第3話 損

 小絵は部屋で涙に暮れていた。


 ——二回もパンツ見られたのに!


 くやしくて、ひたすら枕をサンドバッグに小さな拳を何度もたたき込んだ。


 そうなのだ。あの魔神——ジェニファー——には二回もタダでパンツを見られたのに、まだ肝心のお願いを叶えてもらってないのだ。


 ——ここはもう一度作戦を練り直して、あのスケベ魔神をギャフンと言わせてやるわ。


 そう思い直した小絵は、とても大事なことにやっと気がついた。


 ——で、どうやって呼び出せばいいの?


 誰もいないことを確認して、試しにスカートを指で摘んで少し上げてみるが、何も起こらない。確かにあのとき、風でスカートがめくれたらジェニファーが出てきたはず。

 

 右足の親指で、扇風機のスイッチを入れてみるが、スカートがめくれるほどの風がこない。


 ——あっ、弱じゃだめね。


 もう一度、強でチャレンジするがうまくいかない。


 ——いくらミニでもジーンズじゃ無理か。


 整理ダンスからプリーツの入ったかなり短めのミニを取り出して、履き替えてから再度扇風機に背を向けて立つ。もちろん、強、である。


 すると、ブワッと小絵の思い通りにスカートが上がる。


「お呼びでしょうか、ご主人様」


 振り返ると扇風機と並んでジェニファーが後ろからジッと見ていたのだ。


 ——うまくいったけど、なんかうれしくない……。


 

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