が大きく……こんな魔法聞いた事ないわよ! なんなのよあの魔法!?」

 大剣少女は恥ずかしそうに胸を腕で隠しながら聞いてくる。


「放つだけで胸が豊かになる魔法……豊胸魔法っ! カップアッパーだ!」

 豊胸魔法は語呂がいいので勝手に付け足した。


「豊胸魔法……カップアッパー? そんな魔法知らないんだけど!? なんでそんな怪しい魔法知ってんのよ? やっぱりあなたも魔王の手先ね!」

 どうやらこの魔法はすごいマイナーな魔法らしい。そりゃこんな変な魔法がありふれてたら大変だろうが……


「手先じゃない!」

「もういいから直しなさいよ! 胸を元の大きさに戻して! 今直したらこのヘンテコな魔法は無罪にしてあげるから!」

 大剣少女は胸をポヨポヨと自分で触りながら要求してきた。


「いや戻すなよ! せっかく良い感じに大きく、美しくなったんだから! 戻す必要性なんてこれっぽっちもないだろ! そのままの君でいてくれ!」

 強い語調で胸を戻す事を否定した。


 せっかく美しく、そして俺の好みの爆乳になったんだから戻すなんてもったいない!


「でかすぎよっ! それに、そのままの私がDカップの私なの! いいから戻して!」

「戻してって言われても……戻す魔法とか方法なんて知らないし」

 バーストからはこの胸を大きくする魔法しか教えてもらっていない。つまり戻す方法なんて俺は知らないって事だ。


「はぁ!? 嘘でしょ!?」

「本当。でもいいじゃんその胸。最高だぜっ!」

 にこりと歯を見せながら、サムズアップした。


 俺のスマイルとは対照的に大剣少女は鬼のような形相で俺を睨みつけてくる。


「良くないわよ……そこの男……覚悟しなさい」

 と、大剣少女が背中を見せたと思ったら、後ろに置いてきていた大剣を拾い上げようとしていた!


「ちょっと! 大剣は使わない約束じゃなかったか!?」

 普通に焦る。大剣を使われたら不利なのは間違いない。さっきは拳だからなんともなかったが、さすがに切断なんてされたら死ぬ気がする。なんとしても大剣使うのは阻止せねば……


「そんな約束してない! 解除方法を教えないと、これで成敗して……あれっ!? なんで剣が持ち上がらないの!?」

 さっきまで軽々と持っていた大剣が急に重くなったのか、中々持ち上げられていない。


「どうした? まさか大剣が使えないんじゃ……」

 すると大剣少女が涙目で俺を睨みつけくる。


「うぅ……なんでよ……覚えてなさいよ! そこの変態男っ!」

 捨て台詞を吐いた大剣少女は大剣を重そうに引きずりながら逃げて行った。

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