第2話 あの言葉の真意
目を覚ますと俺はまばゆい光の中にいて手足が白い鎖のようなもので拘束さていた。そんな俺の目の前には二人誰かが立っている‥‥。
一人は白い腰布を巻いているだけで上半身は裸の老人、そしてもう一人は見たこともない服を身にまとった少年だった。
「おいっ!!ここはどこなんだッ!!なぜ俺はこんな鎖に縛り付けられているッ!!」
鎖を振りほどこうと必死にもがくがガチャガチャと音を立てるだけで鎖が壊れることはなかった。それに俺の声は向こうには届いていないか、聞こえていないようでどんなに大声を出しても気が付く様子がない。
そして俺を差し置き目の前の老人と少年が話し始めた。
「ぼ、僕は死んだんですか?」
「うむ、そうじゃ。だが心配することはない。今からお主が行くのは天界ではなく、儂が管理する地球とは別の世界じゃ。」
地球?別の世界?いったいこの二人は何の話をしているんだ?
「こ、これってまさか夢にまで見た異世界転生ってやつ!?ってことは……な、何かスキルをもらえたり?」
「もちろんじゃ、地球の人間は呑み込みが早くて助かるわい。では……。」
くるりとこちらを振り返った老人と目が合った。こいつには間違いなく俺の姿が見えている。そうと分かった俺は老人に向かって吠える。
「おい!!こいつを解け!!見えてるんだろッ!!」
吠える俺を見た老人はニヤリと笑いこちらに手を伸ばしてきた。そしてちょうど心臓のある位置に老人の手が置かれる。
「な、なにを……」
もう一度老人と目が合い、俺の体をゾクリと冷たいものが走り抜けた。その次の瞬間……
「ぐっ!?あ゛あ゛ぁぁぁぁぁ~~~~ッ!!」
ずぶりと老人の手が俺の体に沈み、まるで内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜられているような絶望的なほどの痛みが俺の体に走る。
とてつもない痛みに必死にもがくが鎖は千切れることはない。
「ほっほ、これなんか良さそうじゃな。」
「ぐぅぅぅぅ……ア゛ァァァァァァ~~~ッ!!」
体内を散々かき回された挙句、老人は俺の体の中にある何かを掴み引き抜き始める。まるで心臓を鷲掴みにされ無造作に引き抜かれているような感覚が俺を襲う。しかし鎖につながれているため痛みに耐えようと体を動かすことができない。
気が狂いそうになるような時間を経て、ようやく老人の手が俺の体から引き抜かれる。その手には何かが掴まれていた。
「ハァッ……ハァッ……ハァッ、いったい何が起こって……。」
何をされたのかわからないが、間違いなくあの老人は俺に何かをした。激しく呼吸をしながら老人と少年の様子をうかがう。
そして俺は老人の言葉に自分の耳を疑った。
「お主に授けるスキルは無限回復じゃ。どんな傷でもあっという間に回復できる優れものじゃぞ?」
無限回復……だと!?まさか、さっき俺の体からスキルを引き抜いたのか!?
「おぉ~……ありがとうございますっ!!」
少年は老人からそのスキルを受け取り喜んでいる。
もとは俺のスキルだったものがこんなに簡単に他人の手に渡ってしまったことに激しい憤りを覚えるが、鎖でつながれているからどうすることもできないこのもどかしさ。
しかしそんなもどかしさを覚えている俺をよそに二人の会話は進む。
「ではこれからお主を転生させよう。向こうの世界で今度は幸せに暮らすんじゃぞ。」
「はいっ!!」
それを最後に少年は光の粒子になって消え去った。そしてこの空間に俺と老人しかいなくなると老人はくるりとこちらを振り返り話し始めた。
「どうじゃ?勇者ルーシー、世界の生贄として一つ身を捧げた気分は……。」
「貴様……何者だッ!!さっさとここから俺を解放しろ!!」
「儂か?儂は神じゃ。それに安心せい、お主も役目を終えたら解放してくれるわ。」
「役目……だと?」
そう聞き返すと神と名乗る老人はにんまりと笑みを浮かべ、俺の顔をのぞき込んできた。その不気味なまでにゆがんだ笑顔に俺の背筋にゾクリとした冷たいものが走る。
「さっき身をもって体験したじゃろう?お主の持つスキルを転生者にすべて明け渡す……それこそがお主の役目じゃ。」
「す、全てだと!?俺のスキルが一体いくつあると思って……。」
「ほっほ、ほれ次の転生者が来たぞ。」
俺が話している途中で再び老人の前に転生者と呼ばれる人間が現れた。そして先ほどと同じような会話を挟み、にんまりと不気味な笑みを浮かべた神を名乗る老人が再び俺の前に立ちそのしわがれた手をこちらに伸ばしてくる。
「さてさて、なんのスキルがよいかのぉ~……。」
「やめろッ!!来るな……やめ……ぐっ!!あ゛あ゛ァァァァァ~~~~ッ!!」
この時ようやく俺は魔王ベルフが言っていたことが正しかったことを身をもって知る。神は崇拝されるような存在ではない。
本当の神は
残スキル98/100
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