第751話 守旧派元老院議員たち
統一歴九十九年五月九日、昼 ‐
フォルム・レマヌムで派手に群衆を騒がせながら
「いやいや、相変わらずの人気ですな。
レーマ市民は皆、『
「いやまったく、その牽引力こそ
タウルス・アヴァロニクス卿のお力があればクレメンティウス朝を終わらせ、共和制を復活させることも夢ではない。」
「
クソッ、また毛が抜けた……
愛想笑いと
「しかし、わざわざ『
やはり皇帝はまだ知らなかったではないか。あれではわざわざコッチが教えてやったようなものだ。」
コルネイルスの表情は批判的とまではいわないが、少しばかり残念そうな様子だ。彼はフーススが今回の降臨のことで『黄金宮』に行くことに反対していたのだ。結局はフーススに同行して自分も『黄金宮』へ
「いや、あれで良いのです。」
「何故だ?
黙ったまま皇帝よりも先に
皇帝が知る前に自分たちは降臨者の情報を察知することができた。ならば皇帝に先んじて手を打てば、自分たち元老院こそが帝国の代表者であると
もしそれが実現すれば皇帝の存在は有名無実化する。
「我々が教えてやらなくても、
さすがに皇帝への
苦言を呈するコルネイルスを
アルビオンニアとサウマンディアからの報告書は皇帝が整備した
皇帝に届けられる書類を勝手に開封し、中身を書き写してからバレないように
「そうだとしても、一日や二日は稼げていただろう?
その間に我らで使者を出してしまえたではないか。」
「一日や二日の差など、途中でどうなるかわかりませんよ。
アルビオンニア属州まで三か月もかかるし、途中で海も渡らなければならない。
風や潮の加減で追いつかれることも追い抜かれることもあるでしょう。」
「そうそう、それに使者は途中でいくつもの属州を通過せねばならんのです。
領主たちは
「それでうっかり用件を話してしまえば、領主たちは皇帝に利するように動くに違いない。彼らにしてみれば使節の足止めなんてお手のものだ。」
「仮に秘密を守ったとしても、今度は皇帝に何事ですかと手紙で問い合わせるでしょうしね。」
「属州はどこも皇帝の味方。本国の外で皇帝に先んじることなど不可能だ。」
「それで皇帝の使者が先に到着してから
なおも食い下がるコルネイルスに他の
「しかし、
皇帝に知られるのは仕方ないにしても、あれでは皇帝に対応を促すようなものではなかったかね?」
思いもかけず
失言のあった議員や一方的に攻撃を受けてしまった議員をフォローし、とりなして体面を保たせる……こういう気配りによってバランスを取ることで、彼は議員たちの信頼を得て今の地位に就いていた。ただ、周囲の協調を重んじすぎるせいで自らの方針を強く打ち出すようなことは苦手であり、議長という調整役としては優秀でもリーダーシップを発揮すべき指導者としては凡庸そのもので、それが彼が元老院の頂点には到達できても執政官などにはついぞ成れなかった原因になっている。
とはいえ、フーススはもちろんこの場にいる議員たちの多くが一度ならず彼の気配りとフォローによって助けられた経験を持っている。ゆえに、フーススもピウスの言葉には常に一定の重きを置かざるを得なかった。
フーススは一度ピウスの方を見、やや
「いえ、あれは牽制です。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます