第1422話 巻き込まれるオト
統一歴九十九年五月十二日・午後 ‐
バレなければ大丈夫、バレっこない……まるで子供に言い訳である。リュウイチが何かに失望したように目を閉じ眉間を揉み始めた丁度その時、ドアがノックされた。ロムルスはネロとアイコンタクトを取り、さっとドアに足音を殺して駆けよるとドアを小さく開けてノックした本人を確認する。
「……オ、オトと、アウィトゥスが来やした」
「アウィトゥス?」
ロムルスの報告にネロが
オトはリュウイチからリュキスカへの
それに対してアウィトゥスは今回の件には関わっていない。同じ
判断に迷ったネロはリュウイチを見た。が、リュウイチはジッと目を閉じて眉間を揉んだまま反応を示さない。どうしたものか、自分で判断せずにリュウイチの意向を確認した方が良いだろうか、それともオトだけ入れてアウィトゥスを追い払った方が良いだろうか……ネロが答を出せないで居る間にリュウイチは眉間を揉むのを止めて顔を上げた。
『入ってもらって』
リュウイチは一言そう言うと、組んでいた足を崩して
ネロはロムルスに向かって頷き、ロムルスはドアを開けて外に立っていた二人を招き入れる。オトはやや気まずそうに入るとそのままゴルディアヌスの近くまで進み、ネロと目配せするとゴルディアヌスの隣に立った。そして
「後で話してやる。
隅っこで大人しくしてろ」
ロムルスにそう言われたアウィトゥスは普段なら「偉そうに命令すんな」とかロムルスに反発しただろうが、雰囲気に飲まれたアウィトゥスはゴルディアヌスの背中を見つめたまま「あ、あぁ」と力なく答えてロムルスの隣に
「
『いや、返事は聞けたのかな?』
オトが切り出すと、リュウイチは先に自分が頼んだ案件についての回答を求めた。リュキスカに
「はい、
リュウイチはオトの返事を聞くと口元に手を当て、フムと小さく声を漏らす。リュウイチが
大丈夫……なのか……???
悩みかけてリュウイチは考えるのをすぐに放棄した。どうせ魔力はリュウイチから供給されることになるのだから、暴走したら魔力の供給を断ち切るとか言っておけば《火の精霊》も下手なことはすまい。それにリュキスカはリュウイチに対して面と向かって文句を言ってくるが考え無しなわけではなさそうだ。力関係やお互いの立場が分からなくて調子に乗っているとかではなく、元々向こうっ気が強いのだろう。リュキスカと最初に会った夜、店で刃物を振り回して暴れ始めた暴漢の前に、
リュウイチのようにコミュニケーション能力に乏しい男は、夜の街を生きる水商売の女の世を渡っていく知恵・処世術を無意識に過大評価してしまう傾向がある。逆に頭っから完全に否定して馬鹿にする男も多くて両極端なのだが、リュウイチもまたリュキスカのその辺りの能力を妙に過信しているところがあった。リュウイチは口元に当てていた手を降ろす。
『分かった。
あとで
ネロはリュウイチの
『次はそのトルキラの件だ。
ゴルディアヌスと《
リュウイチがそう言うとオトは信じられないという顔をして隣のゴルディアヌスを見る。それに気づいたゴルディアヌスは申し訳なさそうに顔を歪めて小さく「すまねぇ」と絞り出すような声で謝った。
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