第1241話 アッピウスの看破
統一歴九十九年五月十一日、晩 ‐
「さあ、
着こんでいた
その間を従兵たちがコソコソと動き回り、ある者は
「さあ、どうした。
貴様が望んだとおり面会の場を用意してやったぞ?」
未知の相手……それも魔法の使い手を前にアッピウスは随分と自信にあふれた態度だ。彼を守る六人の百人隊長たちは気が気でない様子で、その顔は全員が全員緊張で
「使いとはいえ、
男はどこかソワソワした様子で、それでも何とか口元に笑みを浮かべながら言った。アッピウスとの面談は男自身が望んだものだが、どうやら予想と違ったらしい。
アッピウスは腹を揺すって笑ってみせた。
「ハッハッハ、持って回った様な言い方は
ここには既に事情を知っている者しかおらん。
貴様の言う
フードに隠れた男の口元が歪む。それを見もせずに
「ムセイオンから脱走した
酒杯を目の前の
「実はサウマンディウムにムセイオンからの手配の通知が届いたのだ。
見つけたら身柄を確保し、報告せよとのことだ」
そこまで言うとアッピウスはムフフと満足げに笑う。男は対照的に喉を鳴らし、唾を飲みこんだ。
「さあ、そろそろ貴様の名を名乗れ。
あと、貴様を使いとして送り出した者の名もな。
まさか、貴様の主人は我々が思っている
「……どうなさるおつもりかな?」
アッピウスは一瞬我が耳を疑い、椅子に座ったまま男を見上げた。そして男が不安からそんな間抜けな質問をしたらしいことに気づくと両眉を上げ、ハハッと笑ってみせる。
「それは貴様の話次第だ。
そこまで言ってアッピウスは組んでいた足を解き、両足を床に付けた。顔は笑ったままだが目元からは笑みが消えている。
「
男を囲む四人の百人隊長が
「フッ」
緊張の数秒間を経て男が笑った。
「魔法の使い手を前に豪気なことだ」
「ふっふっふっ」
男は脅しのつもりだったようだがアッピウスは可笑しそう腹を揺する。
「魔法を使ってどうする。
我らを害して貴様はどうするつもりだ?」
アッピウスはのっそりと上体を起こし、卓上の酒杯に再び手を伸ばす。
「
ムセイオンがレーマ帝国と事を構えてでも
燭台の光を集める眼前金の酒杯の輝きを、どこか恍惚とした目で眺めながらアッピウスは続けた。
「ムセイオンの
レーマの協力があるからこそムセイオンは存続しておるのだ。
まず間違いなく
無論、その高貴な血は貴重だから処刑まではされまいが、いずこかで死ぬまで幽閉されることになるだろうな」
アッピウスは再びワインで喉を潤す。その時、口の端からわずかにワインを溢してしまい、アッピウスは慌てて自分の手で拭った。そして酒杯を卓上に戻し、上体を背もたれに預けると、先ほどの失態など無かったかのように腹の上で両手組み、そして足を組む。
「そうなれば従者もタダでは済まん。
分かるな?」
男はアッピウスを見下ろしたまま息を飲むと、しばらくして目を閉じ、スーッと溜息でも突くように盛大に息を吐き出した。
「閣下の
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