第25話 教習所に行こう10(小型二輪AT限定免許取得日記)

 卒業検定を予約した日の天気予報は雨。ぐぬぬ。

 雨の日、バイク乗ったことないんだけど。ま、落ちてもいいや。

 それくらいの気持ちで緊張せずその日を待つ。


 夜から降っていた雨は朝もちょろちょろ降っている。でも、なんか止みそう。

 家事をして、準備をしながら外を見ると雨は止んでいる。

 ホッとしたけど、とりあえず、めっちゃ寒いので奮発して旦那様に買ってもらった(私はお財布持たない主義)レインブレーカーの上を着て行く。


 晴れ間が出てきて、道路も濡れているけど、滑らなそうな状況。

 集合は9時半。何かあったらいけないので十五分前には到着。結構人が待っている。原簿を持った教習の人もいるから、全員が検定ではないみたい。

 二輪のコースで教官がバイクの慣らし運転みたいなことをされていれのを見ながら時間が過ぎるのを待つ。


 時間がきた。

 大きい教室で集められて、班ごとに順番に座って待つ。

 驚いた。

 なんて人数。二輪だけで四十人を超える人が卒業検定を受ける。そりゃもちろん、小型もいれば大型もいるので、実際小型に乗るのは何人なのか分からないけど、近年のバイク人気の凄まじさを実感。

 ホワイトボードに班とコースが書かれる。

 私は1コース。慣れた道で良かった。


 班ごとに始まるから順番的には四番目。その後ろにもまだまだいらっしゃる。

 何時ごろ、検定の控室に来てね、と案内される。控室というのは二輪コースに作ってある高台(展望室みたいになっている)のこと。

 プロテクターをして荷物を持って行くらしい。

 時間までコースの外で自分が回る道を確認する。

 私がコース外の柵にへばりついていると後続者がゾクゾク現れる。そりゃそうだよね、みんな緊張してコース確認しないと落ち着かんよね、と思いながら私は何故か上の空。緊張しているはずなのに、人の運転見てぼーっと過ごす。


 時間になって、プロテクターをつけにテント下へ。

 あれれ、いつものプロテクターがない。

 見たことのないプロテクターを前に、どうやってつけるのか分からず、取り合えず、ぐるぐる巻きにして落ちないようにしておく。

 しかし、胸部のプロテクターがない。

 こういう場合どうするんだ、と思いながら、近くにいた人が、終わった人から受け取ればいいですよ、と教えてくれる。親切な人がいて助かった。


 検定終わった人からプロテクターを受け取って、控室へ。

 ピンクの検定ゼッケンをつけて、呼ばれるのを待つ。時間を過ぎても、前の順番の人がそこにいるのに気が付いた。

 あれ、まだ?

 コースを見るともう一つ前の人がコースを回ってた。しかもゆっくり。

 そうか、ゆっくりでもいいのか、と一緒に乗っているつもりでコースを回る。

 できるわ、と変な自信が湧いてくる。油断は禁物なのにねえ。


 あー、でも、これ、コース出た途端頭真っ白になりそう。

 そう思っても、なんだか変に緊張してきてコースも見る余裕がなくなってきた。

 わけわからない興奮状態。何か薬やってるんですか、みたいな気分で、命の母飲んで来たら良かった、と後悔。この頃ホルモン異常で苛々したり、動悸がしたり、大変なのです。


 私の前の人が呼ばれて、コースに。がんばれ坊や、と思いながら見守る。

 ん、そこは目視しなくていいの、とか突っ込み入れながら、他人事ながら心配する。結局、彼は合格したのだろうか?自分のことで精いっぱいで他の人の結果は知らない。どれくらいの人が受かったのかな。


 そしてとうとう私の番。

 卒業検定の担当教官のところへ行って説明を受け、バイクを押して指定位置へ置いてから、手を挙げて教官へスタートの合図。教官も手を挙げてくれて、開始。

 雨が上がって、道路が乾いたので、急制動の位置が手前になる、という確認事項もあった。手前、と念じながら息を整える。

 で、後方確認をして乗り込んだら。


 がしゃーん。


 何が起こったのでしょう。

 目の前をバイクが横向いて通過していく。乗ってた人は道路に転がっているぞ。

 つまり、カーブで教習中の人がこけたのです。


 ドッキドキの心臓ばっくばくで、とりあえず、私は私で検定受けなきゃ、とスタートする。

 とにかく、目視だけはきっちりして、途中、コースが頭の中でごちゃごちゃになったけど、なんだか体が勝手に覚えていてコースを進んでくれた。

 あそこ行ったっけ、と何度か思ったけど、よく分からないうちに終わってた。

 最後まで気を抜かずに、と教習で教官に言われたことを思い出して、指定位置に戻るまで気を付けて戻って、手を挙げて終了。

 すぐに呼ばれて行くと、はい合格ね、と言われた。


 あっけないけど、嬉しい。

 合格ー、と叫びたい気持ちでコースを後にし、控室にピンクのゼッケンを置きに行く。階段を降りて、荷物を控室に置いていたことを忘れて慌てて取りに戻る。


 教習で滅茶苦茶お世話になった教官にお礼を言いたいなあ、と思いながらコースを見ると、教習で忙しそう。待ってても迷惑かな、と思って、手続きしに行き、一時間くらいで書類ができます、と言われる。

 一時間、何して過ごそう、と思うけど、とにかくトイレに行きたかった。


 綺麗なトイレで用を済ませて、次はコーヒー飲みたい、と思ったけど、またトイレ行きたくなるしな、と思い、大人しく待機場所でゆっくり待つ。きっと一時間よりも早いはず、と思った通り、三十分くらいして名前を呼ばれて書類を貰う。

 あとは免許書センターで免許を貰う手続きをするのみ。


 補修覚悟の卒業検定でしたが、こうして合格を頂き、無事に卒業となりました。

 めでたし、めでたし。


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