会談後
第1311話 残業
統一歴九十九年五月十一日、夜 ‐
リウィウスは一人肩を落とすと、カエソー・ウァレリウス・サウマンディウス伯爵公子の待つ
リウィウスとしてはルクレティアに出席してほしかった。正直言って
だからリウィウスとしてはルクレティアに出席してもらい、自分は同伴するだけで横で話を聞いてるフリだけすればいいようにしようと画策したわけだが、まあそんな浅はかな企みなど成功するはずも無かった。ルクレティアの欠席するという判断にしたところで、レーマ帝国の常識に照らし合わせれば非の打ち所の無い当然のものなのである。
いっそのこと道に迷ったフリでもして出席を取りやめようかとも思ったが、カエソーから直々に出席を命じられている以上それも出来まい。実際、リウィウスが陣営本部に入った途端にリウィウスはサウマンディア兵に捕まり、会議が開かれる
「では、ルクレティア様は来られないのだな?」
入室したリウィウスはカエソーの答の分かり切った質問に、バツの悪そうな苦笑いと共に「へぇ」と答えるしかなかった。
「まぁ、当然だな」
カエソーはそれ以上リウィウスに何も言わなかった。リウィウスがカエソーの部下なら叱責の一つでもされたかもしれないが、リウィウスは
リウィウスはカエソーの従兵に案内されて末席に腰かける。するとすぐに別の従兵がリウィウスのために香茶を用意してくれた。
「グルグリウス殿が参られました」
従兵が告げるとカエソーがグルグリウスを出迎えるために立ち上がり、他の
「おお、グルグリウス殿!
先ほどまでの
「なんの、これくらい大したものではございません。
不届き者を
「おお、グルグリウス殿ほどの
さあ、よろしければどうぞこちらへ」
カエソーはそういうと百人隊長たちが囲む
円卓の中央には火の灯された燭台が一つ、さらに円卓を囲む椅子の輪の更に外側に燭台が立てられているが、先ほどティフ・ブルーボール二世を
「これは、これから何か
グルグリウスが尋ねるとカエソーの愛想笑いがやや苦いものに変わった。
「実は先ほどのハーフエルフ様との会談を受け、現状の再認識と今後のことについて少し話そうと思っておりましてね。
できればグルグリウス殿の御意見も
御協力いただけませんかな?」
この会議は予定されていたものではなかった。だから急な申し出である以上突っぱねられても仕方のないものであり、カエソーもグルグリウスに断られるのではないかと不安に思っていたが、グルグリウスは少し驚いた様子で眉を持ち上げはしたものの、さして間を置かずに快諾した。
「構いませんとも!
それに資することであれば
カエソーの表情がパアッと明るくなった。
「おお! さすがはグルグリウス殿!!
その見事な忠勤ぶりには感服するほかありません!
さあどうぞ!
そうと決まれば、さあさあ」
喜びを口にしたカエソーは自らグルグリウスを椅子へ案内した。グルグリウスに着席させると、カエソーはその右隣りに座る。
今回の会議の主催者はカエソーであるから、その左隣りに座るグルグリウスは主賓……カエソーがどれだけグルグリウスを高く評価しているかがその席順に現れていた。ちなみにカエソーの右側にサウマンディア軍団の百人隊長二人が座り、グルグリウスの左側に
グルグリウスとカエソーが着席すると、百人隊長たちとリウィウスも席に着き、いよいよ会議が始まった。彼らにとってはとんだ深夜残業である……もっとも、このヴァーチャリア世界には労働基準法などというものは存在しないし、「残業」などという概念もありはしなかったが……
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