第981話 悪魔の助け舟
統一歴九十九年五月十日、未明 ‐ ブルグトアドルフ近郊/アルビオンニウム
「いやそんなっ、とんでもねぇっ!!」
《
「《
『じゃあ何なのよ?』
あどけない少女の見た目をした《森の精霊》はプウッと頬を膨らませる。クレーエが言葉に詰まり、返答に困っていると横からレルヒェが調子のいいことを言い始めた。
「そうだぜ
こんな強そうな《
これならレーマの
『そうでしょ!?
アナタ、初めて見る顔だけど話が分かるわね!』
我が意を得たりと《森の精霊》がレルヒェを褒めると、調子に乗ったレルヒェは頭を掻きながら「ありがとうございやす。レルヒェって言いやす。よろしく。」と少女に向かってペコペコと愛想を振りまいた。たとえ相手が貴族だったとしても大の大人が女の子相手に見せていい態度ではないだろう。
「まぁまぁ
困った様子のクレーエを見かねたのか、《森の精霊》の背後からグルグリウスが小さく咳ばらいをしてから割って入る。
「
お友達だというのなら、それを汲んでさしあげるのも思いやりですよ?」
何を言い出すのだ、この
『私を思って!?』
少女はあからさまに
「そうです。
お分かりですか?」
『……
慎重に尋ねる少女にグルグリウスは残念そうに首を振る。
「《
《
ですが、
今回は目に余る無礼があったがために、こうして
グルグリウスの忠告に《森の精霊》は表情を曇らせ、グルグリウスが手に持つペイトウィンをジッと見つめた。
『それは……
「今回はそうです。
ですが、
《森の精霊》は重苦しそうに視線を落とし、そしてクレーエたちに顔を向けた。その背中にグルグリウスが柔らかく、だが同時に重々しく問いかける。
「もしその時、お友達が
聞きたくない問いを投げかけられつつある《森の精霊》はパッとグルグリウスを振り向いた。が、グルグリウスは一度投げかけた問いを中断することはなかった。
「その時、
あえて声色を強く言い切ったグルグリウスの表情は硬く、そして冷たい。これは警告なのだ。同じ《地の精霊》の眷属ながら、《地の精霊》の意に反しかねないことをしている義姉に対しての。
グルグリウスを恨めしそうに睨みつけていた《森の精霊》はフッと目を背けた。
『……それは、できないわ。』
盗賊たちは二人揃ってゴクリと唾を飲み、無意識に半歩さがる。グルグリウスは《森の精霊》から盗賊たちを引き離そうとしているようだ。話の流れ次第で今すぐにここから離れろと言われれば出て行かざるを得ないだろう。下手すれば《森の精霊》自身が手のひらを返したようにグルグリウスに協力し始めるかもしれない。だが、だからといってクレーエが《森の精霊》の
警戒する盗賊たちを余所にグルグリウスは《森の精霊》に話を続ける。
「そうでしょう。
《
『……そう、なの?』
《森の精霊》はグルグリウスではなく、クレーエに問いかけた。どこか寂しそうな、
クソ、どういうつもりだ!?
森へ留めようとする精霊からクレーエたちを助けようとしているようにも、あるいはクレーエたちを《森の精霊》から引きはがそうとしているようにも見える。どちらであったとしてもクレーエたちが《森の精霊》から逃れるという結果は同じなのだが、そこから更に後の結末は同じではない。前者ならばクレーエたちは解放されて自由を得ることになるが、後者は《森の精霊》の領域から出たところで
いっそグルグリウスに反発し、その本性を暴いてやれれば楽なのだが、《森の精霊》の身内と知った以上は下手に無礼な態度をとるわけにもいかない。
「い、いやぁ……その……」
クレーエは答えに
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