第15話 素人と玄人

 この間、近所の楽器店で楽器の試奏をしてきました。

 はっきり言って、最高やったぁ。


 中学校の頃、私は吹奏楽部。聞けば結構「私、吹奏楽やってた」って言う人多いんやろうなあ。

 そんな近所を探せば一人や二人出て来るであろう吹部経験者が楽器店へ行けば、そりゃあもうテンション上がるってもんで、私も目を輝かせながらショーケースを見てたんやけれども。


「吹いてみますか」

 店員さん、そっとよって来て、そんなこと言うねんで。君は天使か!

「買いませんよ?」

「吹くのはタダですよ」

 君はやっぱり天使やねんな。


 私は楽器への興味は満々やけど、今まで勇気を出して「試したい」と言えず、試奏の経験がなかったのです。

 膨らむ期待。天使に感謝。

 広い防音室のようなところへ通されて、次から次に楽器を出してくれる店員さん。

「買いませんよ?」

「吹くのはタダです」

 そんなやり取りと、試奏に次ぐ試奏。

 なんて素敵な時間やったのやろうと、今思い出しても口元がニヤけてくる経験でした。


 私の持っている楽器は超初心者モデル。それを何十年も大事に吹いてきた。

 けど、やっぱり音には満足できなくなってくるわけで、新しいの欲しいなあって思ってた。でも高いし、プロになるわけじゃないし。


 吹くのはタダ。


 素晴らしいね。自分が今どのレベルの楽器が吹けるのか、すごく可能性が広がって、しかも、楽器店の玄人さんにも吹いてもらって、音の違いに愕然とする良い経験もできたし、このレベルまで行きたいなあって目標もできて。

 最高でした。


 で、考えることは、素人と玄人の違い。

 大きく違うよね、玄人って。

 音質もさることながら、表現の技術が歴然と違う。

 練習量も違うやろうし、学ぶ先生のお月謝も違うやろうし。でも、根本は学ぶ姿勢なのかなあと思ったり。

 自分で音や技術を発見していくつもりがなければ、きっと上達はしないんだろうと思う。

 玄人に至るまでの道のりが長い人も短い人も色々いるやろうけど、プロってすごい、って素直に感心しちゃうね。


 それから、楽器の持つ力も全然違う。

 高い楽器にはそれなりの理由があるのです。

 それを今回の試奏で実感。


 今まで、自分の技術が足りなくて、と諦めていたことが、なんと、高い楽器は簡単に叶うのでした。拍子抜けするほど。

 例えば、音を小さく、逆に大きく、とか簡単にできちゃう。指遣いもスムーズにできるし、吹いていて気持ち良い。

 そうなると、欲しくなるんやねえ。

 でも、お金ないから買えない。でも、コツコツ貯めようかなって思う今日この頃。

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