第744話 報告の信憑性
統一歴九十九年五月九日、午前 ‐
統一歴九十九年四月十日、アルビオンニア属州の元・州都アルビオンニウムにて降臨が発生。
降臨者の名はリュウイチ……かの《
警戒にあたっていた
同行していた
リュウイチと戦闘に及んだ兵士たちは軍法により死刑が決定したが、それを知ったリュウイチより助命を所望されたためリュウイチの奴隷とした。その際、リュウイチは奴隷八人の買取価格としてソリドゥス金貨をも上回る価値があるであろう金貨を八千枚を提示した。
リュウイチの
同日、アルトリウシアでは
アルトリウシアへ到着したリュウイチはハン支援軍叛乱の被害を受けた住民らを
その後、リュウイチは
昨日五月八日に帝都レーマに届けられたアルビオンニア属州からの報告書の内容をまとめると、おおむねそのようなものであった。言うまでもないが実際には時節柄の挨拶やらなんやらを織り交ぜ、
手紙の日付は四月十一日……書かれていることが事実であれば、降臨の翌日に書かれたことになる。帝国最南端の属州から赤道を越えて帝都レーマまでわずか二十七日での到着……これはレーマ帝国が全国に張り巡らした
「陛下はいかがお考えでありましょうや?」
お前たちの元にもコレが届いたのか?……
何せ
幸いにもその大戦争は《暗黒騎士》と呼ばれる謎の存在によってゲイマーたちが一掃されたことで終結し、その後は大協約という国際法によって世界の秩序は保たれていた。
ゲイマーの力には頼ってはならない。そのためにも降臨は二度と引き起こしてはならない。降臨を引き起こしたメルクリウスにはここまで世界を荒らした責任を問わねばならない。
全世界がこの目標を達成するため、これまでのすべての降臨者が齎した
そのような方針で定められた大協約が施行されて以来、ヴァーチャリア世界ではこれまでの約百年間、降臨は起こっていない。世界を二分したレーマ帝国と啓展宗教諸国連合は互いの不干渉を誓い、両陣営の武力衝突は完全に停止している。レーマ帝国は啓展宗教諸国連合のある西側以外への版図拡大へいそしみ、啓展宗教諸国連合側は加盟国間での分裂を起こして小規模な武力衝突を繰り返しているが、それでも大災害以降大戦争を通じて大幅に減ってしまった世界の人口は確実に増加に転じていた。
大協約体制での国際秩序の維持はおおむね成功していると評して間違いはないだろう。
だが、ここへ来て大協約体制が敷かれて以来初めて降臨が起きた。それも世界中のゲイマーを単騎で一掃したとされる《暗黒騎士》と同等の力を持つ降臨者……その報告に戸惑わぬ者など居ようはずもない。しかしだからといって戸惑い、悩むだけの贅沢などここに居る者たちには許されていなかった。彼らは支配者であり、為政者であり、すべての実務者たちの頂点に君臨する責任者なのだ。配下の者たちが適切に動けるようにするために、彼らは存在するのである。そのためには、分からないまでも何らかの決断を下す必要があった。
「しかし、手紙一枚ではな。」
マメルクスは嘆息してアルビオンニアからの手紙を脇に置く。
「ランツクネヒト族の
皇帝の言が意外だったのかフーススは怪訝そうに顔を
「アヴァロニウス・アルトリウシウス子爵の連名でもあるぞ、タウルス・アヴァロニクス?」
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