第1147話 昨夜の経緯
統一歴九十九年五月十日、朝 ‐ 『
「よ、要点を
「構わない。順を追って話せ。」
男は何とかエイーの前から逃げ出したいと望み、エイーの期待に応えられそうにないことを告げてはみたが、エイーは男のそんな気持ちなど意に介さぬのばかりに男の前にドッカと
男は困った様な表情でエイーを見上げていたが、ヤレヤレ参ったとでも言いたげに目を閉じ小さくため息を付くと、片膝突いて
その姿勢から男は上目遣いでエイーを見やる。
「
無駄を省いて急いで事情を知りたいエイーの気持ちを理解してのことだろう。馬鹿を装ってはいるが、それなりに知恵は回るようだ。
「
確か、目の前にグルグリウスが現れて、後ろからゴーレムどもに囲まれようとしていたんだ。」
ペイトウィンが目の前のグルグリウスに向けて魔法を放ち、それが何故かグルグリウスに命中するよりずっと手前で爆発を起こし、エイーは巻き込まれて火だるまになった。エイーが記憶しているのはそこまでである。エイーにはグルグリウスが
エイーのした説明の部分は、盗賊たちがエイーたちに合流して間もないタイミングである。男はどうやら、エイーたちと合流して以降のことのほとんどを説明せねばならないらしいことに面倒だなぁと思いながら目を閉じまた小さくため息を付く。
「その時の
エイーは男がグルグリウスに
「
俺たちゃクレーエの
「ゴーレムを転ばす?
お前たちによくそんなことができたな……」
あの時のゴーレムはマッド・ゴーレムだった。身体は柔らかく攻撃は通りやすいが、逆に通りやすすぎてダメージを与えにくい。剣で切りつければ弾かれることなく刃はめり込むが、めり込んだ先から傷口が塞がって再生してしまうため物理攻撃によるダメージは極めて短い間しか持続しない。
そんなマッド・ゴーレムたちに対する盗賊たちが使っていた武器はレーマ軍から奪った
エイーが素直に感心すると男は褒められたと思ったらしい、ヘヘッと嬉しそうに小さく笑った。
「いやぁ、みんなでゴーレムの片足に一斉射撃して、よろけたところを
「ふーん、それで?」
残念ながらエイーは戦いそのものにはあまり興味がない。男はもっと褒めてもらえると期待していたようだったが肩透かしを食らう形になった。
「え、ええ……それで俺らで
マッド・ゴーレムたちの脚が遅いとはいえ山の中であのグルグリウスの前から人間二人をかっ
「で、ある程度離れたところで担がれてた
ところが、その途中でゴーレムどもが追い付いてくる音が聞こえやしてね……えーっと、そんで……」
男は言い
今の盗賊団を
「どうした?
先を続けろ。」
「ええっ!
ええ、ええ……それで、それでですね。
その、
レルヒェは目を泳がせながら言葉を探し、ついに面倒くさくなってクレーエとペイトウィンの言い争う場面を丸ごと
「んで、
エイーはスゥーッと音がするほど息を吸い込みながら目を剥いた。レルヒェもそれに驚き、思わず話を中断してエイーを見上げる。それから間もなく、エイーは床に手を突き身を乗り出して叫ぶように問いただした。
「
「はぃ!?
え、ええ……そりゃもう
うっかり口を滑らせたレルヒェにエイーは腰を浮かせた。片膝を突いて今にもレルヒェに飛び掛からんばかりに問いただす。
「致命傷だと!?」
「え!?
あーっ、ハイッ、もう、あっちこっち骨折して、口からも鼻からも血ぃ流して、意識も完全に失って、ありゃ
「まさか亡くなられたのか!?」
この場にペイトウィンがいない理由……その想像しうる最悪の状況にエイーは文字通り血の気の引いていくのを感じていた。レルヒェはエイーの反応をある程度は覚悟していたが、実際が予想以上だったのか気圧されてしまったものの慌てて打ち消す。
「とと、とんでもねぇ!」
両
「
その後で《
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